障がい者支援ソリューションを開発―日本マイクロソフト

障がい者支援 日本マイクロソフト
車いすに寝たままわずかな動きで
ライトをつけることができる

まぶたでライトを点灯

 日本マイクロソフト(以下、日本MS)と東京大学先端科学技術研究センターは、脳性まひや脊髄性筋萎縮症など重度の障がい者の身体の小さな動きを捉える障がい者活動支援ソリューション「OAK」を共同で開発した。

  「OAK」は、日本MSのキネクトセンサーとPCを使ってスイッチの入・切や意思の表示などができるシステム。

  重度の身体障がい者は従来、意思の伝達やナースコールなどで、動かせる箇所や稼働範囲に応じた特別なスイッチを利用しているが、こうしたスイッチは高価で微妙な設定が必要だった。「OAK」では、まぶたや口を動かしてスイッチの入・切ができる「フェイススイッチ」や、指を伸ばすといったわずかな動きでスイッチを制御する「エアースイッチ」という機能を、安価で簡単に設定できる。これはキネクトセンサーを使うことで、自動的に口やまぶたの動きを認識したり、首を傾けたり手や指を伸ばすなど身体のわずかな動きを簡単に認識することができるからだ。

  また「モーションヒストリー」という機能は、体の動きのログを記録する機能だ。体の非常に小さな動きとして現れる、気づきにくいサインや反応なども、記録したログを見ることで簡単に見ることができる。

指の運動でスイッチ操作

  10月初旬にはキッザニア東京で、「OAK」の体験会が行われ、脊髄性筋萎縮症(SMA)1型の6歳の少女がライトの点灯に挑戦した。

  SMAとは、脊髄の運動神経細胞の病変によって起こる筋萎縮症で、1型は生後6か月までに発症し、生涯において坐位保持が不可能とされている。

  車いすに寝たままの少女が両親の「指を動かして」という声に応えてわずかに指を動かすと、ライトが点灯。すると少女は視線をライトへ向けていた。

  父親は「自分の行動でライトを点灯できてびっくりしていたようだ。この装置は、気持ちを言葉にしなくてもコミュニケーションを引き出せる。自分の意志を、自分の思ったタイミングで伝えることができてうれしい」と話した。

  システムの開発を担当した先端研の巖淵守准教授は「重度の身体障がいがある子どもにとって、自分の思いが目の前で形になるということは大切な体験。また、医療的ケアを受けるときの意思表示のツールとしても利用できる。意思表示ができコミュニケーションが可能となる」と可能性を語ってくれた。

【2012年11月5日】

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