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教科「情報」
教科「情報」の確立と発展へ
「情報」実施 2年目迎え

総合的学習と密接にリンク
早稲田大学高等学院

 「教科『情報』と『総合的な学習の時間』を密接にリンクさせている」と語るのは、早稲田大学高等学院の武沢護先生。

 1学年約600人、合計約1800人が在籍する同校。「総合的な学習の時間」を3年間、1単位ずつ設置し、総合学習の時間には12学級を2つに分け24人の先生が貼り付く。1年次は12月までテーマを決めてひらすらプレゼンテーション。1月から翌2年次にかけてディベート及び論文作成、3年次は個人論文作成を行う。

基幹教科に位置づけ
  レポート・実技・筆記試験で評価

 「情報」はデータ分析するためのツールとして、プレゼンテーションや論文作成に密接に関連することになるが、それに対応するため同校では「情報C」を基幹教科として位置づけ、1・2年次に1単位ずつ設置。情報免許取得者4人(専任)と4人の非常勤講師で担当している。

 授業形態は、1年次は1クラス約50名で展開され、2年次は実習を含め綿密に対応するため、1クラスを2つに分割し、約25人を1人の教員が担当する。そして1年次は、コンピュータ室の利用方法、Waseda−netメールの設定と使用、情報モラル、ネットワーク・情報化社会の仕組み、などについて、2年次はWebページ作成、データ分析、モデル化とシミュレーションなどを独自の教科書を作成し学ばせている。

 評価方法は、1年次は学期ごとにレポート、実技試験、筆記試験を実施。2年次1学期はHTMLの簡単な実技試験(タグうち)と作品で評価した。

 武沢先生は今後の試験に資するため、1年次の各期末試験の代表的な出題項目について生徒の正答率を調査。また、「情報」の授業の各学習項目について「理解度」「興味・関心度」「役立ち感」を生徒にアンケート調査した。

 その結果、「ネットワークの仕組み」「デジタル化と圧縮」に関する生徒の正答率は60%以下と低く、「論理回路」「コンピュータの機能」「ネットワーク」の興味・関心度も低かった。

 「調査結果から、筆記試験での適切な出題の難しさを感じる。また、不人気である自然科学的な教材を、教員がもう少しきちんと作ることも課題の1つである」と武沢先生は語っている。

 1年次に生徒全員に早稲田大学のメールアカウントが配布している同校。来年度は3年次情報関連選択科目群を新教育課程に対応させ、「情報メディア」「情報サイエンス」「コンピュータ」の科目を開設する予定である。




現状と問題点
神奈川県立総合教育
センター研修指導主事
柴田功氏に聞く

柴田功氏 高校に普通教科「情報」が設置されてから約1年半。全国の高校で授業が進展しているが、現場の現状と問題点について、前・川崎北高校教諭で、現・神奈川県立総合教育センター研修指導主事の柴田功氏に話を聞いた。
ソフトの習得が
  目的ではない

 「教科『情報』関連の研究会やセミナーなどで 多くの情報科の先生と出会ったが、そこで授業内容を伺うとワープロやプレゼンテーションソフトの名前をあげることが多く、相互評価をさせたり、生徒に自由にテーマを決めさせて考えさせるということをしていない学校が意外に多く感じられた」
 そのような状況は教科「情報」の優秀な実践者が多い神奈川県でさえ例外ではなく、全国的な状況と言えるかもしれない。

 「平成12年度から3年間にわたり、現職教員を対象にした15日間の免許講習が行われた。免許取得者の中には、あまり意欲的でない人もいたと聞く。

 また、免許講習会では『情報』の授業をイメージさせることよりも、ネットワーク、マルチメディア、アルゴリズムなど専門教科・情報・の幅広い知識や技能の修得に重きを置いていた。今振り返ってみると、普通教科・情報・の内容をじっくりと講習し、評価方法の研修や模擬授業なども取り入れられていると良かったように思う」


サーバが使われていない
 「また、サーバを使っていない学校も多かった。使っていてもきちんと設定されていないので生徒が保存すると、他の生徒のファイルに上書きしてしまう。フロッピーで提出、印刷させて提出させている学校もあるようだ。

 『情報A』を設置している学校で、ホームページづくりをさせていない学校、プレゼンテーションもスライド作りで終わっていて、発表をさせていない学校もあるようだ。」

 教科「情報」はまだ始まったばかり。「『情報』がすべての教科の基盤」であると考え、意欲を持ち先行して実践を積み重ねてきた先生もいる。一方で、15年度から初めて「情報」の授業を実践し40人の生徒を相手に苦闘している教員も多いのかもしれない。

 「今年6月から8月にかけて、高知県、福岡県、佐賀県の教育センターに依頼されて、情報科研修の講師をした。サーバの設定方法−−生徒一人ひとりのフォルダーをサーバに一括して作成する方法や生徒の活動はすべて校内のホームページに各自作り込み、授業の進展とともにホームページがどんどん深くなっていく授業づくりの方法を紹介すると非常に喜ばれた。

 そして、生徒のホームページは他の生徒が自由に閲覧でき、生徒同士が『著作権を侵害していないか』など相互評価していく……」

 さて、小中学校のリテラシーの向上に対して、高校は今後どう対応していくか。また、「情報A」、「情報B」、「情報C」の選択は?

 「児童生徒のリテラシーが向上していけばいくほど、課題設定、テーマ設定が大切になる。

 しかし、仮に小中学校でホームページ作りを習ったからといって、高校でする必要性がないということはない。高校という年代で、その世代に合った知識と経験を盛りこんで作ることに大きな意義がある。

 児童生徒のリテラシーの向上により『情報A』が必要無くなるように言う人がいるが、『情報A』は、情報の収集−加工−発信といった情報化社会の中で大切な要素を柱にした科目であり、そのサイクルを繰り返すことの重要性を感じる」



【2004年9月4日号】