教育委員会対象セミナー・大阪 ICT機器の整備計画/校務の情報化

教育家庭新聞社では10月10日、第19回教育委員会対象セミナーを大阪で開催、定員を上回る85名の参加申込があった。関西圏はタブレット端末の整備・活用が進んでいるが、ICT整備・活用に関する3本の講演について、教育委員会参加者からはいずれも「非常に参考になった」というアンケート回答が多く、教員の参加者からも同様の関心が寄せられた。校務支援システムや無線LAN、電子黒板についての関心も高い。今年度は、今後東京、福岡、名古屋、岡山で本セミナーを実施していく。

ホームページの更新 毎日、日常的情報をー国際大学GLOCOM 豊福晋平氏

国際大学GLOCOM 豊福晋平氏
国際大学GLOCOM
豊福晋平氏

学校広報は信頼形成が出発点

文科省の定義と違うが教育の情報化には3つの領域があると豊福氏は言う。学習活動の情報化、校務の情報化、広報である。その対象はそれぞれ、学習活動は主に児童・生徒、校務は教職員、広報は学校内外の人である。

一般社会人を対象にした学校の情報提供に対する満足度調査で、全体で約6割が不十分と回答。来春小学生になる子を持つ親ではさらに高く約7割になる。一般社会人は学校を、「何をしているか分からない」「事件・不祥事ばかり起こしている」など不信の目で見る傾向がある。マスメディアが学校の非日常を好んで報道するからだ。平穏無事な日常にはニュース価値がなく、大きな事件が起これば類似のエピソードが掘り起こされ、日本全国の学校で課題が蔓延しているかのような印象を与えてしまう。

実態を知らない人々から一方的に疑いの目を向けられるのは学校関係者にとって理不尽だ。学校から直接もたらされる情報よりマスメディアやMの情報量が勝ってしまう状況と言える。

学校不信を吹き飛ばすためには、学校自らが信頼関係を作ることが重要だ。そのためには学校に関わる人々のニーズに応える、「地味でベタな学校日常」情報を毎日届けることだ。例えば、今日の給食メニューはまず報道対象にならないが、保護者にとっては献立を考える上で大切な情報だ。

日本では広報は宣伝(promotion)と同義と捉えられる事が多いため、学校広報は公立校には必要ないという誤解も生じやすい。しかし、広報(PR)は本来、組織と公(public)との関係(relations)を作ることを意味する。宣伝のような一方的な情報伝達ではなく、相互の関係を持続的に形成するのがポイントだ。

広報の対象は直接的には児童生徒の保護者。しかし、学校ホームページ(以下、HP)は、保護者でなくても学校に興味を持った人が最初にアクセスする窓口となる。例えば、転勤や海外から帰国する際に我が子の転校先を探す手段として欠かせない。毎日の様子がよく分かり、子供も安心できそうだからとその学校を選択する例が多い。

学校HPの更新頻度は年々増加している。しかし、それは一部の学校だけで、多くの学校はあまり更新していない。

実は、教育委員会の対応次第で更新頻度は大きく変わる。例えば、愛知県一宮市は2004年以降急激に頻度が高くなり、2010年にはほとんどの学校が毎日HPを更新するようになった。教育長が大変熱心で、更新していない学校に直接電話を入れるという。一方、10年間ほとんどの学校が停滞したままの自治体もある。

学校HPの更新には負荷がかかるので、無理なく効果的に続ける3つの条件整備がカギだ。第一は、広報活動の意義に対する組織合意と動機付けが必要。第二は省力化と負担減。CMSを使えば、ウェブ画面に文章を記述するだけで簡単に記事作成ができ、多様な書き手を集めてチームで運用可能だ。電子決裁を活用すれば管理職から迅速に記事掲載許可が得られ、すぐに公開できる。迅速に更新できる環境を作り、高頻度に情報を回転させる体制を作れば良い。第三は管理職が積極的に関与することだ。HPを情報担当者に丸投げしても機能しない。管理職が学校を俯瞰的に語り、組織としてのポリシーを示す事は欠かせない。

新潟市立亀田東小学校では、毎日各学年の担任に限らず、栄養士・図書館司書、そして子供たちも委員会活動の一環として、毎日記事投稿することが習慣化している。1人1記事でも多様で視点の異なる書き手の参加により、1日20記事以上が更新される体制が長らく維持されている。

学校HPを繰り返し閲覧する人々の満足度を高めるには、多様な立場の書き手を増やし、投稿数を増やすことが重要。毎日の記事が多く残れば後に振り返りの資料になるメリットもある。

(講師=国際大学GLOCOM准教授 豊福晋平氏)

【教育委員会対象セミナー・大阪:2014年10月10日】

【2014年11月3日】

関連記事

↑pagetop