デジタル教科書・教材をもっと活用する−”授業の流れ””児童の活動内容”が変わる

学習者用デジタル教材で”試行錯誤” 学びの家庭は黒板やノートに<柏市立中原小学校>

柏市では早期からICT整備を行っており、小中学校の全普通教室にノートPCとプロジェクター、実物投影機を整備。電子黒板やデジタル教科書を導入して日常的にICTを活用して授業を行っている。柏市立中原小学校(西田光昭校長)で算数の授業を取材した。授業者は金子和男教諭。同校は、DISS choolInnovationProjectにより、タブレットPC40台を活用した授業の研究も行っている。

この日の授業は5年生算数「面積の求め方を考えよう」だ。既に学んだ長方形の面積の求め方から、三角形の面積の求め方を導き出し、筋道を立てて説明できるようにするのがねらい。

自力解決してから考えを共有する

電子黒板
三角形の面積の求め方を 考えるヒントを与えた

金子教諭はまず、ノートだけ机上に出すように指示をした。

児童に質問をしながら、平行四辺形の面積を長方形に変えて求めた前時の内容を振り返る。同様の考え方で三角形の面積が求められることを示し、児童に「どうしたら三角形の面積が求められるか」と問いかけていった。

「補助線を描く」(児童)、「線を描いてどうするの」(教員)、「求め方が分かっている形にする」(児童)‐そんなやり取りから、長方形、平行四辺形、正方形などの形にすることで面積が求められることに気づかせていった。

続いて、机からタブレットPCを出すように指示。金子教諭は、平行四辺形、台形、三角形の3つの図が表示された画面から、三角形を選択して基本操作を電子黒板で説明した。児童1人1台のタブレットPCには、前方の電子黒板と同様に方眼線上に三角形が表示されている。これは学習者用デジタル教材を使用したもの。

児童は各自で三角形の面積の求め方を考えた。約20分間の「自力解決」の時間だ。

児童はタブレットPC上に補助線を引いたり、補助線で分割された小さな三角形を移動したりしている。タッチペンでも操作できるが、指を使う児童がほとんどだ。

方眼線上に、三角形を組み合わせて平行四辺形を作り、底辺の長さ、高さを図の線の横に記入して数式を書く児童。三角形を分割して移動し、長方形にして面積を求める児童。同じ補助線でも上部の三角形を分割せずに下部にスライドさせて横長の平行四辺形を作り、面積を求める児童や長方形の4点を色でマーキングして、図の求め方を考える児童もいる。

電子黒板2
電子黒板に提示して自分の考えを
説明する
電子ノート
面積の求め方を画面上で試行錯誤

解き終えた児童は自分の解き方についてワークシートに図形・式・解き方の説明を記入していった。
児童が面積の求め方を考察した後は、様々な考え方・解き方を共有する時間だ。

金子教諭は児童を集中させるために一端タブレットPCを閉じさせてから、児童のPC画面を電子黒板に映し、画面が映された児童ではなく、同じ解き方の友達に前に出て説明させていった。

次に予め用意した図形の解法を記した図を黒板に貼り、確認させた後、児童はワークシートの下方に、友達の解き方や考え方を記入して自分の考えと比較した。

試行錯誤しながら学びの足跡を残す

金子教諭はワークシートと学習者用デジタル教材を併用したことについて、「黒板やノートは、児童がどんな学びをしたかの足跡で、考えた過程を残す必要がある。今回は、タブレットPCで試行錯誤した過程をワークシートに残した」と語る。他の児童に友達の考え方を説明させたことについては、「友達の意見を聞いて自分の考えを見直し、友達の考えと比較することで思考を深めたい」とその意図を話す。

学習者用デジタル教材については「児童が思考を広げやすく、自主的主体的に学習を展開していく、といった授業を組み立てるのに非常に有効だ。学習者用デジタル教材を使用して解き方を考える方がいろいろな考え方を試しやすい。リセットして最初に戻すことが容易なので考えやすい、という児童が多い。教員にとっては指導者用デジタル教材を同時に使うことで図形を黒板に書く手間が省ける。また、より正確な図形で情報を伝えることができる」と述べた。

日々の授業を支援する活動を

デジタル教科書は本校に整備されている算数や社会科では、かなりの頻度で教員が活用している。

 

西田光昭校長
西田光昭校長

私が教員にいつも言っているのは、ICTを使うからといって特別な授業を組み立てるのではなく、普段の授業を行い、その時にICTを使った方が効果があれば、使って下さいということ。また、実物投影機などは本当によく活用されているが、投影の仕方で小さく見えるときがあり、児童にきちんと見せたい場所が見えているのかのチェックもお願いしている。活用を見ていると、デジタル教科書も学年間で横に広がっている。

本校が目指すのは、先進的な事例を作ることではなく、他の学校もやってみようかな、と思うような使い方をすること。広げるためにあえて特別なことはしない、ということを基本に取り組んでいる。

【2015年1月1日】

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