【校務の情報化】子どもと向き合う時間を増やす

事前の課題整理で一斉導入 ―群馬県・館林市教育委員会

レイアウトツールでオリジナル通知表を作成

 館林市教育委員会では今年度1学期、市内小中特別支援学校・全17校で初めて「C4th」を使って通知表が作成された。各校で「通知表レイアウトツール」を利用した通知表レイアウト作成・調整に取り組んだが、「問い合わせは少なく、トラブルもなかった」という。館林市の導入・活用経緯を、指導主事の小林秀夫氏に聞いた。

校務の情報化

学校教育課・指導主事
小林 秀夫氏

  市では平成22年度、県の方針を受け「校務支援システム活用検討委員会」を立ち上げ、「C4th」導入の方策について検討を開始した。各校に実際に導入されたのは、平成21年度末。1月に管理職研修を行い方針の説明や今後のスケジュールなどを中心に周知、2月に学校教職員を対象とした活用研修を全校で実施。方針の周知と活用の検討をほぼ同時進行で進めた。

  学校日誌、保健日誌などの帳票様式は市内で完全統一し、保健機能についてもいち早く活用を決定した点が同市の特徴だ。統一化には時間がかかる。「例えばB判様式からA判様式への変更や、タテ書きからヨコ書きへの変更など、異なる様式を統一する過程に、最も時間がかかる。会議を何度も重ねながら統一を図った」という。

  様式が決まれば、次は運用ルール作りだ。円滑にデータ連携するには、入力方法の意思統一が必要になる。具体的には、成績や出欠情報などデータを「C4th」に入力する際の具体的な「決まり」だ。毎月の校長会では各校から様々な意見が出たが、ひとつひとつの意見に寄り添いながら粘り強くルール作成を進めた。群馬県での導入をリードする太田市の先行事例から、不安を持ちやすい点など、解決すべき課題についてある程度予測できた点も大きかった。

■通知表は各校でレイアウトする

  通知表のレイアウトは、各校のカスタマイズ要望が高いものだ。校章や校歌、イメージ写真を入れたい、評価項目を変更したいなど様々な要望があり、統一化を図りにくいもののひとつといえる。市では「C4th」に新たに追加された「通知表レイアウトツール」を活用。これにより各校が担当者レベルでレイアウト変更できるようになり、カスタマイズコストを抑え、学校オリジナルの通知表作成と一斉導入が可能になった。これは「C4th」開発者向けに作成されたレイアウトツールを学校向けに使いやすくシンプル化し、今年度から提供されているもので、表紙デザインや校章・校歌の挿入、子どもの絵の活用、文字の大きさ、配置などを変更することができ、各校のオリジナリティを表現できる。

■リスクの回避でスムーズに活用

  通知表作成を一度終えて初めて校務の情報化はひと山越える、と言われている。同市の「通知表作成」における山は、それほど高くはなかったようだ。これは、ICT活用に不安がある場合は早めに始める、印刷時間は集中しすぎないように配慮するなど、「検討会における丁寧な話し合いの結果、各学校で、スムーズな運用を心がけた振る舞いが自然にできていたからでは」と小林氏は話す。通知表を作成し終えた学校からの声も届き始めているが、「思ったより楽だった」、「慣れてくればもっとスムーズにできそう」と、前向きな声が多い。

  最終目的を明確にしながら現場に寄り添い丁寧に対応を進めた点、先行事例の参照によるリスク回避など、館林市の導入に見習うべき点は多い。

■保健情報管理 導入は効果大

  館林市では、保健情報管理も同時に導入している。教育総務課が窓口となり、養護教諭の要望を取り入れながら各種保健帳票や保健統計の活用に向けた準備を進めた。

  児童生徒の出欠情報はもちろん、保健室利用状況や保健日誌、健康診断に基づく検診情報など、担任はいつでも閲覧できるようになった。これまで手書き記名で各家庭に渡していた「受診のおすすめ」も、検診結果から瞬時に印刷できる。「各校1人しかいない養護教諭の負担は大きく、その役割は今後さらに重要性を増す。情報化によって養護教諭の事務負担が軽減できるメリットは大きい」と話す。

【2011年10月3日号】

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