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INTERVIEW 
今まさに「教育の情報化」第二ステージが始まった
第33回JAET全国大会
研究発表は100以上 国際化も視野に
日本教育工学協会(JAFT) 会長
富山大学 理事・副学長
山西 潤一 氏

山西 潤一氏の写真

 第33回全日本教育工学協議会全国大会が千葉県旭市で開催される。テーマは、情報活用能力を育み豊かで確かな学力を育成し、児童生徒に希望あふれる明日「Tomorrow」を迎えられる教育環境の実現と授業改革だ。日本教育工学協会会長である山西潤一氏に、本大会の特長とテーマにこめられた狙いを聞いた。

■千葉県旭市では20年ぶりに開催

 本大会の第一の特長は公開授業です。千葉県旭市は、昭和59年に第10回の全国大会が開催された土壌があり、その時代から先駆的で骨太な研究がなされています。千葉県旭市の先生が中心となって実施される公開授業では、テレビ会議システムやテレビ電話、IPフォンなど様々な交流ツールを通して授業改善が試みられており、地域間交流、国際交流、学校間交流、外部人材の活用などを通した授業改革提案が多く取り上げられているのが例年にない特長です。その延長として、情報化の中で世界を相手に心と心を結び合う感覚を体感し、国際化にも対応できる異文化理解やコミュニケーション能力の育成が期待できる試みです。

■発表は100以上ICT活用事例裾野拡がる

 分科会では全国の教職員による100を越える事例の発表があります。情報モラル教育の必要性から、その事例発表が昨年より増えました。また、教員一人1台PCの活用事例も増え、校務の情報化の進捗がこの1年で随分進みました。

  特にICT活用事例は4会場に渡り発表されており、各教科様々な形での多様ぶりに、確かな手ごたえを感じます。「必要」であり、かつ「効果的」だったからこそ、実践例が増えた、ということができます。ICT活用が、学力向上に向けての授業方法の工夫やその効果の検証など、日々の授業実践にあらゆる形で入りこんでおり、事例が年々増え、ICT活用がかなり「当たり前」になってきた、という印象です。いままさに教育の情報化の第二ステージが始まった、と感じています。

■アジア・オセアニアとの情報交換も必見

 また、坂本昂先生のコーディネートのもとに、中国や韓国、ニュージーランド、シンガポールから学校長や教員が、各国のICT活用事例を発表・共有できるシンポジウムも開催され、2日目には4カ国11名の先生たちがポスターセッションも行います。昨年の全国大会で実施されたフィンランド大使館マキパー氏の特別講演は大変評判が良かったのですが、本大会ではさらに一歩進み、アジアやオセアニアとより交流を深められる試みになっています。

  今後の日本の情報化の流れや施策についても注目しなければなりません。それについては文部科学省の初等中等教育局局長である金森越哉氏より特別講演があり、こちらも見逃せません。

■授業改善のためのテクノロジー活用を

 日本教育工学協会は、現場の先生と研究者、それを支える企業が連携をとって学校改革や教員を支援することが使命です。
  企業との連携も重要で、学校や教員に役立つ最新のテクノロジーやICT機器、デジタルコンテンツ等も多く出展されています。
  特に深刻な被害をもたらすセキュリティの保守は、教員のアイディアや努力だけではまかなえないジャンル。校務の情報化を支えるシステムも、企業に支えていただかなければならない部分です。そういった最新のシステムに現場の先生方が触れることで、授業や校務改善に向けてのテクノロジー活用の目を養って頂きたいと考えています。

  全国大会で多くの事例や公開授業、新しいシステムに触れて頂きたいのは、学校の先生、管理職、教育委員会の情報担当の方々です。学校数や教員数が多いという面もあり、小学校の事例発表が多い傾向にありますが、中学や高校の事例も増えてきました。また、小学校の事例は全教科に渡っていますから、中学や高校の先生にも役立つはず。

  これまでICT活用の経験がなかった先生にも、ご覧になっていただければ必ずイマジネーションを刺激される素晴らしい実践に出会えるはず。使ったことがない方にもぜひ、授業改善のアイディアを探しにきていただきたいですね。

(西田 理乃)

【2007年11月3日号】