反転授業“使いどころ”適切に判断を

先駆者アーロン・サムズ氏が講演

サムズ氏
サムズ氏

PCやタブレット端末で授業の動画を見て自宅で予習してから学校の授業で知識の定着や応用的な学習を行う「反転授業」が新しい授業のスタイルとして注目されている。その「反転授業」の先駆者がアーロン・サムズ氏だ。氏は現在アメリカの神学校でデジタル学習の主任を務めており、このほど著書「反転授業」を上梓。それに伴い講演会並びにワークショップが5月22日・立命館大学(京都)、24日・東京大学(東京)で開催された。

サムズ氏は「反転授業」開始のきっかけについて、「教師が一方的に知っていることを語り、生徒は教師の話を理解していない状態で聞くだけ。帰宅してから教わったことを定着させるという最も難しい作業に自力で取り組まなければならない。こうした従来の授業のあり方に疑問を持った。授業の内容を動画で見て、知識を身に付けてから教室で授業を受けることで時間を有効に活用できる」と語る。

「反転授業」ではビデオ動画で学習することが注目されがちだが、その後の教室で生徒と対面した授業で何を教えるかが重要だという。実際の対面授業では、新たな状況を設定して課題を解決するなど応用的な学習にまで踏み込んだ。その際に教師は専門性に裏打ちされた経験豊かなナビゲーターとなって、生徒を上のステップへと押し上げることが求められる。

そうした「反転授業」にも様々な課題があるとサムズ氏は語る。

例えば、デジタルデバイド。インターネットにアクセスできない生徒が学習面で不利にならないよう、ビデオ動画をUSBメモリ、DVDなどで渡すなどの対応が求められる。また、動画を見てこない生徒もいるため、事前学習をせずに授業を受ける生徒のことも考えなければならない。

評価についても同様だ。反転授業では、生徒を評価する形成的評価が従来の授業と比べて大きく変わる。対面授業において、教師は教室内で生徒と会話を交わしながら、どれぐらい学習内容を理解しているのか、常に形成的評価を行う。そこで誤解や誤認を発見したら、軌道修正することも欠かせない。

「すべての授業を反転授業にする必要はありません。反転授業の使いどころを適切に判断することで、より良い授業スタイルが生み出されるでしょう。反転授業を行うことが最終的な目的ではなく、教師中心の授業から学習者中心の授業へと移行するための手法であることを忘れないで」と語って講演を締め括った。

講演会後のワークショップではサムズ氏が進行役となり、ビデオ動画を作成する際に便利なアプリケーションを紹介。ワークショップ参加者は、アプリをダウンロードして、クオリティの高いビデオ教材が簡単に作成できることを体験した。

■書籍「反転授業‐ 基本を宿題で学んでから、授業で応用力を身につける」

著者がアメリカで取り組んできた「反転授業」の誕生の経緯から、反転授業を薦める理由、反転授業の実施方法を紹介。さらに次のステップとして反転学習と完全習得学習を組み合わせた「反転型完全習得授業」についても取り上げている。

ジョナサン・バーグマン、アーロン・サムズ/著、山内祐平、大浦弘樹/監修、上原裕美子/訳、オデッセイ コミュニケーションズ、1620円(税込)

【2014年6月2日】

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