【中学校デジタル教科書】デジタル教科書のメリットを活かす―柏崎市立第一中

 新学習指導要領の開始に伴い、柏崎市では平成24年度から小学校では国語、算数、理科、社会、外国語活動、中学校では国語、数学、理科、英語においてデジタル教科書・教材を導入・活用している。柏崎市立第一中学校(廣川正文校長・新潟県)において現在最もデジタル教科書の活用頻度が高いという英語の授業を取材した。授業者は千原健志教諭。

デジタル教科書
イントネーションマークを
提示して発音練習ができる
デジタル教科書
lCTカートは生徒が準備する

 柏崎市立第一中学校には、平成21年度のスクール・ニューディール政策によってプロジェクター、携帯型電子黒板、ノートPC、スクリーンなどをセットしたICTカートが各階に1台ずつ整備されている。この「ICTカート」のセッティングは各クラスの「教科係」の仕事だ。英語の授業前には生徒が準備室からカートを移動、プロジェクターの電源を入れ、スクリーンのセッティングをすませている。

  授業が始まると千原教諭はデジタル教科書をスクリーンに提示。前時の復習として、生徒はデジタル教科書の音声を一文一文繰り返して発音していく。最初は英語と日本語を見ながら、次に英語のみを見ながら何度か繰り返した後は、日本語のみを見ながら本文の暗唱に挑戦した。

  新単元では、デジタル教科書に同梱されているフラッシュカードで新しい英単語を確認していった。こちらも、最初は日本語と英語、次に英語のみ、音声なしで日本語のみを提示したりしながら何度も発音を繰り返していく。

  本文練習の際も、範読音声の速度を変えたり、日本語のみの表示にしたり、イントネーションマークを提示したりと様々な方法で発話を繰り返していった。その後は、「1分間リーディング」で、1分で何回本文を読めるか、各自が挑戦。資料映像は英語テロップを提示しながら視聴するなど、デジタル教科書の機能を生かして英語を「聞く・話す」活動を効率的に繰り返す授業展開だ。

 

授業スタイルを新年度から変更

  英語科ではまず千原教諭がデジタル教科書を使い始めた。英語科内で情報共有する中、他の英語科教員にもその良さ、便利さが共有され、今では英語科全体で活用しているという。

デジタル教科書
デジタル教科書の機能を活かして
「聞く・話す」活動を短時間に
効率良く繰り返し、自己表現の場を増やす

  「デジタル世代のためか、デジタル教科書などを提示すると、生徒の視線がすっと集まり、一斉指導しやすい環境になる。デジタル教科書はピクチャーカードやフラッシュカードもすぐに提示できる。生徒の実態に合わせて範読音声の速度を変更し、一文一文を提示しながら発音させることもできる。様々な機能を活用しつつ工夫を重ねるに従い、短時間に音声をインプットできたり、発音練習できたりするなど、デジタル教科書のメリットを感じるようになった。新学習指導要領の目的を実現するにはこのメリットを活かしながら、これまでの授業スタイルを変える必要があると感じた」と千原教諭は話す。

  どのように授業スタイルを変えていったのか。「本文の逐語訳には時間をかけず、英語を丸ごと理解できるよう、様々な方法で短時間に多くの回数を発音させ、節約した時間を一人一人の表現力向上の練習や見取りに活用している。教科書は厚くなり本文量は多くなったが、本文の逐語訳に時間をかけず表現力養成に時間をかける授業スタイルに変えることで、プラスワンの時数を有効に活用している」

  現在の中学校1年生は既に小学校で外国語活動に取り組んでいる。それも授業スタイルを変える要因の1つとなったという。「英語を聴く力が育っており、英語を話すことに前向きな生徒が多い。本市の小学校教員の頑張りを感じる。この力をさらに良い方向に伸ばしたい」と語った。

様々な機能が追加

  新学習指導要領に伴う改訂により、同校で使用している「NEW HORIZON」デジタル教科書では、ユーザの声を反映、様々な機能が追加されている。動画教材は、英語、日本語訳のテロップを選択できるようになった。本文にはスラッシュ訳やイントネーションマークも提示できるようになり、読みの指導の際のリズム作りや本文読解指導をサポートする。

  アニメーションによる文法事項の説明も追加された。これについて千原教諭は「文法はつい説明しすぎてしまう。そこで、デジタル教科書で文法のポイントを示し、さらに強調したり追加補足したりしたい部分について口頭で説明するようにしている」と、授業のメリハリ作りに役立てている。

自己表現の場が増え意欲も継続

  デジタル教科書の導入により、授業や生徒の力にどのような変化が見られるのか。

  千原教諭は、「逐語訳の時間やノートを取る時間が減り、会話、作文などを含めた自己表現の場を増やすことができた。また、教科書が厚くなっているにも関わらず、これまで一定の割合で出ていた『夏休みの壁』を感じる生徒が少なくなっており、全体的にやる気が持続している」と感じている。学期ごとに実施している授業アンケートでも「わかりやすい」「楽しい」という数値が高いそうだ。今後、デジタル教科書を使う教員に対してのアドバイスを聞くと、「最初は難しく感じるかもしれないが、失敗を恐れず、生徒と共にチャレンジを楽しみながら、新しい授業を創り上げていくこと」と述べた。

継続して要望を

デジタル教科書
廣川正文校長

  廣川校長も英語科であったことから「デジタル教科書には、これまで各教員が苦労して作成してきた教材が組み込まれている。これを有効に活用できる環境が整備されつつある」と話す。「ICT環境はこれまでも活用されていたが、デジタル教科書の導入で稼働率が上がった。教員によってまだ使用頻度に違いはあるものの、英語や国語、理科でも活用が進んでおり、ICTカートの調整がつかないこともある。提示機器は全教室に設置されていることが望ましいが、まずは固定的に設置された教科教室がいくつかできれば」と考えている。現在、校長会を通じて教育環境の向上に向けた要望を上げている。

 

 

 

 

【2013年2月4日】

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