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情報モラル宣言NO4
豊かな表現とコミュニケーションのために
ACCS 久保田裕

 先生方には、子どもたちに情報モラルを教えるとき、どんな子になってほしいから情報モラル教育をするのか、真摯に考えてほしいと思っている。一方、この連載の第一回で「自分なりの情報モラル宣言をしよう」と書いた。そこで私自身はどうなのか、考えてみた。
  それは、豊かな表現とコミュニケーションができる子になってほしいからだ。

●体験こそ源

  そのための前提で、作文教育は重要だと思っている。昨今の子どもは、ネット社会の弊害か、すぐに回答を求めることが多いと聞く。じっくりと自分で考えることが苦手なのだ。書くことは考えること。書くという行為を通じ、考え、自分に向き合うことができるはず。

  そう考え、中学1年の娘を作文塾に通わせ始めた。進学塾ではなく、徹底して本を読ませ体験の上で文章を書かせる寺子屋のような塾だ。彼女はここで自由に書く楽しみを知ったようだ。塾が発行する会報「土筆通信」にも作文が掲載されたのだが、子どもらしい感性が表れていて、親として面白く読み、喜んだ。

  この塾でも重視しているのだが、文章を書くのに実体験は必須だ。伝えたいことがあるから、文章が書ける。伝えたいことがない子に「何でもいいから表現しなさい」と言っても苦痛だろう。「誰に」「何を」「どんな風に」伝えるか、肝心の「何を」を、まず体験させることが必要だと思う。

  ある知人は、子どもが夏休みの宿題で読書感想文を書くことになったとき、その本のテーマにあった地域に行かせ、人にインタビューさせたそうだ。本やネットの情報では独自性がなく、五感で何かを得ることが必要と言っている。

●「誰に」をサポート

  我が師でもある伝説の国語教師、大村はま先生は、作文で苦労している生徒に「ねぇねぇ先生、聞いてよね。」で書き出させる教育をしていた。これで「誰に」がクリアになり、体験によって「何を」があれば、「どんな風に」という作文の書き方指導に専念できる。こうやって段取りを付けてやることで、作文能力や豊かな表現力が身につき、ひいてはコミュニケーション能力を高めることになるのだと思う。

●情報モラルの第一歩

  情報モラル教育の必要性の中には、ネガティブな話題も多くある。いわゆる情報安全教育で、ネット上の掲示板やワンクリック詐欺などでトラブルに巻き込まれないための対策のことだ。しかし、コミュニケーションさえできていれば、それほど心配する必要のない問題も多いのではないか。

  例えば詐欺や裏サイトのいじめに遭うような場合でも、親、先生、見識ある大人に相談すれば解決するだろう。また?インターネット協会はネット問題の相談窓口を常時開設している。子どもたちが自ら表現する力を持ち、コミュニケーションする能力と環境があれば、深刻な問題は回避できると思う。そのために、書く力を付けるのは第一歩ではないだろうか。


【2007年8月4日号】


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