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【特集】公立学校の省エネ対策

教育委員会に管理責任も

エネルギー年1%の削減努力義務

 「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(以下、省エネ法)が改正され、特定事業者に教育委員会も該当する事例が出てきた。該当する教育委員会は既に特定事業者の指定を受けており、11月末までに「定期報告書」と「中長期計画書」を提出しなくてはならない。

対象には30校程度の市町村教委も

  4月に施行された改正省エネ法では、従前は個々の工場・事業所単位で規制されていたものが、事業者単位(企業単位)で1年間のエネルギー使用量が原油換算値で1、500キロリットル以上であると特定事業者の指定を受けるようになった。
公立学校などを所管する教育委員会も対象となり、おおよそ30校程度の学校がある教育委員会から特定事業者に該当するという。既に該当する教育委員会は各学校やその他の教育機関の用に供する施設のエネルギー使用量を把握・合算して、7月に「エネルギー使用状況届出書」を提出済みのはずだ。 

11月末には報告書提出

【資料1対象となるエネルギー】
燃料
・原油及び揮発油(ガソリン)、重油、その他石油製品(ナフサ、灯油、軽油、石油アスファルト、石油コークス、石油ガス)
・可燃性天然ガス
・石炭及びコークス、その他石炭製品(コールタール、コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス)であって、燃焼その他の用途(燃料電池による発電)に供するもの 

・上記に示す燃料を熱源とする熱(蒸気、温水、冷水等)
 対象とならないもの:太陽熱及び地熱等、上記の燃料を熱源としない熱であることが特定できる場合の熱 
電気
・上記に示す燃料を起源とする電気
 対象とならないもの:太陽光発電、風力発電、廃棄物発電等、上記燃料を起源としない電気であることが特定できる場合の電気 
文科省「学校施設における省エネルギー
対策について」より抜粋       

  教育委員会では現在、エネルギー管理統括者を選任し、11月末までに「定期報告書」と「中長期計画書」(来年以降は7月末日まで)に提出しなければならない。これらは経済産業局と文部科学省にそれぞれ提出することになる。
省エネ法において対象となるエネルギーとは燃料、熱、電気で、廃棄物からの回収エネルギーや風力、太陽光などの非化石エネルギーは対象とならない(資料1)。また同法では毎年1%のエネルギー削減努力を求めており、計画書では削減実現への道筋作りが求められる。学校の使用するエネルギーの大半は電気と暖房用の灯油が占めており、これらについて対策が必要だ。

ポイントは電気の使用量削減

  学校におけるエネルギーの合理化のポイントは、電気の使用量の削減だ。その中でも照明については、「利用法、ランプ、器具」の見直しが効果的といわれている。(資料2‐1)特に学校の体育館では消費電力の大きい照明器具が使われ、普通教室の20倍の電力を消費している。断続的使用は消費電力を大きくするので、カリキュラムを調整して連続して使用できるよう工夫する必要がある。
冷暖房については、温度設定や使用法を見直すことが求められる(資料2‐2)。
省エネ法で対象とならない太陽光発電や風力発電を利用した電力を導入するのも有効だ。

 

【資料2‐1●照明についての見直し】
利用法
快晴の日には窓際の照明を消灯する。必要な箇所だけを必要なときだけ点灯し、こまめに消灯する。昼休みは教育上の支障がない範囲で一斉消灯するなど、
ランプ
蛍光灯などのランプも1年に1回は掃除して汚れを落とすことや、交換時期がきたものは定期的に交換。 
器具
照明を自動調光するシステムや、インバーター蛍光灯、LED照明などを導入する。 

【資料2‐2●冷暖房についての見直し】
設定温度は、冷房は28℃、暖房は20℃を目途に。冷房は、特別教室に入っていることが多いので、特別教室の使用を連続し、集中して使うようにする。
冷暖房した部屋の換気には、全熱交換形の換気扇を使用する。
ブラインドやフィルムなどを活用し、光・日照を確保しつつ直射日光を防ぐ。
グリーンカーテンや屋上緑化を活用し、コンクリート表面温度の上昇を抑える。 
文科省「学校施設における省エネルギー
対策について」を参考に編集部が作成       

学校での削減効果

  文部科学省が20年3月に作成した児童生徒向け資料「学校施設における省エネルギー対策について」によると、全国の学校で教室の蛍光灯の点灯時間を1日1時間短縮すると1年間で、原油換算すると約1万6000キロリットル。ドラム缶にすると約8万本のエネルギーが節約できる。またエネルギーの消費量の多い体育館の照明の点灯時間を全国の学校で1日1時間短縮すると、1年間で原油換算 約3万6000キロリットル、ドラム缶約18万本の節約にもなる。 

