特集:STEM人材を育成する 

小学校でプログラミング教育

英国 コンピューティングは週1回

英国のプログラミング教育について講演した
英国のプログラミング教育について講演した

コンピューティングはすべての子供が持ち合わさなければならない新たなリテラシーであり、各国では早期から教えるべきであるというのが共通認識となっている。ICT CONNECT21は筑波大学(東京都文京区)で9月21日、講演会「プログラミング教育の世界での取組〜英国における低学年でのプログラミング教育」を行った。講師は、英国の元小学校教員で、現在はプログラミング教材などを開発する英国TTS社でカリキュラム・スペシャリストを務めるアンドリュー・ブッシュ氏。英国におけるK12のプログラミング教育について話した。

英国は2014年より、小学校で新教科「コンピューティング」を開始している。ブッシュ氏は「英国の授業風景は刻々と変わっている。テクノロジーを自信を持って使えるようになること、そのデバイスの裏にある仕組みを理解すること、自らの判断やトライが誤った際には自ら気づき、修正していく力などをコンピューティングで育んでいる。この力は、全ての教科において必要な要素であり、予測がつかない未来を生き抜くための力になる」と語った。

児童自ら課題を設定 「あきらめない力」が向上

問題解決力を身に付ける

1999年からICT教育に注力していた英国では、2013年にカリキュラムの見直しが図られ、「現在のICT教育では世界に遅れをとっている」と判断。新教科「コンピューティング」が始まった。  「コンピューティング」では「コンピューテイショナル思考」を養う。これは、「課題について何が問題なのかを整理、それを解決する力、重要な情報に焦点を当てる抽象化、共通性などを見つける認識力、アルゴリズムを理解して段階的に問題を解決できる力」などだ。問題を体系立てて考え、解決を導く思考プロセスは、あらゆる教科を学ぶ上で重要な要素と認識されている。ブッシュ氏は「世界を変えていける思考力を養い、将来のデジタル世界に対応できるようにカリキュラムを変えた」と説明した。

様々なマットを使って自ら課題を設定してプログラミングする
様々なマットを使って自ら課題を設定して
プログラミングする

コンピューティングは5歳からスタート

 5〜7歳では、「アルゴリズムの理解、プログラムが実行される仕組みの理解、入力出力の理解、何が起きるのかを論理的に予見する力、クリエイティブな応用力」を身に付ける。7〜11歳では、「プログラムをデザインしてそれを実行すること、論理的に問題解決を図ること、論理的かつ明確に説明する力」などを育む。目的にたどり着くための方法は多様にあること、最も適した方法や、うまくいかなかった場合の理由について、児童同士の対話の中で理解できるようにする。ブッシュ氏は、教科「コンピューティング」の効果について「教員の99%が問題解決能力、82%が協調性、96%が計算能力・算数能力、69%が児童の言語力が高まったと考えている。子供たちも、自身の忍耐力の向上、問題解決のためにあきらめない力(レジリエンス)が身に付いたと話している」と語った。

光センサー付き「Pro−Bot」で多角形を描く
光センサー付き「Pro−Bot」で
多角形を描く

児童自ら「課題」を設定

61か国で導入されているというTSS社のプログラミング教材「Bee−Bot(ビーボット)」の活用についても紹介。  ビートル型の「Bee−Bot」は、回転や直進の組み合わせで動きをプログラミングできる。アルファベットや数字を記入したマットを利用して、通常教科でも取り入れている。 「2回前進、3回回転」を繰り返し続けるとどうなるのか、A地点からB地点まで進むにはどうプログラミングするのかなど児童は、自ら「課題」を考え、それを解決するためのプログラミングを2、3人のチームで相談しながら行う。あるチームは「Bee−Bot」2台を「トムとジェリー」に見立て、「トムはジェリーを追いかける、ジェリーは逃げ続ける」プログラミングに挑戦した。図形描画ができる光センサー付き「Pro−Bot」では、「五角形を描く」課題も設定できる。インプット、アウトプットができる「InO−Bot」はタブレットやPCでプログラミングできる。これら教材を米国で販売するテラッピン社では、カリキュラムと教員用トレーニングも提供しており、このほどテラッピンジャパンも設立した。

 

【2017年10月2日】

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