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大規模・一斉整備の成功事例を全国に伝えたい

愛知県教育委員会 義務教育課 主査 玉置 崇氏

 座談会を終えて―平成21年3月発行された「教育の情報化の手引」第6章「校務の情報化」には、教育委員会がどのように「校務の情報化」を実現していくかについてまとめられている。玉置氏(愛知県教育委員会義務教育課主査)は、江戸川区の事例を「手引」に則って整備された好例であり、短期間にこれほど大規模に導入したという事例は、他の自治体にとって大変良い刺激になる、と述べる。

玉置 崇氏
愛知県教育委員会義務教育課 主査
玉置 崇氏

 校務の情報化は、学校経営を変えるものです。例えば「朝の会」は子どもとの大事な出会いの場ですが、実際には打ち合わせが長引き、あわただしく連絡するだけで1時間目が始まってしまう、というのは学校教員ならば想像がつくシーンです。読めば分かることは掲示板で連絡をすませてしまえば朝の打ち合わせもぐっと短縮されます。そこで生まれた時間をどう使うか、が学校経営です。

私自身の例でいえば、1校のパイロット校から徐々に何年かかけて広げていく、というスタンスで、それが当たり前と考えていました。これは固定観念である、と江戸川区の事例を聞き、考えを改める思いです。

校務の情報化の「肝」は、「通知表の電子化」です。これをしないと、「校務の情報化」とはいえません。それは、通知表はほぼすべての教員が関わるもので、全員がやらざるを得ず、かつその効果がダイレクトに理解できるからです。

通知表の電子化には、様々なメリットがあります。例えば若手教員の所見欄ですが、間違ってはいないが、いまひとつ心に届きにくい表現である、という場合があります。そんなときは、その子の過去の所見欄を見て『このように表現するのだ』と学ぶことができます。電子化されていると、すぐに過去のデータを見ることができます。また、架空の文例と違って納得しやすいせいか、若手教員でも分かりやすく心のこもった所見が書けるようになります。今後は、指導要録の電子化も進むと考えられます。

テクノロジーの進化で
校務の情報化が進めやすくなった

初年度から通知表の電子化を21校に一気に導入した、という点も特筆すべき点。これだけ大規模でありながら個別の要望にもスピーディに対応できる体制は、数年前であれば考えられません。学校ニーズを把握しながらPCの処理能力やLANのスピードなどテクノロジーの進化を取り入れたシステムといえます。

自治体が大きいほど、新しいシステムを導入するには説得する対象が増えていくものです。その点、先行モデルもある程度の規模を確保することで、周囲の学校に「次は自分たちの番」と「覚悟を決めてもらう」手法は各自治体にも参考になる手法ではないでしょうか。

江戸川区では、区のシステムと学校のシステムは切り離されていますが、最近では、それらの一部を連携させたシステムの導入を計画している地域もあるそうです。今後、学校の情報化が進み、セキュリティ意識が高まり、活用が馴染むにつれ、市区のシステムとの連携も進んでいくことが予想されます。

校務の情報化こそ、テクノロジーの進化の恩恵をダイレクトに享受しやすいジャンル。より良いシステムが迅速に整備できる土壌が整ってきた、といえるのではないでしょうか。

【2009年10月10日号】

関連情報リンク
→校務情報化‘肝’は通知表の電子化 座談会 玉置崇氏(愛知県教育委員会)×東京都江戸川区教育委員会(091010)


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