平成24年度全国学力・学習状況調査 9割の職員がICTを活用―文科省

言語活動一層充実を

 文部科学省では、平成24年4月17日に実施した平成24年度全国学力・学習状況調査の抽出調査の結果について8月8日に公表した。全般的に、言語活動の充実の強化が一層求められていることがわかった。今回初めて実施された理科について、理科好きは増えているが、実生活での活用や科学的な知識理解を使って説明することなどについて課題が見られる。また、小学校では9割の教員がICTを活用して授業していることがわかった。

 

 理科では、観察・実験の結果を整理・分析したうえで考察すること、科学的な言葉や概念を使用して考えたり説明したりすること、実生活で理科の知識を活用することに課題が見られることがわかった。

  小学校理科では、天気の様子と気温の変化の関係を、データを基に分析してその理由を記述する設問の正答率が17・1%と低い。

  中学校理科では、豆電球と発光ダイオードを用いた電流回路をつくる実験の方法を検討・科学的な根拠を基に実験方法を改善、説明する正答率が7・8%と大変低い。カエルの成長に応じて飼育環境を整えた理由の説明も正答率38・5%と低かった。

  国語、算数・数学ではいずれも「B問題」に課題が見られた。

  小学校国語では、グラフや表の読み取った記述問題の正答率が52・9%と低い。中学校国語では、対談を読んでその内容を把握し自分の考えを具体的に書く問題の正答率が20・6%と大変低かった。

  小学校算数では、2つのお金の支払い方を解釈・理解し、一方のおつりの硬貨の枚数がより少なくなる理由を記述する問題の正答率が42・8%と低い。

  中学校数学では、2人のスキージャンプ選手の記録を比較、より遠くへ飛びそうな選手を選び、その理由を数学的な表現を用いて説明する問題の正答率が低い。

国語・算数より 理科好きが多い

  生活環境が学習環境等に関する調査結果では、理科の勉強が好きな小学生・中学生の割合は国語、算数・数学に比べて高いが、「理科の勉強は大切」「理科の授業で学習したことは将来社会で役立つ」と回答した小中学生の割合は国語、算数・数学に比べて低い。

  また、理科の授業内容が良く分かると回答した小学生と中学生の割合の差は、国語、算数・数学と比べて大きいことがわかった。小学校では「国語」よりも「よくわかる」と回答している数が多いにもかかわらず、中学校になると3教科中最も「よくわからない」教科になってしまっている点は今後是正したいところだ。特に中学生において、理科の授業や観察・実験に関心を強く持つ生徒ほど平均正答率が高い傾向にある。

  前年度、「自ら考えた仮説をもとに観察・実験の計画をたてる」「観察や実験の結果を整理して考察する」「その記述方法」を指導した学校のほうが、平均正答率が高い傾向が見られることから、前述の課題の解決の糸口が示唆されているといえる。

  また、自然の中での集団宿泊活動を長い日数行った小学校のほうが、国語B、算数Bの平均正答率が高いなどの傾向も見られた。

  本調査結果には各項目について指導改善のポイントが記載されている。その多くが、各教科における「言語活動の充実」に関わるものとなっており、「暗記すれば点数が取れる」時代は既に終了していることがわかる。

  なお国語科においては、聞き手に理解しやすいよう資料を用いて話すこと、話の展開に注意して聞くこと、伝えたい事項を明確にして書くこと、間の取り方に注意して話すこと、話し言葉と書き言葉の違いを理解することなどは相当数の児童生徒ができており、この力を各教科においても伸ばしていくことが今後の課題といえる。

理科授業のネット活用小学校で8割

  小学校の約90%、中学校の約84%の教員が、PC等を使って資料を拡大提示をしたり、デジタル教材を使って授業をしている。教員のICT活用が進んできていることが分かる。

  小学校の約80%(国語47%、算数35%)、中学校の約51%(国語18%、数学23%)が、授業にインターネットを活用しており、調べ学習等でのインターネット活用が浸透していることがわかる。

  しかし児童生徒が発表や自分の考えを整理する際、PC等を使っている小学校は約58%、中学校は約37%と今後の課題と言えそうだ。

  平均正答率が全国平均を5ポイント以上上回る学校は、理科の指導にインターネットを活用したと回答している割合及びまとめ学習にPCを活用していると回答している割合が高い。ICTの活用が授業に工夫を凝らす結果につながり、学力向上に寄与していると考えられる。▼詳細=http://www.nier.go.jp/12chousakekkahoukoku/

 

【2012年9月3日】

関連記事

【文部科学省】学力向上等の方策に関する調査研究成果報告会(120402)

秋田県 学力日本一の秘密を探る(110905)