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スマホ時代到来(3) 〜今、大人が知っておきたいこと〜兵庫県立大学 准教授 竹内和雄

リアル社会を補充

 今日は2人の子どもの声を届けたい。どこにでもいる普通の生徒だが、話してみて驚いた。

■20時間 ソーシャルゲーム

SNSゲーム「パズドラ」

  ぼくは去年の秋まで、平日10時間、休みの日は20時間、ソーシャルゲーム。学校では、勉強が特別できるわけじゃないし、イケメンってわけじゃないからもてないけど、ネットでは、ヒーロー。何万人もいるメンバーで最高10位。優越感ハンパなかった。息苦しい学校から一刻も早く帰って、優越感に浸りたかった。唯一、ゲーム以外でやったのはバイト。ゲームで勝てるように武器を買うため。何万円も使ったけど、優越感のためなら惜しくなかった。友達が忠告してくれて、きっぱり辞めて今は受験勉強。ゲームの向こうには何もないことにやっと気づいた。友だちには本当に感謝してる。帰ってくることができてよかった。(高3男子)

■いつも気になって……

  いつもLINEの書き込みが気になる。クラスの女子18人中15人でやっているんですが、話題についてくためには、ずっと見とかなきゃいけない。テレビを観ながらはもちろん、ごはん、お風呂、塾の行き帰りも見ていて、自分に関係する話題はすぐに書き込む。

  辛いのは夜。メールだったら相手が寝たらおしまいだけど、LINEは誰か元気な子がいたら、ずっと起きてなきゃ。私のスマホ、完全防水じゃないから、お風呂はダメって親に言われている。その時間が実はほっとできてたりする。(中2女子)

■彼らの声から わかること

  ソーシャルゲーム上ではメンバー同士でメッセージのやりとりができるので、リアル社会の人間関係に疲れた子どもの逃げ場になることが多い。注意したいのはあくまでネットは逃げ場で、彼らが本当にほしいのはリアルな人間関係。ネットに入り浸るのを責めるのではなく、リアルに帰る援助の方が実は必要。一生懸命、ゲームしているのだ。

  思春期の同調圧力は強い。特に近年のネットを介した圧力の強さは想像以上である。24時間ずっと友だちを意識し続けるのは時に拷問だ。

  先の中2女子は小学校時代、いじめ被害を経験している。些細な言葉の行き違いが原因で、「自分の失敗でいじめられた」と総括している。同じ失敗をしないため、今はネット上でも涙ぐましい努力をしている。

  彼らはネットで遊んでいるだけではない。ネットの上で、リアル社会の補充をしているのだ。

  リアルで得られない優越感であったり、リアルで十分ではないコミュニケーションであったりを、ネットで補完しているとしたら、我々が考えなければならないことは、リアル社会の充実で、ネットの問題ではない。このあたりがポイントである。

【2013年8月5日号】

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