連載

【第37回】ICTキャンパス 二松学舎大学

漱石アンドロイド完成文学の講義を視野に

漱石アンドロイド
文豪・夏目漱石のアンドロイドが講師となり、学校で授業を行うプロジェクトが進行中だ。
写真は完成した漱石アンドロイド(画像提供:二松学舎大学)
漱石アンドロイド

「漱石アンドロイドプロジェクト」は、二松学舎大学(東京・千代田区)によって、大阪大学大学院基礎工学研究科(石黒研究室)との共同研究で進められてきた。昨年12月、「漱石アンドロイド」が完成し披露された。

漱石没後100年 生誕150年を記念

二松学舎大学は、かつて夏目漱石が学んだ学校。2016年が漱石没後100年、17年は生誕150年であることから、この時期に合わせ、夏目漱石をアンドロイドとして蘇らせるプロジェクトに着手してきた。

制作にあたっては、アンドロイド研究の第一人者である石黒浩大阪大学院教授が監修した。

外見は大正元年、漱石45歳のときに撮影された写真にもとづいて作成。頭部は、朝日新聞社が所蔵するデスマスクを3Dスキャンして得られたデータから作られた。

胴体や手足は、デスマスクのサイズを基準にして、アンドロイド製作の目標年齢に近い漱石の写真を参考に、顔のサイズから各部位のサイズを導き出した。

アンドロイドが着ている服は、当時の写真や文献資料から考察を進める一方で、早稲田大学理工学術院石川研究室に、モノクロ写真のカラー化を依頼し、その画像をもとに生地の色を決めた。

音声は、夏目漱石の孫である夏目房之介氏の声を録音して音素に分解、それを再合成して人工音声を作り出した。

頭部、頸部、腕部など44か所には空気アクチュエーターを埋め込んであり、首や両腕を動かしたり、表情を変えることができる。

今後はアンドロイドに搭載する授業・講義用プログラムを開発し、実際に大学などで授業や講義を行っていく計画だ。

アンドロイドを通して新たな漱石研究

漱石アンドロイドは、授業や講義といった教育関連での活用だけではなく、新たな文学研究にも役立てていく。

二松学舎大学では、授業・講義用プログラムを開発していく中で、漱石文学や漱石の話し方などについての研究を深め、新たな「漱石像」を探求するとしている。

アンドロイドの漱石像と、個々の漱石研究者が抱いている漱石像との相違点などについても、研究対象としていく予定だ。

さらに、社会におけるアンドロイドの受容性についても研究を進める。漱石アンドロイドを教育現場で活用することで、漱石アンドロイドが社会にどのように受け入れられ、どういった存在になっていくのかを検証していく。

具体的には、大学・高校・中学の講義や授業を行う際、学生・生徒に詳細なアンケートを実施し、アンドロイドに対する受容性などのデータを蓄積し研究を進める。

可能性を秘めた漱石アンドロイド活用

最近は店頭やホテルでロボットが接客するのを目にする機会も増えてきた。また、囲碁においては、人工知能が世界トップレベルの棋士に勝った。人工知能を使って執筆した小説が、「星新一賞」の一次審査を通過したことも話題となった。

将来は漱石アンドロイドが執筆した小説を読んでみたいが、そのためにはさらに多くの研究が必要なようで、実現はまだ遠そうだ。 

今回の二松学舎大学の漱石アンドロイドを活用した授業や文学研究は、大変に意欲的な取り組みだ。

今後どのような展開を見せていくのか注目していきたい。(蓬田修一)

 

【2017年2月6日】

 

<<ひとつ前にもどる

関連記事

↑pagetop