教育家庭新聞・教育マルチメディア新聞
TOP教育マルチメディア>記事
バックナンバー
最新IT教育―実践、成果を報告―

教育マルチメディア

【ICT活用】特別支援学級で活用効果明らかに―甲斐市立双葉東小学校

集中力が2倍以上に

 甲斐市立双葉東小学校(金子初男校長・山梨県)では平成21年度、文部科学省「電子黒板を活用した教育に関する調査研究事業」指定校に委託され、電子黒板(50インチ)と実物投影機などを全教室に配備した。さらに平成22年度からは、甲斐市教育委員会から「ICTを活用したわかりやすい授業推進校」に指定、学校ぐるみで「心を育てる授業づくり」のためにICTをどう活用すべきかについて取り組んでいる。デジタル教科書については現在国語、算数を全学年に配備。来年度は理科や社会のデジタル教科書導入を視野に入れ、検証中だ。10月26日、特別支援学級「たんぽぽ」(6年2名・知的障害)の算数の授業を取材した。授業者は小森文香教諭。

デジタル教科書 全学年分を横断的に活用
画像
デジタル教科書で問題を提示、
ホワイトボード上にはその日の
重要事項をまとめ、紙教材で練習する
画像
「繰り上がり」を繰り返し説明できる
画像
児童は電子黒板上での作業が大好き

  この日の授業は「繰り上がり」について理解を深める学習だ。小森教諭は電子黒板に算数のデジタル教科書(東京書籍)を提示した。

  「校しゃのまどの数は、1024枚ありますよ」
児童は電子黒板を使って、1つひとつ数えながら一の位に1を4個、十の位に10を2個、千の位に1000を1個置いていく。

  授業の中で繰り返し振り返りたい事柄は、ホワイトボード上にまとめる。小森教諭はホワイトボードに「1は10個集まったら十の位に変身」、「10が10個集まったら百の位に変身」することについて児童の目をしっかり見ながらシミュレーションで示して説明する。

  数の仕組みを理解した後は、問題だ。デジタル教科書から電子黒板に問題を提示する。

  問題文には、「一の位に1が6個、十の位はゼロ、百の位には100が12個、千の位は1000が2個」が並んでいる。「困ったね、この数字はいったいいくつかな?変身したら隣の部屋に移るから、1000が1個増えるね」と、電子黒板上で示しながら説明すると「わかった、3206だ」と児童もうれしそうだ。

  さらに同様の問題を提示。小森教諭が「十の位に10が14個あるね。変身する?」と聞くと、児童は「変身する!」とすかさず応じ、今度は児童だけでスムーズに解答を導き出すことができた。

  繰り上がりついて、まずデジタル教科書で導入、ある程度理解してから紙教材やホワイトボードでゆっくり考え、さらにデジタル教科書で問題文にチャレンジしていく流れを繰り返し、児童に飽きさせないよう展開した。

  小森教諭は「デジタル教科書を使ったときの児童の集中力はものすごい。通常の教材の場合、連続した集中力は15分程度ですが、デジタル教科書を使うと30分は持続します。紙で作業するよりも『わかった!』という達成感を得やすいため、持続力が長くなるようです」と話す。

  デジタル教科書を使って導入で意欲や集中力を高めてから学習に取り組んでいる。児童は電子黒板に触れることが大好きだ。この日の授業のように、理解を促すための作業場面でも使う。

  特別支援学級の児童の特徴は進度が様々な点だ。だが、同校にはデジタル教科書が全学年分あるため、必要な教材を他学年からピックアップして取り組むことができる。この日の授業でも、導入は3年のデジタル教科書、問題は2年のデジタル教科書を使っていた。

成功ポイントは 最初の研修内容

  同校に電子黒板の全教室整備が決まった当初は「困った機器ス?が学校にやってきた」という反応であったが、現在では全教員が積極的に取り組んでいるという。金子初男校長と同校の研究主任である久保田勲教諭に、成功のポイントを聞いた。

  「最初の研修が重要。機器の説明から始めるのではなく、まずデジタル教科書や実物投影機の活用から始めることで、授業イメージを持ちやすくした。どんなに簡単であっても、自主教材作りの研修から始めると、ハードルが高くなりやすい」

  初年度、電子黒板は、デジタル教科書の活用とあわせ、「拡大・縮小、動かすなど視覚情報を用いることで理解が深まる活用」など文部科学省の示す「8つの活用シーン」を日々の授業に活かす方法の検討からスタート。研究を進めるにつれ、特別支援学級での導入効果が顕著であることもわかったという。

  導入から2年を経、同校のICT環境はさらにバージョンアップした。整備直後は校務用PCを電子黒板にも使っていたが、PC教室更新のタイミングで電子黒板に教育用PCをセット。普通教室でもスイッチひとつで電子黒板を使えるようになり、活用頻度は一層上がった。特にデジタル教科書が整備されている国語や算数では日常的になっている。

  活用パターンにも変化がみられている。当初、ICT機器は、児童に説明を周知するための教師活用が主であったが、現在は、児童の思考力・判断力・表現力を育成するツールとしての活用を主に研究が進んでいる。

  同校がこれまでに取り組んできた研究は、道徳や食育、キャリア教育と多岐に渡る。「研究指定期間が終わっても、それについての取り組みは終わりではない。心の教育などこれまでの積み重ねがICT活用をスムーズにし、心の教育もICT活用によりさらに推進・強化されていく」と話す。

  今後は、市・県内及び全国に向けたICT活用の普及促進と校内研修等による安定したICT活用の体制作りに取り組んでいく。1月27日には、「ICT活用」と「食育」をテーマとした研究公開授業を開催予定だ。

【2011年11月7日号】


記事のご感想をお寄せください

新聞購読お申し込みはこちら