タブレット端末の教育活用

"高度な探究学習"にICTが活きる―東京大学大学院 市川伸一教授

経験を積みセンスを磨く

「学びのイノベーション」とは、育てる資質・能力や、学びの内容の変革である。

ICTを活用した学びにおいて、遠隔教育や反転授業などの事例もあるが、初等中等教育の現状では、ICTを活用した遠隔教育や反転授業はまだ一般的ではない。しかし、遠隔教育や反転授業をするしかない場合や、教員・生徒にそれが実現できる力量がある場合には、ICTは有効に機能する。

通常の学校においてICT活用が明らかに効果的なのは、「協働学習」における高度な探求学習だろう。そのような学習を求めるときにこそ、ICTが活きてくる。例として、幅広い情報収集の可能性、データの分析・加工、遠隔地とのコミュニケーション、十分に準備された発表、長いレポートの編集などだ。現在、大学で求められる学びはまさにこれらであり、だからこそ大学生にとって、ICTは不可欠の道具となっている。

では、初等中等教育において、高度な探求学習を実現するための課題は何か。

最初の課題は、どの段階で、どの程度の探求活動を取り入れるかだ。発達段階や子供の実態を踏まえた検討が必要になる。早期に取り組むほど効果的であるというわけではない。

次に必要なのが、教員のICT活用指導力だ。

教員のICT活用指導力として重要なのは、技術的な能力以上に、自らが生活や仕事の中で探求的な活動を日常的に行っていること。そこにICTを活かせるセンス、そして経験だ。経験を積みセンスを磨くには、教員自身が探求活動に取り組むことが必要になる。まずは研修などで、良い事例に触れることが大事。

ICT活用は教えるツールとしての活用で終わるのではなく、「子供が学ぶツール」として有効に使うことができれば、それは、学びのイノベーションと呼ぶことができる。これを実現するためには、研修において、その有効性を教員自らが体験していくことができる「活動型の研修」が有効であろう。

【2014年6月2日】

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