特集:次期学習指導要領と教育の情報化

3D-CADでコマを作成 空間認識力を育む<清明学園初等学校>

XYZ軸を小4で体験

3D-CAD
3D-CADで様々なコマを設計
360度回転して形を確認する

清明学園初等学校(横山豊治校長・東京都)は9月21日、4年生を対象に3D―CADソフトと3Dプリンターを活用した出前授業をPC室で実施した。出前授業は、埼玉大学教育学部と富士電機ITソリューションが提供。両者は連携してITを活用したものづくり教育の支援を行っており、出張授業もその1つ。この日の授業は「3Dプリンターでコマ作り」。授業者は、山本利一教授(埼玉大学教育学部)とものづくり教育推進センターのスクールアシスタント。多数の大学生もサポートについた。

埼玉大・富士電機ITが出前授業

3Dプリンターに作れない形はない

スケルトンの靴、ギター、フルート、義手、家――3Dプリンターの作品が提示されるたびに児童は「えー!」と驚きの声を上げる。山本教授は、赤身と脂身を材料にして見事な霜降り肉を3Dプリンター(フードプリンター)で成形できることを示し、「3Dプリンターで作ることができない形はない」と説明。3Dプリンターで作った家を販売している国があると話した。

児童は、3Dプリンターで製作したスパナやカエルなども実際に触れて確認した。

小4で3D学ぶ

3Dプリンター 霜降り
赤身と脂身を材料に3Dプリンターで出力した霜降り肉に驚く

「今日は3Dソフトを使った学習をします。小学校4年生でこれらに取り組むのは、皆さんが日本で初めてだと思います」

出前授業は全4時間でこの日は2時間目。3D―CADソフト上で「コマ」のデザインを図面に起こす。

授業で活用する3D―CADソフト「作ってみよう!」は、日本で初の教育用3Dモデリングソフト。小中学生でも簡単に3次元の認識力を高め、立体をデザイン。3Dプリンターで出力してものづくりの喜びを体験できる。XYZ軸についても体験的に学習でき、数学的な素養を身に付けることができる。

3D―CADソフトの操作説明の後、児童は、コマの「軸」「底」「土台」をそれぞれ選択。大きさや太さ、位置を調整して各自のデザインメモに従って図案を描いた。拡大・縮小や、上や斜めから見たときの形も確認でき、1操作ごとに画面上に起こる変化に「すごい!」と感動する様子も見られる。

XYZ軸については授業では触れないが、上下位置や高さ、大きさ、厚みを調整すると、Z軸(タテ軸)の数値が変わることが体験できる。

図案とは異なる新たなコマや2個以上製作する児童もおり、ソフトの豊富なテンプレートで、様々なデザインのコマが生まれた。

山本教授と3Dプリンター
授業者の山本教授と本授業で活躍した3Dプリンター

3時間目以降は、各児童の図案を3Dプリンターで出力(※)。実際にコマを回して、回りやすい形の要件を話し合い、再度デザイン。改良案のコマを製作して彩色、研磨して仕上げる。(※)児童作品のプリントは富士電機ITで実施。

最初の作品は失敗を前提に

授業者を務めた山本教授は「従来、3D―CADソフトは難しく、大学生でも2時間以上学ばなければ扱えない。教育用3D―CADソフト『作ってみよう!』は、小学生でも短時間でCADを使うことができる画期的なもの。児童の空間認識力を育み、ITを活用したものづくりの素地を育むことができる」と語る。授業のポイントとして「最初の作品は失敗が前提。試作を繰り返して意見を交換しながらより良いものづくりに取り組む姿勢を育むことも重要な狙いのひとつ。小学校で取組が始まるプログラミング教育の目的とも合致する」と語った。

横山校長は、「将来必ず役に立つ教育として、情報科主任と相談しながら、積極的に広げていきたい」と語る。

同学園中学校の鈴木敏弘校長は「中学校数学では、Z軸の概念が入ってくると途端に苦手意識を持つ生徒がいる。3Dソフトで気軽に楽しく取り組めば、立体に苦手意識を持つ層をサポートできそう」と話した。

「作ってみよう!」ジュニア版を開発

教育用3D―CADソフト「作ってみよう!」の対象は小学校4年生〜高校生。自治体向けアカデミーパックとして、学校フリーライセンス+3Dプリンター(無償)も用意。さらに12月には、小学校3年生以下を対象にした「作ってみよう!」ジュニア版の発売を開始。XYZ座標軸の概念なし、パズル感覚で空間認識力を育むことができる。いずれもオープン価格。開発はアバロンテクノロジーズ。販売はアイティーオーエス。

出前授業を提供 ものづくり教育支援センター

富士電機ITソリューションは教育支援・サービスの提供を行う「ものづくり教育推進センター」を新設。教育用3Dデータ作成ソフトを使った出前授業を行っている。さまざまなメーカーの3Dプリンターを設置したショールーム「FSL Cafa」も本社(東京都千代田区)1階に開設。3Dプリンターの体験や勉強会を開催している。

■ものづくり教育支援センター=www.fujielectric.co.jp/fsl/solution/school/fsl.html■出前授業申込メール:x-partner-monokyo-system@fujielectric.com

 

【2016年10月3日】

 

<<ひとつ前にもどる

関連記事

↑pagetop