導入事例から振り返る 校務の情報化・工夫と改善―兵庫県・加東市教育委員会

  兵庫県・加東市の人口は約4万人。小規模自治体として限られた予算の中、ICT活用と整備の方法を模索している。

  デジタル教科書は配信型を活用。平成17年から平成21年にかけて普通教室にLAN整備を完了し、平成21年度のスクール・ニューディール政策時に電子黒板を集中整備した。

  ネットワーク一元化は平成23年度に実施。教育委員会に校務用サーバを設置、所属ではなく個人でログインできる仕組みとし、異動の際も管理しやすくなった。

  工夫は4種類のネットワークフォルダだ。「写真・画像」「共通」「学校」「個人」フォルダと、どの学校も同じ構成とした。特に共通フォルダについては、全ての学校からアクセスでき、重たいファイルをメールに添付しなくてもすむ点、1つのファイルに皆でアクセスして報告書等データを作成できるため、業務が効率化したと好評だ。共通フォルダ活用により個人持ちUSBメモリも禁止した。

  グループウェアは小中学校だけではなく教育委員会部局すべてに導入。これにより公民館や図書館など市の施設と直接メールや掲示板等で連絡できるようになった。また、学校では活用が進むにつれ、打ち合わせを廃止することができ、児童生徒と向き合う時間も増えた。

  今年度初めて全校で校務支援システムを使って通知表を出力。クリアファイルに挿入して渡しており、保護者には好評だ。養護教諭とも連携し、身体記録、体力テスト記録なども連携できるようにしている。

  導入の際には帳票をカスタマイズ、全小学校と全中学校で様式を統一した。エクセルと連携できるようにし、「いざとなればエクセルで対応できる」と、導入初期における不安感を軽減するようにした。指導要録についてはこれまでどおり紙出力としているが、レーザプリンタによる出力だと長期保存に耐えられないことから、インクジェットプリンタで出力している。

  導入後は、想定していなかったことが起こる。改善点や反省点としては、運用・サポートにおいて人的確保が難しい自治体の場合、サポートを含めた形で導入すべきである点。また、教員が誤って削除する事故が生じたことから、現在は細かく権限分けをし、定期的にバックアップするようにしている。

  年度変わりの移行処理も1〜2日でする必要がある点も課題だ。

  教員は楽になったが教頭は多忙になったという声もあり、主にシステムの権限設定の負担感があるようだ。そこで現在は、一部教頭から主幹教諭等への権限委譲という形で対応している。

  落雷の影響でシステムトラブルが起きた際には、デジタル教科書すら活用できない状況になった。教育委員会によるサーバ一元化にはデータ保守の点で自然災害の対応が難しいなど課題があるため、データの安全性の確保が今後の課題だ。

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【2013年11月4日】

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