教育委員会対象セミナー・名古屋 ICT機器の整備計画/校務の情報化

市内全小中学校の教員にiPad配布 菊川市教育委員会学校教育課 石山哲也主席指導主事

菊川市教育委員会学校教育課 石山哲也主席指導主事
菊川市教育委員会
学校教育課
石山哲也主席指導主事

教員用タブレット端末で授業改善

静岡県菊川市では「だれもが日常的に」をコンセプトにICT教育を推進している。きっかけは平成21年度のスクール・ニューディール政策だ。すべての小中学校の普通教室にPCとデジタルテレビ(50インチ)を整備、教材提示装置も大半の教室に設置し、教員が日常的にICTを活用できる環境を構築した。

その結果、教員のICT活用指導能力は急速に向上。文科省の「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」の「教員が授業中にICTを活用して指導する能力」で、菊川市は平成20年度まで全国平均を下回っていたが平成21年度から上昇を続け、全国平均を20ポイント上回る90%を超えるに至った。

平成25年度はデジタルテレビを核としたICTを活用した授業が軌道に乗ったことから、より効果的なICT活用に向けて、教員用タブレット端末の導入に向けて動き出した。

自主研究を申し出た小笠北小学校に1クラス1台分として教員用タブレット端末14台を試験的に導入。それにあわせて、有線LANとつないで簡易的に教室を無線化する無線LANアクセスポイントと端末の画面をデジタルテレビに転送するApple TVを整備した。

小笠北小の実践を通じて、大半の教員が抵抗なく、授業でタブレット端末を活用できることが実証された。そこで平成26年度は、タブレット端末、アクセスポイント、Apple TVの3点セットを、すべての市立小中学校の普通教室に配備。クラスを受け持たない中学校の教科担任にも1台ずつタブレット端末が支給された。
また、新たに平成26、27年度の研究指定校となった河城小学校には教員用とは別に児童用に24台のタブレット端末が渡された。

2つのルートで整備

理想的な環境が実現した背景には、2つのルートで整備を進めてきたことが大きい。通常、教室へのPCやデジタルテレビなど教育関係の情報機器整備は教育総務課によって行う。本市では、タブレット端末の導入については学校教育課が進めた。教員の指導力向上や児童生徒の学力向上など授業改善にタブレット端末は欠かせないものとして必要性を訴えたことが導入へと結びついた。

効果の客観的検証と学校間格差が課題に

教員がタブレット端末を手にしたことで授業は大きく改善された。現在、課題となっているのは、タブレット端末を授業に活用できる学校と、そうでない学校の間に生じる学校間格差。管理職を巻き込み学校全体で取り組むことや校内研修を進めることが活用の第一歩となる。

菊川市では全体的に教員の指導スキルが高まっているため、活用が進んでいる学校の教員が他の学校に出向いて指導するケースも見られ、学校間格差も次第に埋まりつつある。

効果の客観的検証も課題。研究指定校の河城小で行われる研究発表会などを通じて導入の成果が検証される予定だ。(講師=菊川市教育委員会学校教育課・石山哲也主席指導主事)

 

【第22回教育委員会対象セミナー・名古屋:2015年2月13日】

【2015年3月2日】

 

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