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教育の「見える化」ロボットで実現

「アルゴリズムの理解」中学・高校段階で
「ロボット教材」カリキュラムを提供

 
(株)アフレル代表取締役 小林靖英 氏

 株式会社アフレル(東京都)は、中学校から社会人を対象とした、自律型ロボットを活用したプログラミング教材を教育機関向けに提供している。車型ロボットの開発実践、制御等、実習を中心とした教材カリキュラムだ。
 なぜ「ロボット」を使うのか、それによって何が実現するのか。同社代表の小林靖英氏に、中学校技術科向け「WARP」シリーズと、高等学校以上向け「REAL」シリーズのねらいについて聞いた。

なぜ「プログラミング」学習が必要か    

 かつて、時計やラジオは、分解すればその仕組みが分かるものだった。ところがコンピュータのプログラムは、通常目に見える「もの」ではなく、分解しても分からない。その一方、見えにくい、という点は、産業界の視点から見ると、競争力のひとつになる。

 「自動車は分解されることで他国にその技術を真似されるが、プログラムは極めて真似されにくいもの。日本の将来の産業競争力は、コンピュータの中にある」と小林氏は述べる。

なぜ「ロボット」か

 いまやコンピュータは身の回りのあらゆる電化製品に使われている。どういう仕組みでエアコンが人間の位置や温度を感知し、自動的に温度を変えていくのか―といった「仕組み」を中学生高校生の段階で知ってほしい、と教材カリキュラムを作成した。

 
車型ロボットでアルゴリズムを学習
アイコン型プログラミング言語を使用

 ロボットを使うことで、そのプログラムが上手くいっているのかどうか、教師にも生徒にも「ひと目」で分かる。「ひと目でわかる」ということは、「課題」を発見しやすい、ということ。コンピュータに向かってプログラムを組んでいるだけでは、その出来不出来が見えにくいうえ、近年のコンピュータは性能が高く、多少まずいプログラミングでも、なんとか動いてしまい、「大失敗」しにくいかわりに大きな達成感も得にくい。しかしロボットなら、発表・競技会などを開催することも出来、モチベーションアップにもつながる。

 また、ロボットを使うと「同じ課題を解決するために様々な方法がある」「プログラムの仕方で働きが変わる」ということが、体験的に分かる。

「『車型のロボット』が、『車』という『規制』の中でどう課題を解決していくのか、どうオリジナリティを発揮していくのか、が重要。どうにか動くロボットを作ること自体が目的ではありません」

アイコン型言語を使うメリットとは

 中高生向けカリキュラムのプログラミング言語はアイコン型の「ロボラボ」と「NXTソフトウェア」を使用。視覚的で直感的なプログラミング言語なので、小学生でも、説明によって使うことができる。

 「産業界でも新入社員などを対象にプログラミング言語の研修を行いますが、理解不足となるケースも多い。そこから考えると、英語もどきの新しいプログラミング言語や、コマンドという無数のオマジナイを覚えることを初期段階で義務づけるのは無駄が多い、と考えました。Windowsがアップデートを繰り返すように、数年後には新しい言語が出てくるのですから」

 初期段階でより大切なことが「アルゴリズムを理解すること」。「課題をクリアするためにロボットをどう動かすのか、そのためにどのパーツをどう使うのか、モータをどう使うのか、それらをどうプログラムに組み込むべきか―その道筋を考えることが『アルゴリズム化』であり、『ソフトウェアを作る』ことにつながる」と小林氏は述べる。

 プログラミング上の「課題」とは、例えば「まっすぐ走る」「ぶつかったら停止、後退して30度角度を変える」など様々。これは、「性能の改善」につながる。製品開発の過程では、「より早く、より低コストに、より軽量に」など、実に様々なニーズ=課題があり、その課題をどう解決したか、によって、その製品に「競争力」が生まれる。その文脈作りを「ロボット」制作で体験していくことができる。

プログラミングは「ソフトウェア」作りの約2割

「プログラムを組める人」だけを育成することが目的ではない。ソフトウェアの制作の中で、課題を整理してモデル化、制作工程を考える―などの「分析・設計」が4割、プログラミング作業は2割、あとの4割は、ソフトウェアの「テスト」だ。
 「優れた『ものづくり』ができる人の育成を目的とすると、『全体の工程を理解している』人が、良いものを作ることができる」と小林氏は話す。

「難しかった」でも「モチベーションがアップした」  

「WARP」シリーズを使って学んだ中学生からは、学習後、「当初の予想より難しかったが、プログラミングに興味が湧いた」という回答が多くあったという。「難しいからイヤになる、ということにはならない。中学生から企業エンジニアまで研修をしますが、年齢が低いほど、呑み込みが早い。もちろん高レベルで発展性のあるプログラミングについては高校生のほうが上ですが、最初の『呑み込み』に関しては、中学生のほうが断然早い」
 新学習指導要領で、中学校段階でプログラミングの学習を開始するのは、極めて妥当、と言う。

中学校技術科向け「WARP」シリーズ

高校生以上には「REAL」シリーズ

 レゴマインドストームを用いた車型ロボット制作キット、生徒用オリジナルテキスト、学習指導案付き教師用ガイド。教師用ガイドには、「予想される生徒の反応」「授業を進めるポイント」「自己評価項目」のほか、発展課題と課題回答例を複数掲載。指導案は6時間、10時間、12時間、17時間を用意。1時間単位を見開きカラーで掲載。生徒用テキストはプログラムの作り方をフローチャート式で提示。

 高校生向けカリキュラム「REALシリーズ」は、高校生向けにROBORAB、専門学校や工業高校、大学向けにVialBasic、C言語、JAVA編などを用意。

 価格(税込)=Rチャレンジセット3万240円、指導教材キット(走行コース含む)4200円、生徒・受講者用テクニカルガイド1100円など。学校・教育機関向けトライアルキットあり。
問合せ=afrel-info@ afrel.co.jp

▼WRO国際大会日本で開催
 http://www.kknews.co.jp/maruti/2008/news/080503_5b.html

 

【2008年5月3日号】

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