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第1回日本語検定 2万人が受験
「語彙の不足 」「言葉の乱れ」が
コミュニケーションに影響を与える

萩原民也 氏
東京書籍検定事業部
萩原民也 氏

 「第1回日本語検定(以下「語検」)」(主催ケ日本語検定委員会)が6月16日、全国104会場で実施された。初回にして7歳から92歳まで、計2万人超と予想を上回る受験者が集まった。同検定の取組みについて、東京書籍・検定事業部、萩原民也課長に話を聞いた。

◇   ◇

  「今回の特徴は、2級及び3級受検者が計1万4000人と、全体の7割を占めた点です。2回目以降は学校の団体受検が多くなると予想しています」

  第1回語検の合格率は、2級30%、3級35%、4級38%、5級47%、6級65%(2級合格を受検資格とする1級は初回実施なし)。2、3級の合格率が意外に低い、という印象だが「ほぼ予想通りの合格率」という。「受検後の感想には、『そう難しい印象ではなかったのに答え合わせをしてみると意外にできていなかった』という声が多くありました。初回は1級受検相当の方が2級を受けたこともあり、(1級受検には2級合格が必要)、2級の合格率がやや高かったとも言えます。今後は20%前後で推移すると思います」

  「語検」は、日本語の総合的な運用能力を測るためのもの。敬語、文法、語彙、表記、言葉の意味、漢字の6領域から出題される。受検級は6級(小学校4〜5年程度)から1級(社会人上級)までの6段階。家族全員で受験できる検定だ。合格基準は各領域60%程度以上、総合で70〜80%程度以上だ。

  「2万人もの方にご受検いただけたのも、これまで培ってきた教科書の東書≠ニいう信頼感があったから。創立以来98年になりますが、検定事業は『これまで教科書でお世話になってきた御恩を、皆さんへお返しする』ための社会貢献の一つとしても取り組んでいます」
社会が求める語検

 「一昔前と比べて、相手や場面に応じて言葉を使い分けることが少なくなったように感じます。近年、キレる≠ニいう表現を耳にしますが、それは伝えたい思いがあるにもかかわらず、自分の気持ちを言葉で伝えきれないことも一因ではないでしょうか。語彙の不足や言葉の乱れは、コミュニケーションに悪影響を及ぼすこともあります」

  検定実施に先駆け、約60社の人事・研修担当者に対して行ったヒアリングからは、PCなどの知識やスキルはあるものの、発表資料やビジネス文書の作成など、表現する力の弱い社会人が多いことがわかったという。

  「今回、社会人受検者が多かったのですが、中でも、新人研修などで受検させる会社も目立ちました。また、個人受検では18〜24歳と30歳前半の就職活動やキャリアアップを考える受検生が多く、特に多くの女性に支持されたようです」

指導者育成も視野に

 既に第2回「語検」の受付が開始。東京書籍ではそれに向け、級別の問題集を、来年には「敬語」「文法」など領域別の参考書を発行する予定だ。また、今後更に1級の上位級として日本語を指導できる新しい資格を設け、地域への拡がりの核となる人材育成や、eラーニングでの学習提供も考えている。

  「受検をきっかけに、日本語や敬語に対する意識が高まった、辞書をよく引くようになった、と聞くとうれしいですね。理想は皆さんの日本語への意識が高まり、この検定が必要なくなることです」

(聞き手 吉木孝光)

【2007年8月4日号】

 


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