教育委員会対象セミナー・京都 ICT機器の整備計画/校務の情報化

教育家庭新聞社では8月7日、今年度2回目となる第18回教育委員会対象セミナーを京都で開催した。ICT整備・活用の方法や校務情報化の進め方について教育委員会の担当者を中心に情報共有してもらうために全国で開催している。約100名が参加。次回は10月10日、大阪で開催。

10年後の社会に必要な3つの能力ー奈良教育大学 伊藤剛和教授

奈良教育大学 伊藤剛和教授
奈良教育大学
伊藤剛和教授

伊藤剛和教授は現在、奈良教育大学で教育系システムの運用を担当し、教員養成や研修における情報教育を推進している。10年後の社会で活躍する人材に必要な能力として、「人権教育を基盤とした情報教育」「情報活用の実践力」「読解力・コミュニケーション能力」の3つを挙げる。

「人権教育を基盤とした情報教育」とは、健全な情報社会を構築し、そこに参画していく力、情報弱者に対する思いやりを持つ心を育むこと。「情報活用の実践力」とは、情報活用を基盤とした学び方を獲得、問題解決の一連の流れをつかんで生活に活かす力などだ。「学び方を学べる力」とも言える。「読解力・コミュニケーション能力」とは、日本人同士を含め、異文化であっても相手の意図を読み取りコミュニケーションすることができる協調力・協働力を指す。

特に、これからの学びとして求められる「情報活用能力」とは、どのような新しいメディアになったとしても、目の前の現象に潜む課題や問題を見つけ、それを解決するために必要な情報を主体的に取得、理解・把握して次に必要なことが判断できる力、相手の状況を理解しながら、社会的責任を持って情報を発信できる力である。

教育の情報化には「情報教育」「ICT活用」「校務の情報化」の3要素があり、これらを通して教育の質の向上を目指すことが求められている。「情報活用能力」を支える力は、「読む、聞く、書く、話す、見る、見せる、相手の理解、発信の責任」など。これまでの各教科での取り組みが基礎になる。

タブレット活用で期待されること

タブレット端末の導入で期待されていることは、いくつかある。

一つは、「知識の定着」効果だ。効果的なドリル活用や個別指導、家庭学習との連携などが展開できる。

次に、自らの活動を可視化して気づきを促すなどの「自己学習力」の育成。書いた過程や演奏、プレゼン、演技が再現できるといった振り返りの支援などで自らの学びを捉える支援ができる。考える作業や発表の支援や話し合いの活性化などはよく見られる活用方法といえる。

「授業運用のサポート」も大きな役割の一つ。教師の机間巡回などに変わる手段としての活用や、ノートの回収と同様に、授業後に教師が演奏や演技、発表などを閲覧して次の授業の指導に役立てることにも活かせる。

タブレット端末を始めとする新しいツールを活用しつつ子供に情報活用能力を身につけさせるためには、教員にも情報活用能力が必要だ。

たとえば、子供自身が主体的に学ぶ方法を獲得できる授業を構想してそれを実践できる力。プレゼンテーション力や表現力、コミュニケーション力、情報モラル教育の日常的な展開、1人ひとりの子供の力を適切に評価する力など。日常の授業そのものが、子供の情報活用能力を育む手本とも言える。教員も、これからの時代に対応した新しい指導力を身に付けることが求められている。

現在、2008年に作成した「教員のICT活用指導力向上」に係わる研修支援サイト及び研修テキストをバージョンアップ中。出来次第Webで公開する予定だ。(講師=奈良教育大学次世代教員養成センター 伊藤剛和教授)

【教育委員会対象セミナー・京都:2014年8月7日】

【2014年9月1日】

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