“協働的なスキル”が測定される 情報活用能力調査を開始―寄稿:奈良教育大学 小柳和喜雄教授

PC使い調査 結果公表は次年度

 文部科学省では、児童生徒の情報活用能力に関する調査を開発、今年度から開始する。国際的な情報活用能力等の調査について研究している小柳和喜雄・奈良教育大学教授は、「情報活用能力の育成は国際的な共通認識」と指摘。世界の調査から分析すると、我が国の「情報活用能力調査」においても「協働学習スキル」「情報の収集・管理」「情報の創出・共有」の出題などが予想されると話す。

スタートの理由を 国際調査から分析

  全国学力・学習状況調査が行われて久しい。この調査を通じて、国及び自治体では、子どもたちの学習活動や学校・家庭生活などに関する、意識や行動の現状を把握し、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てようとしてきた。

  しかしながら、子どもたちの周りのメディア環境が大きく変わり、情報モラルなどの重要性が指摘される中で、培おうとしてきた情報活用能力についてはその実態調査がこれまで行われてこなかった。

  この動きは世界でも同様だ。例えば、経済協力開発機構(OECD)による生徒の学習到達度調査(PISA=Programme for International Student Assessment)や国際教育到達度評価学会(IEA)による国際数学・理科教育調査(TIMSS=Trends in International Mathematics and Science Study)また国際読書力調査(PIRLS=Progress in International Reading Literacy Study)でも、子どもたちのICT活用の習得状況を見る調査は、これまで行われてこなかった。

  そこで、OECDもPISA調査2009から、筆記型とコンピュータ使用型の2つの試験方法を導入。2009年の調査では、デジタル読解力の測定も行われた。問題解決力の調査ではコンピュータ使用型でのみ調査が実施され、デジタルリーディングや問題解決力に関する調査等を通じてICTを使って、その活用力や21世紀型スキルと呼ばれている力についても調査しようとする動きが出てきている。

  これまでIEAも、第1回IEA国際情報教育調査以降、その環境に関する調査や取組状況に関する調査などを定期的に行ってきた(第2回IEA国際情報教育調査SITES=Second Information Technology in Education Studyモジュール1、モジュール2、SITES 2006)。しかし、子どもたちの力そのものについては調査してこなかった。そこでそれを測定する調査であるICILS(International Computer and Information Literacy Study)を本年2013年に実施しようとしている。これらの流れから、情報社会を生き抜くための情報活用能力の育成が不可欠となっていることが国際的な共通認識になってきていることがわかる。

  日本においても、新学習指導要領の下、小中高校段階を通じて情報活用能力の育成を図っているが、児童生徒の情報活用能力の実態把握は未実施な状況であった。このことから国では、情報教育の推進等に関する調査研究を平成24年度から始め、平成25年度その調査を始めようとしている。

測定内容を予測

  ここではどのような内容が実際に測られようとしているのだろうか?

  まさにこれから行われるため、内容自体はまだわからない。しかしながら、先にも触れた2つの国際調査が行おうとしている内容を通じてその予測は可能だ。

  PISA調査2015では、筆記型で、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシー(今回はこれが中心)を行う。コンピュータ使用型では上記3つに加えて、問題解決力の調査を行う。この問題解決力の内容に関わって、21世紀型スキルの内容やその評価方法を検討してきたATC21S(Assessment & Teaching of 21st‐Century Skills)の検討内容がある程度反映されると言われている。

  具体的には、協調的問題解決における社会的スキル(活動への参加態度、展望を持った建設的関与、社会的な規則の遂行)と協調的問題解決における認知的スキル(課題処理・課題解決、学習の道筋づくりと知識構成)などだ。

  調査は実際にペアやグループなどで行われるわけではないが、シミュレーションなどを使って協働関係が試験問題の文脈や資料などの中に反映され、関連する力が問われると言われている。

  一方で、ICILS2013では、「家庭、学校、職場、社会に効果的に参画するために、コンピュータを調査、創出、コミュニケーションするために用いる個人の能力」を測定しようとしている。内容としては、大きくは2つ。1つは「情報の収集・管理」に関することであり、もう1つは「情報の創出・共有(変換)」であると言われている。

  より掘り下げてみると、「情報の収集・管理」では、(1)コンピュータ利用についての知識、理解(コンピュータとは何か、何ができるか、コンピュータがどのように処理を行っているのかといった点に関するもの)、(2)情報へのアクセスと評価(適切なキーワードで検索を行い、その結果を適切にフィルタリングできるか)、(3)情報の管理(特にファイルの管理を意識。データをどのような方法で保存していけばいいか)が問われている。

  また「情報の創出・共有(変換)」では、(1)情報の変換(受け手に分かりやすいよう色の使い方を変えたり、データをテキストから画像に変えたり、データをグラフや図にする等の工夫について)、(2)情報の創出(特定の受け手や目的に沿って、新たなアウトプット〈ポスター、プレゼンテーション、動画等を用いて〉を作成すること)、(3)情報の共有(オンライン上の共同作業スペースや、SNS、eメール等から、目的に合った手段で情報を他者とやりとりする方法について)が問われている。

  以上、今年これから調査が始まる情報活用能力調査も上記の内容と関連する調査内容が問われることが予想される。

▼児童生徒の情報活用能力に関する調査=対象は国・公・私立小学校5年生及び中学校2年生。今年度は小学校100校3000人程度、中学校100校3000人程度を無作為に抽出。10月から来年1月にかけ、1学校につき1学級において、PCを使って実施する。平成26年度にはこの調査結果を公表し、指導資料を作成・配布する予定だ。

【2013年10月7日】

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