継続的取組が必要

  省エネ法では事業所が継続的に取り組みを行うことが求められている。定期報告書や中長期計画書の提出が毎年求められるのも、報告書や計画書を単に提出するだけではなく、継続的に中身を見直すためだ。
経済産業省資源エネルギー庁の担当者は「事業者としてできることから始めること、組織的な取り組みとして位置づけることが重要。省エネ対策と言っても新しい省エネ設備の導入だけではなく、毎日の設備管理など様々な方策がある。PDCAのサイクルによって、エネルギーの使用の合理化につなげてもらいたい」と、事業者全体での継続的な取り組みを求めている。そして「この省エネ法の趣旨は、学校で従来から取り組んできた環境教育と上手くつながる面もあるのではないか」と、期待する。 

10月19日 教委向け省エネ法セミナー開催

  教育家庭新聞社では、省エネ法解説セミナーを10月19日に開催する。資源エネルギー庁省エネルギー課と文部科学省施設課の担当者から、改正点と11月末に提出期限が迫った「定期報告書」「中長期計画書」の作成について、そのポイントを解説していただく。また、中長期計画書の作成に役立つ省エネ設備について、メーカー担当者が説明をする。教育委員会だけを対象としたセミナーは、文科省もエネルギー庁も開催予定はないとのこと。申し込みは教育家庭新聞社HPから。問い合わせTel03・3864・8241。


 

省エネにも貢献する地球にやさしス厨房

「涼厨(R)」東京ガス

  「ガス厨房は暑い」という先入観をもたれている方も多いが、その考え方を180度変えるのが東京ガスの涼しい厨房機器シリーズ「涼厨」だ。
 従来のガス厨房では機器表面の熱と燃焼排気などにより室内の温度が上昇し、それらを空調により涼しくしていた。しかし「涼厨」なら燃焼排気が室内に拡散せず、機器表面からの熱も低減されるため、室内の温度上昇を効果的に抑える事が出来る。

「涼厨(R)」で快適空間

  例えばローレンジによる従来の厨房と「涼厨」の室温変化を調べてみると従来の厨房が30度以上になる場合もあるのに対し、「涼厨」では常に25度以下をキープでき、快適な環境が実現できている。〈図1〉

空調負荷を約30%削減

  従来の厨房と「涼厨」を比較検証すると「涼厨」なら空調負荷を約30%削減できるとする試算もある。(比較検討条件は学校給食厨房)※空気調和・衛生工学会学術講演論文集09・9より※

ガス厨房は低コスト

  これからは食材を選ぶように、エネルギーもしっかり選ぶことが重要になってくる。ガスと電気どちらかに絞るというのではなく、それぞれの特性を理解して選択できれば、快適で経済的な厨房を実現できるのだ。例えば、学校給食(500食/1日)のランニングコストを比較すると、〈図2〉のグラフのようにガス式の方がメリットが出る試算となる。厨房に合わせて使いやすい機器を選ぶだけでなく、運営やコスト、環境も考慮して最適な熱源を選ぶことが大切だ。

 


 

ITを活用したエネルギー管理サービス
「ecoFORTE」「ecoFORTE‐CRE」

伊藤忠商事・シスコ システムズ

自動制御でエネルギーも管理も省エネできる

 CO2排出量削減に対する意識の高まりや改正省エネ法の施行によって、エネルギー使用量の行政への報告・省エネ計画の立案が義務付けられることになった。しかし、規模が小さいビル(学校舎等)ではエネルギー制御や最適化のノウハウを持つことは難しい。そこをITの力で解決するソリューションが、ITを活用したエネルギー管理サービス「ecoFORTE」(エコフォルテ)及び「ecoFORTE‐CRE」だ。
「ecoFORTE」は、伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠商事)の展開する、行政への届出書類の作成や空調・照明等建物設備のエネルギー測定・表示・制御といったエネルギーマネージメントを可能とするクラウド型省エネ支援サービス。
「ecoFORTE‐CRE」は、シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)のネットワーク機器であるルータに「ecoFORTE」に対応したアプリケーションを搭載することで、校舎・教室や中小規模の建物内で利用されている設備のエネルギーを一括管理できるようにしたソリューションである。このシステムを導入する事で、データ収集や報告業務などの管理コストも大幅に低減でき、またエネルギー使用量低減によるコスト削減やCO2排出量削減を図ることができる。
さらにPC、IP電話、無線通信機器、デジタル複合機などの電力測定と電力管理を自動制御するシスコの「EnergyWise(エナジーワイズ)」技術を「ecoFORTE‐CRE」に連携させることで、建物設備からIT機器まで一括で電力使用量削減を実現する。

▼問合せ 伊藤忠商事 Tel=03・3497・7293 シスコTel03・6434・6500 E‐Mail=press‐jp@cisco.

 

【2010年10月9日号】


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