【ICT活用と新しい学び】教育の情報化推進フォーラム

 平成25年度「教育の情報化」推進フォーラム(一般財団法人コンピュータ教育推進センター主催)が2月28日・3月1日に東京都内で開催され、2日間延べ1550名の教育関係者が参集した。テーマは「スマホ時代の学びと冒険」。当日は、小中学校、高等学校の教員などが行った様々な授業でのICT活用について報告された。授業活用の報告の一部を紹介する。なお今年度から、同財団は一般社団法人日本教育情報化振興会として新たなスタートを切る。

ジグソー学習でiPadを活用―岩美町立岩美中学校

  岩崎有朋教諭(鳥取県岩美町立岩美中学校)は、「葉のつくりとはたらき」(中学1年・生物)において、「主体的な学び」と「協働的な学び」の2つを柱にジグソー学習の形態を用いて実践した。

  ICT環境は、iPad12台、電子黒板、無線LAN、xSync(児童生徒用タブレットと電子黒板の連携システム)、ロイロノート。
単元では、葉のつくりやはたらきを裏付ける実験や観察が4種類ある。そこでそれぞれについて、4つの専門家グループに分け、iPadを活用して実践・検証・まとめを行った後、それぞれ自分のホームグループに持ち帰って説明を行う。専門家グループに分かれることで自分が徹底的に学ばなければホームグループに戻った時に説明ができない仕組みを作った。

  活動のキーワードは「人に尽くす」こと。

  授業後の生徒アンケートでは「みんなで教え合って、みんなで賢くなるということの大切さを学んだ」、「自分だけが分かっていても、教えてあげられないと自分も人も分かったことにならない」などの感想があがった。

  自分自身が学ぶことは人のためにも役立つこと、自分が理解したことを人に伝えるためには、適切な表現が必要であることなどを体験的に理解でき、その学びを支えたのがiPadなどのテクノロジーであると発表された。

家庭学習との連携 4パターンを検証― 佐賀市立若楠小学校

  児童が学習の主体となり、学習目標の達成や課題解決を深める「協働的な学び」を展開するにはどのように家庭学習と授業をリンクするのが効果的なのか。

  佐賀市立若楠小学校では、総務省「ICT絆プロジェクト」実証校で、4年生以上の全教室に電子黒板とタブレット端末が整備されている。

  同校の内田明教諭は、家庭学習とのリンク方法を4つのパターンで行い、効果的な方法を考察した。

  (1)家庭学習で学習課題に対する自分の考えを持つ、(2)家庭学習で基本的な事項について予習する、(3)既習事項の復習を中心として、予習は児童の判断に任せる、(4)既習事項の復習だけをする。

  前記4パターンを、国語「新聞記事を読み比べる」、算数「比例をくわしく調べよう」、算数「広さを調べよう」、算数「立体をくわしく調べよう」など5つの単元で実践した。

  タブレット端末は、実践によって、3人グループに2台、ペアで1台、3人グループに1台と利用方法を変えさせた。

  家庭で既習事項の復習だけをさせた5年生の単元の授業では、まず4年生の教科書を電子黒板に投影して既習事項を確認。その後、紙、電子黒板、タブレット端末、黒板など児童の好むスタイルで、立体について調べさせた。

  内田教諭は、「家庭では復習を中心に行った方が無理なく継続できるのではないか」と報告した。

Skypeで離島をつなぐ―唐津市立加唐小中学校と松島分校

  玄界灘に位置する加唐島と松島2つの離島が校区となっている唐津市立加唐小中学校および松島分校は極小規模校だ。

  児童生徒数の減少により、多様な話し合い活動が難しいこと、松島分校の中学生はスクールボートで島間を移動して登校しているが、荒天でボートが欠航した場合は自習になるなどの課題があった。

  そこで同校の川副暢教諭は、Skypeを活用して2つの島をつなぎ、これらの学校課題を克服するとともに児童生徒の交流を他の学校や機関、地域に広げようと取り組んでいる。

多人数で学び合い 話し合う場を設定

  実践の目的は「学び合い・話し合い活動の充実」、「外部機関との連携の充実」、「本校・分校間の物理的制限の克服」の3点だ。

  本校・分校ともに、1名の学年もあったため、それまでは1人での探究活動も多かったが、Skypeを活用することで、リクリエーション内容の話し合いや遠隔による合同授業など、さまざまな学び合いの場を設定することができた。

  社会科見学を近隣校と合同で行い、事後の感想交流も行った。少人数の顔見知りとの交流が多い児童生徒にとって、ほぼ初見に近い相手とのやり取りは新鮮であったという。

外部機関と連携

  また、小学校3年生から中学校3年生までを対象に国立天文台ハワイ観測所の専門家を講師として行った遠隔授業では、宇宙に関する授業や観測所の紹介を直接聞くことができた。

  児童生徒はハワイの専門校とリアルタイムで交流ができることに喜びや驚きを感じながら、意欲的に質問や感想を話すことができた。

  さらに、同校に海洋温度差発電の権威である元・佐賀大学学長の上原春男氏を迎え、近隣の3校を含む4校をSkypeのテレビ会議システムでつなぎ、遠隔授業を実施した。

物理的制限を克服

  スクールボート欠航時の学習については、分校生徒に対し本校職員室からSkypeのメールで学習課題を送付して解かせたり、テレビ電話機能を使って質問を受け付けたり、解説を行っている。秋以降は欠航が相次いだことから、こういったシステムの活用で児童生徒の学習の保障にもつながった。

  さらに、Skypeを活用することで、2島間を移動する時間をかけずに職員会議を行うことができた。

  実践の成果として、児童生徒の「世界の広がり」や「コミュニケーション能力の向上」、「PC操作スキルの向上」、「学習機会の保障」、「郷土愛の伸長」が挙げられた。今後は「交流校・機関の拡大と充実」、「多地点接続や安定した接続についての研究・検討」を視野に取り組んでいく。

【2014年4月7日】

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