【教育委員会への提案】教育情報の標準化で校務の情報化を円滑に―APPLIC

 一般財団法人 全国地域情報化推進協会(以下、APPLIC)では、地方自治体において多数の情報システムを連携できる基盤構築に向け、地域情報プラットフォームの標準仕様の作成・管理に取り組んでいる。地方自治体向けには既に標準仕様を公表、それに準拠した住民記録システムなどの行政情報システムが各社から提供されているが、この動きが学校教育でも始まっている。

■生徒情報を学校間で連携

APPLICマーク  地方自治体の手続きでは、例えば転居する場合、かつては関連窓口全てに出向いて届出をする必要があった。この流れが大きく変わってきている。

  地方自治体では、住民の利便性向上のため、住民が関連する複数の手続きを一箇所の窓口で集中して行うことができる総合窓口化の取り組みが行われている。福岡県北九州市や福岡県粕屋町などでは、1つの窓口で届出をすると複数の関連部署全ての手続きができるワンストップサービスが既に提供されている。同様に学校においても、小中学校間や自治体間において児童生徒情報を連携して活用できる仕組みが求められている。

  APPLICではその実現のため、アプリケーション委員会(委員長=清水康敬東京工業大学監事・名誉教授)下の「教育ワーキンググループ(以下、WG)」(主査=藤村裕一鳴門教育大学大学院准教授)において教育情報の標準化検討を進めており、平成24年6月には「教育情報アプリケーションユニット標準仕様V1・0」(以下、「標準仕様V1・0」)が公表された。

  これは、指導要録等学習者情報と学校保健に係る健康診断票におけるデータ標準仕様だ。

  「標準仕様V1・0」に準拠した校務支援システムならば、小・中学校の情報を連携でき、学齢簿との連携や転校・進学処理の電子化等業務の効率化が期待できる。異なる事業者の製品であっても児童生徒情報を連携することができるので、複数社のシステムを連携して運用することや、他社システムに更新しても既存データを使うことができるため、システム移行に伴うリスクが低減し、電子化の加速や利便性の向上が期待できる。

  地域情報プラットフォームは、マイナンバー制度など将来の制度変更における対応・連携も視野に入れられており、就学援助や健康情報などへの展開も期待される。既に一部の地方自治体では調達仕様書に「標準仕様」が盛り込まれており、指導要録や健康診断票の完全電子化・電子保存の促進に寄与している。

  現在「標準仕様V1・0」に対応した校務支援システムは11月末現在で、内田洋行「デジタル校務」(学習情報、学校保健)、EDUCOM「EDUCOMマネージャーC4th」(同)、サイバーリンクス「Clalinet」(同)、システムディ「SchoolEngine」(同)があり、今年度中にさらに5社が製品対応を予定している。

データ連携の接続 3社6製品が確認 各製品の接続 実機で確認

■標準仕様に登録マーク

 APPLICでは、これら標準仕様に対応した製品群に、APPLIC推奨マークを付与している(上図)。

 APPLIC推奨マークとは、標準仕様に対応した製品であることを示すマークだ。

 これには「準拠登録製品マーク」と「準拠登録・相互接続確認製品マーク」の2種類がある。

  「準拠登録製品マーク」は、APPLICが示す手続きにより登録された地域情報プラットフォーム準拠製品である製品に付与されるもの。

  「準拠登録・相互接続確認製品マーク」は、準拠登録製品であり、かつAPPLIC主催の相互接続確認イベントに参加し、接続に成功、その報告をAPPLICに提出・登録した製品に付与されるものだ。これら推奨マークの取得情報は、APPLICのホームページに掲載されている。

■各製品の接続 実機で確認

  「相互接続確認イベント」とは、「標準仕様に準拠した製品どうしの相互接続性について、実機を使って確認する」検証実験だ。これにより、広く地方自治体に対して「準拠登録製品」に対する安心感を提供することができる。

  平成24年10月、教育情報アプリケーションにおいては初の相互接続確認イベントが実施され、前述の内田洋行(学習情報、学校保健)、EDUCOM(同)、サイバーリンクス(同)3社・6製品が参加した。

  当日は、各社校務支援システムの持つデータをUSBメモリに保存、それを他社のシステムで読み込むことができるかどうかを実際に確認した。なおシステムディは平成25年1月中に実施される平成24年度2回目の接続テスト(相互接続イベント第7期)に参加予定だ。

準拠登録製品が増

  地域情報プラットフォーム標準仕様に準拠する製品はここ1年で急速に増えており、平成24年11月末時点では52社499製品が準拠登録されている。今後教育情報アプリケーションでも同様の動きがあることが期待されている。
教育情報アプリケーションは現在、第2回相互接続確認イベント(第7期)に向け登録申請がAPPLICに多数届いている。年度内には準拠登録製品が教育においても20製品程度に増えるという。

特別支援学校や高等学校にも拡大

  文部科学省が策定した「教育の情報化ビジョン」でも、APPLICで指導要録等のICT化の際の標準化に関する検討が進められていることについて触れられており、6月に開催された全国教育長会議において「標準仕様V1・0」が紹介されている。

  また、平成25年6月公開予定の「標準仕様V1・1」に向け、学齢簿との連携や特別支援学級・学校における指導要録調査の標準仕様にも着手。さらに高等学校や学校事務分野の標準化帳票の検討も予定している。

  教育クラウド整備ガイドブックにも着手しており、現在「教育クラウド整備ガイドブックV0・5」を公開している。現在はさらにV1・0の公開を目指して検討を続けている。

  APPLICでは教育情報の「標準仕様」普及活動や教育委員会への啓発、準拠製品の拡充に努める考えだ。

会員を募集中

  APPLICでは協会の趣旨に賛同する会員を募集している。地方自治体や公立学校、学識経験者は特別会員となることができる。特別会員の会費は無料。現在450強の地方自治体を含む700強の団体が加盟しており、さらに増加中だ。会員には、委員会の参加やアプリックテクニカルアドバイザーの派遣、自治体CIO育成研修への参加などが提供される。
詳細=http://www.applic.or.jp/

【2013年1月1日】

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