教育家庭新聞・教育マルチメディア新聞
TOP教育マルチメディアニュース   バックナンバー
教育マルチメディアニュース
学力向上は授業改善から

ICT”全員活用”の挑戦

指導方法見直しで成果をあげる

 9月28日、宮城県登米市立北方小学校で公開研究会が行われた。同校は平成17〜19年度学力向上拠点形成研究指定校だ。「学ぶ意欲とスキルを高め、確かな学力を身に付ける子どもの育成」を研究主題とし、「知的好奇心を喚起する指導方法の工夫・改善」を通して、児童らの学力向上を目指す。「教師の授業力向上なくして児童の学力向上なし」を合言葉に取り組んできた3年間の集大成に、全国から200名の教育関係者らが集った。当日の授業公開は、全学年全教室で実施された。各クラスにはプロジェクタやスクリーン、投映装置、マグネットスクリーンなどが必要に応じて設置。授業の中で適宜活用されている様子が見られた。

 「織田信長!」「聖徳太子!」次々にスクリーンに投映される歴史上の人物を素早く答える子どもたち。6年1組の社会科の授業では、導入にフラッシュ型教材を使い、前時の振り返りを行う。短時間に子どもらの集中力が一気に高まる。テンションが高まったところで、「洋風建築」の写真を見せ「どこの国の建物か」を考えさせる。写真は、明治時代初期の建物である長野県の「開智学校」で、日本で最も古い学校のひとつだ。さらに江戸時代末期と明治時代初頭の写真を比較、拡大印刷したものを黒板に貼り、ふたつの時代の生活の相違点を考えさせた。課題や目的に応じて板書や印刷物、拡大投映などを使い分ける様子が見られた。

  また1年1組では、教師の手元を拡大表示することで、ノートの「正しい使い方」「表記方法」を学ぶ児童らの姿が見られた。「口で表現してもわかりにくい」部分を見せることで、児童らの理解が進む様子が見られた。

)同校研究の特徴はあらゆる手法の帰結先が「学力向上」につながっている点。「ICTを活用したらこんな効果があった」というベクトルではなく、「学力向上のためにはどのようなことが必要か」から出発、そのために「ノート指導の徹底」や「教師の発問の改善」など、授業力の改善に取り組んでいる。そこで積極的に取り入れられているのがICTだが、同校で基本的に取り入れられている主なICT活用は「教材の提示」と「フラッシュ型教材の活用」だ。

  あるときは教師が鍵盤ハーモニカを操作する手元を映し、児童らに指導する、ワークシートを拡大投映してまとめ方を指示する、教科書の挿絵を拡大提示して、児童らに「想像」を促す、ノートの取り方まとめ方を指導する―などの活動にICTが用いられる。これら手法について、同研究校でアドバイザーを務める堀田龍也氏(メディア教育開発センター・准教授)は、「学習の基礎を大切にした、学力向上に役立つ『普段着』のICT活用について研究を進めた。すぐに役立つことを目的としており、本取組は『助走』ともいえる。助走なくして高い跳躍はない。少しの努力と工夫で、授業力のある教師ほど素晴らしい活用を思いつくことも分かった。教師がまずみんなの前でよく見えるように『やって見せる』。見れば分かることはたくさんある。それが毎時間繰り返されれば、学力が身に付くのは当然」と、ICT活用で学力向上を保障することの有用性について指摘した。

◇   ◇

  同校の取組で特筆すべき点は、研究協議会のあり方だ。研究授業はこの3年間で58回実施。「ミニ授業研」とし、指導案はA4版程度の略案。授業は7項目について評価し、改善すべき点とさらに指導に工夫が必要な点について自由記述。それら評価は分類、ワークショップ型で検討し、発表、全体で共有するという流れ。「授業者を傷つけるねちねちした研究協議会(堀田氏談)」ではなく「ポジティブにどんどん進める研究協議会」(同)を目指した。全員参加しやすく効率的に時間を活用できる、新しいスタイルの研究協議会といえる。

  同校の学力検査は、平成16年度と比較すると、平成17年度では6年生の国語が全国平均を上回り、平成18年度には、3年生・5年生・6年生で上回ったという。

【2007年10月6日号】

 


新聞購読のご案内