【第9回】ICTキャンパス 中京大学

翻訳支援ソフト活用で実務翻訳者を育成する

「TRADOS」の授業 日本で初の開講
ICTキャンパス 中京大学
今年7月に開催されたシンポジウムの様子
ICTキャンパス 中京大学
「TRADOS」を使った授業(イメージ)

中京大学(名古屋市)国際英語学部国際英語キャリア専攻が今年4月、新たに開設された。同専攻では、高度な英語運用力に学問的裏付けを与え、さらに実践的授業や海外経験による自信を学生に付けさせて「言葉のプロフェッショナル」の育成を目指す。

こうした目的を達成させるため、同専攻では翻訳支援ソフト「TRADOSSTUDIO」(以下、TRADOS)を使った授業を、2015年度に日本で初めて開講する。TRADOSとは、英国に本社を構えるSDL社製のプロ仕様の翻訳支援ソフトで、翻訳実務業界では圧倒的なシェアを誇る。

翻訳業界の必須条件

「翻訳といえば『文芸翻訳』を思い浮かべる人が多いと思いますが、市場規模から言うと、製品マニュアル、ホームページコンテンツ、特許申請書などビジネス現場での翻訳である『実務翻訳』のほうが大きいわけです。しかも実務翻訳の世界では、翻訳支援ソフトTRADOSの使用を条件とする翻訳案件が飛躍的に増えており、このソフトを使いこなせることが実務翻訳者の必須条件になりつつあります」(同専攻中川直志准教授)

海外の大学では、TRADOSの使用法を学ぶ授業や、それを活用し、どのように翻訳するのかといった実践的な授業が数多く開講されている。中川准教授は「翻訳」を掲げる専攻として、TRADOSなしの授業は考えられなかったという。

授業は、SDL社公認トレーナーの資格を有する実務翻訳者がTRADOSの使用方法を教える「翻訳とIT」と、翻訳の実務を教授する「ビジネス翻訳実務」の2科目を開講する。

「翻訳とIT」の授業では、単にソフトの使用方法を教えるだけでなく、TRADOSを使った翻訳を通して技術的な応用力も鍛える。講義を終了した学生には、SDL社による試験を経て、認定証が授与される。
7月5日には、国際英語キャリア専攻の開設を記念して、名古屋キャンパスにおいて、真の国際人を育成する教育のあり方などをテーマに、実務翻訳者らを招いたシンポジウムが開催された。

ソフトへの習熟通じて

輩出人材を差別化 「高校の関係者らに、TRADOSの翻訳業界における圧倒的な地位について理解してもらうことも目的の一つでした。参加された方々は、TRADOSや当専攻の内容について、強い関心を持ってくれたようです」(中川准教授)

現在、授業開始に向け、SDL社と緊密に連携を取りながら、準備を進めている。中川准教授はTRADOSを活用した授業および同専攻の今後の展開について「言うまでもなく、当専攻はTRADOSだけを学ぶのではありません。『言葉のプロフェッショナル』をキーワードに英語教育者や、国際ビジネスパーソン、さらには研究者の育成までをも視野に入れています。TRADOSの技術を、翻訳を志す学生だけのものにするのではなく、トータルな英語力の一部として位置付け、当専攻が輩出する人材の差別化を図っていきたいと考えています」と語る。

【2014年9月1日】

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