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フューチャースクール

 総務省は、タブレットPC(以下、TPC)、インタラクティブ・ホワイト・ボード(以下、IWB)、無線LAN、学習用コンテンツなどを活用し、児童・生徒が互いに学び合う「協働教育」の実証「フューチャースクール推進事業」を全国10の小学校で展開している。1月から2月にはこれら10校の授業が公開された。児童用TPCで活用できる使い勝手の良いコンテンツの必要性、東西で異なるLAN方式から派生するメリットとデメリット、ICT支援員の重要性など、成果と共に課題も明らかになっている。これらの成果は協働教育普及に向けたガイドライン(手引書)にまとめられる。


保護者から好評 入学希望者増も

  第4回「ICTを利活用した協働教育推進のための研究会」が1月23日実施され、各校を視察した構成員らがフューチャースクールの成果と課題について報告した。

  最も多かったのは、ICT支援員による授業支援や研修、教材作成支援が学校に安心感を与え、スムーズな授業展開につながっており、好影響を与えているというもの。各校は協働的な学習を試行錯誤している段階であり、それに資するシステムをもっと洗練させる必要があるという点、50インチのIWBは小ささを感じるなどが意見として挙げられた。今後は協働学習モデルをもっと追究すべきであるという意見も多い。地域の保護者からの注目が集まり、越境入学希望者が次年度大幅に増加した学校も見られた。

特別支援児童が落ち着き始めた

  構成員の主な意見は以下。敬称略。
▼ICT支援員の存在が教員の安心感につながっている。初期段階では、各校1名常駐が望ましい。教師用デジタル教科書は有効。(曽根節子)
▼寒河江市立高松小学校では、本事業実施により、特別支援児童が落ち着いてきたと報告があった。(清水康敬一)
▼低学年でPCスキルの習得に時間がかかった。協働作業における授業を円滑に行うためには配信システムを洗練させる必要がある。(野中陽一)

全国展開に向け貴重な一歩

  総務省森田政務官は会議の席で、「フューチャースクール事業は、全国展開のための貴重な一歩」と述べた。総務省は来年度、文部科学省による「学びのイノベーション事業」と連携してフューチャースクール推進事業に継続して取り組む。現行の10校に加え、中学校8校、特別支援学校2校を新たに追加する。文科省では児童用デジタル教科書を国語、算数、英語で作成、4月からフューチャースクール各校で使用を開始する予定だ。


■FS東日本地区

  東日本地区では、協働的な学習を盛り込むことをポイントに、広くICTを活用した授業を展開した。教師用PCから児童用TPCに教材や問題を配布する、児童TPC上の画面をIWBで一覧する、IWBに児童TPCの画面を転送する機能などが多く活用された。

  授業の流れとしては、一人ひとりの考えを書き込み、皆の考えを一覧し共有して考えを深めたり、個人の考えや作品をIWBに転送して発表したり、という形態が多い。考えをIWBに転送することにより、発表活動にもスムーズに移行しやすいなどのメリットが見られた。

  教師にとっては、普段発言の少ない児童も含め、一人ひとりの考えを広く把握することができる点がメリットといえそうだ。

モデル校=石狩市立紅南小学校(北海道)・寒河江市立高松小学校(山形県)・[飾区立本田小学校(東京都)・長野市立塩崎小学校(長野県)・河北郡内I町立大根布小学校(石川県)

■FS西日本地区

  西日本地区も東日本地区と同様、IWBと児童用TPCの連動を中心に、「学び合う」場面を意識した活動が展開されている。「自分の考えをTPCに書く・まとめる」「IWBに転送して発表、意見交換」という基本スタイルは変わらず、一人ひとりの考えをまとめる、発表するシーンが必然的に多くなっており、集中力を高めるなど良い影響を与えている場合が多い。これらの活動は各教科で展開されている。東日本地区と異なる点は、LAN方式、使用している協働教育アプリケーション、児童用デジタル教科書の試行的な活用など。それらの違いにより、授業スタイルが変わってくる面も多くみられた。

モデル校=大府市立東山小学校(愛知県)・箕面市立萱野小学校(大阪府)・広島市立藤の木小学校(広島県)・東みよし町立足代小学校(徳島県)・佐賀市立西与賀小学校(佐賀県)

 

【2011年3月5日号】


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