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新学習指導要領

社会科〜「基礎基本」支える”基盤”重視して

社会科で育む”生きる力”とは

文部科学省教育課程調査官・社会科教育担当 安野 功 

今回の「審議まとめ」では、社会科の持つ普遍的な役割を大切にしつつ、現代社会の変化をきちんと受け止め、学校教育の中で取扱うことで、未来の主権者を育成していこう、という方向性が現れています。

  政治や外交、歴史や経済などに対し、多面的な考察を行い、社会の本来の性質を捉えること、社会の中で、誰もが『正しい』と認める手続きをとる必要性があること、主権者としての判断の裏側には、その人の見方や考え方があり、その見方や考え方を成長させていくこと。それら「社会科」の持つ基本的な役割は変わりません。

  その一方で、全教科を通じた課題でもあるのですが、社会科の中で「生きる力」を育む活動をこれまでやってきたのか、やってきたとしても十分ではなかったのではないか。その反省から、小中高各学校段階に応じ、「知識」「概念」「技能」を習得させるためにも、各段階に応じた「知識」と「概念の明確化」を図ることの必要性が基本方針に挙げられました。

  コンピュータなども活用しながら、地図や統計などの各種の資料から「必要な情報を集めて読み取り」、社会的事象の意味、意義を「解釈」すること、事象の特色や事象間の関連を「説明」すること、自分の考えを「論述」することが現行の指導要領では、弱かった、という判断です。

  その根拠として挙げられているのが、平成13年度及び15年度に実施された「課程実施要領調査」の結果でした。どの学年も、「知識理解」が最も低く、複数の統計的な資料を関連づけて読み取る「技能」も弱かったわけです。また、中学校社会科においては、知識だけではなく「概念」も弱い、という結果でした。

  これらの結果から、現学習指導要領では「自ら」考えること、調べることの重要性が現場の方に誤解され、学校の主体性が不足していたのではないか、という反省点が挙げられました。

  児童生徒が「自ら調べて、考える」ことができるようになるための「指導」は、そう簡単なことではありません。そのためにどう指導したのか、で各学校間の差が出たと考えられます。「自ら調べて、考える」ためには、各段階での指導のための「図面」が必要で、かつ「繰り返し」行っていかなければなりません。

  例えば小学校では、「社会生活」のしくみやその意味を「考え」それが「分かる」こと。中学校では、根拠を示し、自分の解釈を「相手に理解させる」段階。さらに、高等学校では、反論に対して自分の論理で相手を「説得する」段階、という「図面」です。

  「社会事象を教え込み暗記させる」ことが「社会科」ではなく、この「方向性」を教員が知り、意識して繰り返して指導していくことの重要性を盛り込んだ、ということです。

  「知識」支える「基盤」 「教材」の必要性

  小学校の改訂では、大きく2点が求められています。
  ひとつは「基盤」となる「知識・技能」の重要性です。「基盤」という言葉を使っていることに注目してもらいたい。
  学習指導要領に示される「本文」には「基礎基本の重要性」については挙げられますが、それらを支える「基盤」となる知識を身につける必要がある、ということです。

  「基盤」の「例示」として、地球儀や地図帳の「一層の」活用、都道府県の名称と位置、世界の主な大陸や海洋、主な国の位置や名称などを調べる学習を、新たに加えています。さらに自分たちの住む県の位置、世界の中での我が国の位置及び領土をとらえることなどが挙げられています。

  現在教科書で取り上げられている国は各教科書の平均値として10カ国程度ですが、これも増える予定です。
  これらはあくまで「例示」であり、社会的に要請が強いものを象徴的に示したにすぎません。このほかにも「地図記号」や、「赤道」の位置、「110番」「119番」など、「社会科」で扱うべき「基盤」となる知識は多様にある、ということです。

  現場に行くと地球儀がほこりをかぶり、活用しきれていない学校もあります。せめて3人に一人程度の割合でそろえたいところです。
  また、地図帳は各自持っているとは思いますが、一斉指導用の教材も必要です。

  学校には、学校になくてはならないものがあるはず。「基盤」のための「教材」の必要性と、その「一層の」活用は、繰り返し強調したい点です。

【2008年2月2日号】

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