財団助成校が“拠点校”に―西宮市立北六甲台小学校

 公財・パナソニック教育財団(遠山敦子理事長)では、初等中等教育におけるICT活用を支援する実践研究助成を継続して行っている。デジタル教科書活用を中心としたICT活用に取り組む西宮市立北六甲台小学校(兵庫県・渡瀬尚子校長)は、第37回実践研究助成・特別研究指定校だ。2年間の研究終了後、市内北地区5小学校において同校の研究成果を普及・深化する取り組みに着手。第39回の研究助成(一般)を受け、現在、地域の拠点校としての役割を果たしている。同校の飯村耕司教頭と情報教育担当CIO補佐・南山拓也教諭に、取り組みのきっかけと進捗を聞いた。

「デジタル教科書」テーマに特別研究

財団助成校
デジタル教科書をテーマに ワークショップを実施。活用のポイントはデジタルとアナログの使い分け

 同校が2年間の特別研究指定校に指定されたのは平成23年度。研究課題は「学びを深める子どもの育成〜きき合いが生まれる学習展開の工夫〜デジタル教科書の活用で基礎学力の定着を図る〜」。

  「当時、デジタル教科書に興味を持っているものの、使ったことがない教員が多かった。そこで、まずは皆で使ってその効果を検証してみよう、と考えた」ことが応募のきっかけだ。助成金などで、デジタル教科書・教材は国語・算数・書写全学年、社会・理科3〜6年、フラッシュコンテンツなどを購入。既に導入済のデジタルTVや書画カメラを活用しながら校内・全市含めて年3回の公開授業を中心に活用方法を検証、交流した。

一番の成果は 重要性の共有

  2年間の研究成果について南山教諭は、「一番の成果は、授業でデジタル教科書・教材を効果的に使うためには教員の授業力が必要であることを皆が実感できたこと。効果的な活用のポイントはデジタルとアナログの使い分けにあり、そのためには教員の授業力を高める必要がある、という共通理解のもとで、授業改善の取り組みを継続していくことができた」と話す。
2年間の研究成果として、181の授業事例がCD‐Rにまとめられた。

北地区5小連携で 研究成果を広める

財団助成校
情報教育担当・ClO補佐
南山拓也教諭

  この成果を1校だけにとどめておくのはもったいない。そこで、より良い活用を普及していく目的で、北地区の小学校5校で連携、「デジタル教科書」などを中心とした授業改善や教員研修体制をテーマとして、第39回の研究助成(一般)を受けている。西宮市教育委員会では昨年度から今年度にかけ、指導者用デジタル教科書・全小中学校配備を進めており、その普及に貢献できる取り組みとして教育委員会からも後押しされたという。

  北地区5小学校の連携は、同校・渡瀬尚子校長が地区校長会議で提案。5小学校とも研究校としてそれぞれの研究テーマに取り組んでいたが、それを「デジタル教科書・教材などのICT活用を共通テーマとする」ことで合意した。

  現在5校では月に1回、研究担当と情報担当が集まり、打ち合わせや計画を立案。「実際に活用している授業を見たい」という声から、夏休みの合同研修では、授業作りのワークショップ研修を実施。授業を行った後、指導案を基に活用効果も検討した。参加した教員からは「活用イメージがわいた」「2学期からすぐに使えそう」「教科書とデジタル教科書の使い分けのポイントをイメージできた」と好評だったという。

  「デジタル教科書を初めて目にした教員は、それだけで緊張してしまう。実際の授業を見ることで、どの部分にどんな風に使うと効果的なのかを実感でき、これならば自分もできる、こんなこともできるかもしれない、と授業づくりの楽しさを改めて実感できたようだ」と話す。

合同授業公開研究会 全学年で2月に実施

  2014年2月21日には、合同授業公開研究会が予定されている。会場は北六甲台小学校で、各校の授業者が同校の児童を対象に、特別支援学級及び全学年で公開授業を実施予定だ。さらに今年度末には本共同研究の成果をまとめ、市内全域に広める考えだ。

多くの学校に知って もらいたい取り組み―パナソニック教育財団

  特別研究助成校の成果を地域に広める「拠点校」として、継続して一般助成を受けるという取り組みは、北六甲台小学校が初めて。着眼点が斬新で、多くの学校に知ってもらいたい取り組み。

  助成先の学校がそれぞれ拠点校となって、研究成果が地域に広がっていくことを期待しています。

平成26年度(第40回)実践研究助成 登録開始

  11月1日から事前登録を開始。申請は12月1日から。一般(1年)は助成金50万円。特別研究指定校(2年)は助成金150万円と大学の研究者による訪問アドバイス6回。詳細はパナソニック教育財団Webに掲載。

【2013年11月4日】

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