【大阪市学校教育ICT活用事業】1年間を振り返り3つの変化に注目する―園田学園女子大学 堀田 博史教授

  大阪市が2013年度より取り組んでいる「学校教育ICT活用事業」では、小・中学校の7つをモデル校に、普通教室にタブレット端末などを整備して、活用テーマを設定、検証が進んでいる。

園田学園女子大学 堀田 博史教授  1年間の取り組みを振り返り、ここでは(1)タブレット端末も活用する授業デザイン、(2)シンプルなICT活用の日常化、(3)児童からタブレット端末の活用提案、という3つの変化に注目する。

(1) タブレット端末も活用する授業デザイン

  4月より、私が担当している本田小学校では、タブレット端末の1人1台環境の課題抽出をテーマに検証が進められた。タブレット端末を活用する授業を考えることになり、フューチャースクール推進事業などをはじめ先行事例から学び、試行錯誤して、タブレット端末の有効活用を考えはじめた。当初は、カメラやビデオ録画・再生機能を使用して、町探検やインタビューでの活用が主であった。タブレット端末に数種類のオリジナル資料映像を保存した活用もあった。授業支援システムを活用して、児童のタブレット端末に書き込まれた考えを電子黒板に投影、短時間のクリップ映像や写真を児童のタブレット端末に配信したり、授業における双方向のやり取りの強化も試行された。様々な活用例を考えることで、タブレット端末も活用する授業を考えるようになった。4月から7月の間に、この試行錯誤の過程を経験することで、1人1台環境のタブレット端末も活用した授業デザインが磨かれたのである。

(2)シンプルなICT活用の日常化

  教員にタブレット端末も活用する授業がイメージできはじめると、普通教室だけではなく、音楽室や体育館、校外活動に活用場所が広がり、新任からベテランへ、ベテランから新任への授業を考える相互の繋がりが強化されてきた。そこには、本事業で配置された授業づくり指導員の役割が大きかった。若い世代の教員は、授業づくりに多少の不安もあり、さらにタブレット端末を活用しないといけないとなると、どうしても授業展開がテクノロジー過多になる場合もある。いつでも気軽に相談できる授業づくりの専門家がいることで、授業のねらいを達成するために、タブレット端末も活用する、有効な場面を考えることができた。その結果、実物投影機と電子黒板機能付きのプロジェクターの活用というシンプルなICT活用が日常化していった。様々な教科、単元の授業をデザインする過程で、1人1台タブレット端末が有効活用できる場面は限られる。それらを試行錯誤する中で、シンプルなICT活用の有効性に気付き日常化できたのである。

(3)児童からタブレット端末の活用提案

  教員のICT活用が日常化すると、児童も自らがICTを活用するイメージができはじめる。教科書や資料集と同じように、タブレット端末がいつでも使用できる状態にあれば、必要な情報をWebサイトで検索して収集したり、友達の意見を共有したりと、多様な活用が可能となる。小学校低学年の児童でも、プレゼンテーション・アプリを使用して、自らが撮影した写真を組み合わせ説明することやWi-Fiで離れたプリンターに印刷することもできる。教員が日常的にICT活用することで、児童にも情報活用のイメージが生まれ、新たな授業場面でのタブレット端末等の活用が児童から提案されたりするのである。

  1年間の取り組みを振り返り、教員がこれら3つの変化を経験することで、授業の質向上に繋がっていくと考える。

【2014年3月3日】

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