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第5回 全国ICT支援員探訪<九州工業大学情報工学部>

ICT支援員を大学で養成 講座は8科目200時間

情報支援士授業風景
学校現場での指導もプログラムの一環

福岡県のほぼ中央に位置する飯塚市。九州工業大学情報工学部の飯塚キャンパスでは全国的にもめずらしい「ICT支援員(同学では情報教育支援士)を養成するためのプログラム」が開発され、「情報倫理」「教師論」「情報教育支援実習」といった科目が開講されている。その目的と今後について西野和典教授(九州工業大学情報工学研究院)と池田勇教諭(嘉麻市教育センター)、同講座修了生らに聞いた。

■地域の情報教育の支えに

開講のきっかけは、同学が平成19年度に文部科学省「社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム」の選定事業として採択されたことだ。

西野和典教授は、「当時小中高校の教育の情報化が進み、コンピュータやネットワークが整備されるなか、情報教育の指導者や活用を支援する要員が不足していると考えていた。公民館などでの市民向けパソコン講座も増え、ここでの指導者不足も感じていた。九州工業大学情報工学部では、高校の情報科教員養成を積極的に進めており、この経験を活かして小中高校や生涯学習での情報教育を支援する人材を養成するためのプログラムを開発した。地域の情報教育の支えとなること、また雇用創出に繋げることで、大学としての地域貢献を目的としている」と話す。

■32時間の実習科目も受講

本プログラムでは、8科目200時間の講座が用意されている。その内容は「情報倫理」「プログラミング」「情報ネットワーク」「コンピュータグラフィックス」などの情報系分野と「教師論」「情報社会と教育」という教育系分野によって構成される。特徴的なのは、4時間×8回(32時間)の実習を設けている点だ。

実習担当の1人である池田勇教諭は、「実際の学校現場で授業を支援する、生涯学習の場で授業者としての指導を経験することで、授業者の視点を学ぶことを大切にしている」と話す。

■7年間で126名が修了

平成19年の秋から開講し、7年間で126名が修了。全科目の履修認定を受けた受講者には「九州工業大学情報教育支援士」の称号が授与され、学校教育法第百五条(※1)に規定される「履修証明書」が交付される。
平成20年には、修了生の有志が集まり「情報教育支援士会」を立ち上げ、その中からNPO法人が設立されるなど、組織化して近隣の学校や公民館など生涯学習施設での情報教育をサポートしている。

修了生でNPO法人の副理事長である石田典雅氏は、「飯塚市には生涯学習の一環としてマナビ塾という事業があり、その中でマウス操作やタイピングからプログラミングといった子供達のパソコン技術の習得を支援している。年々申込みも増え、ニーズの高まりを実感している。パソコンを買う必要があるのでは?難しいのでは?と聞かれるが、手ぶらで来てもらい、簡単にできることを体験してもらいたい」と話す。

修了生であり同大学学習教育センターの倉光貴子氏は、「今後の課題は、安定した職業として活躍できる場を増やすこと。学校に限らず、民間施設などにも積極的に働きかけていきたい」と話した。

学校現場のICT支援員の必要性が高まる中、予算化の壁は高く、配置が実現しない自治体も多い。ICT支援員=情報教育支援士としての活動の場所を広く求め、地域に根ざしたモデルケースとして発展してほしい。

(※1)大学は、文部科学大臣の定めるところにより、当該大学の学生以外の者を対象とした特別の課程を編成し、これを修了した者に対し、修了の事実を証する証明書を交付することができる。

【2014年8月4日】

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