立命館小の学習者用端末活用

4・5年生に個人購入で配備

 2006年の開校以来、電子黒板の全教室導入を始めとするICTの授業活用に積極的に取り組んできた立命館小学校(浮田恭子校長・京都市)では、2012年より、学習者用端末の導入に着手した。11月には4、5年生を対象として1人1台の学習者用端末を導入。CoNETS(各社デジタル教科書を活用できるマルチプラットフォームを提供)の実証も行っている。1月25日に開催された「第7回公開授業研究会〜Beyond Borders」では、SNS活用やプログラミング教育、英語教育を始め、学習者用端末活用の成果も公開された。

 同校では2012年6月、タブレット端末153台(※1)を導入してプレゼンテーションやインタビュー活動、動画作成、音読練習など様々な活動を検証しており、翌年6月には追加で33台(※2)を導入、端末の貸出も行った。11月には4、5年生に1人1台環境(※3)を整備。個人購入によって学習履歴が残しやすくなるなど活用の自由度が高まったという。

世界自然遺産の候補地を考える

世界自然遺産の候補地を考える

学習者用教材で虫を“仲間分け”

3Dで虫を観察 虫の仲間分けも

「世界遺産」の種類と条件を整理

最新の研究内容をSkypeで聞く

スカイプで研究者の話を聞く

端末使った清書で 推敲がスムーズに

個別学習用デジタル教材を自作

  5年I組の社会科(糸井登教諭)では、世界遺産について学ぶ。電子黒板には代表的な世界遺産の写真が4点提示されている。世界遺産には「自然遺産」「文化遺産」「複合遺産」がある。日本の世界遺産「富士山」は「自然遺産」ではなく、「文化遺産」だ。それほど「自然遺産」の条件は厳しい。「富士山」がなぜ適合しなかったのか、「屋久島」はこの厳しい条件をクリアしていることなどを通して「世界自然遺産」の4条件について学んだ後、「日本の中にある世界自然遺産の候補地」について、協同学習の手法で取り組んだ。

  学習者用端末は、調べ学習に用いる。端末には事前に環境省や国立公園などの情報を組み入れておき、全員が同じ情報を共有できるようにしてある。個人で調べ、推薦したい候補地を考えた後、ペアで考えを交流、最終的に「推薦したい場所」を1つに絞り、グループごとに電子黒板を使って発表。タブレット端末の活用によって、今日的な課題、最新情報を参照しながら学ぶことができた。

3Dで虫を観察 虫の仲間分けも

  3年R組の理科(中島信教諭)では、学習者用端末向けデジタル教材(※)を活用した。個人の端末で、これまで学んできた5種の虫の色や形、体のつくりを、端末に入った3Dコンテンツを使って復習。3Dコンテンツなので、横や斜め、真下からも観察することができる。

  テーマを決めて「仲間分け」も行った。まずは「昆虫」と「昆虫ではない虫」に分ける。教師は教材の使い方、分類の方法を、教師用端末を使って電子黒板に提示しながら児童に説明した。児童は個別で仲間分けをしてからペアで確認、電子黒板で発表し合う。その後、班ごとにテーマを決めて仲間に分け、様々な分け方、考え方があることを共有した。
(※)「CTスキャン3Dコンテンツ」「虫の仲間分けフラッシュ教材」(啓林館)

最新の研究内容をSkypeで聞く

  5年S組の国語(岩下修教諭)は、「漢詩学習で日本語力を高める」学習だ。李白の「静夜思(せいやし)」を電子黒板に提示、それを見ながら一斉に音読。作者が何を見ているのかを考えながら、詩に「見」ではなく「看」という漢字を使っていることから「看護にも使われている文字で、しっかりと見る」ことが意味されているなど教師の説明を中心に読みを解説していく。

  次に提示したのが、現代中国の「静夜思」だ。最初に提示された詩といくつか漢字の表記が異なる。その理由を考えた後、立命館大学の研究者とSkypeで教室をつなぎ、その理由を聞いた。研究者によって、李白の版本が何種類かあること、そのうちの1種類が日本で普及しており、現代中国に普及しているものと異なることなどが伝えられた。日本版本がオリジナルであるという説もある。

  授業の後半はタブレットを使った個別学習が中心だ。教材は、岩下教諭が独自の視点で集めた漢詩とそれに関する問題、問題を考えるためのヒントとなるリンクをまとめたもの。研究者とのやり取りによって児童の漢詩への興味が深まったようで、集中して学習する様子が見られた。

  電子黒板には1〜4人の学習者用端末の様子をリアルタイムで提示することで、他の児童の進度を見ることもできる。その間岩下教諭は机間巡視をしながら、興味深い学習内容を適宜紹介していった。読解は個の進度が大きく異なることもあり、今後、自作教材を自宅でも活用できるようにしたいと考えている。

端末使った清書で 推敲がスムーズに

  岩下教諭は作文教育の第一人者でもある。授業後のワークショップでは、タブレット端末を使って「清書」することで、効率的な「推敲」活動につながったと報告。その際は若干文字数を減らすこともポイントになる。「一度完成したものを若干短くするために何度も読み直し、不要な表現を削除するなど調整を重ねることで、これまで難しかった推敲が、より容易にできるようになった」と報告した。

教育フォーラム 6月22日に予定

  同校のICT活用は開校当初から電子黒板を設置していたこともあり、教員の自作教材の割合が高い印象だ。それに加え、既存の教材や新しいシステムを組み合わせ、さらに教員の個性が組み合わさり、教育目標の実現に向けた活用が進んでいる。同校では6月22日に、近未来フォーラムを予定しており、タブレット端末を始めとしたICT活用のさらなる進捗について報告する考えだ。
(※1)VersaPro(NEC)120台・iPad(Apple)33台(※2)Lenovo(※3)Surface(マイクロソフト)

【2014年2月3日】

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