【教員研修】アクティブ・ラーニングを授業改善に取り入れるには<墨田区教育委員会>

新たな教育課題に対応するため、アクティブ・ラーニングの充実や情報の収集・活用能力に関する指導力向上のための教員研修が求められている。授業改善として、21世紀型スキルの育成やアクティブ・ラーニングをどう取り込めば良いのか‐墨田区教育委員会では、これらのニーズに対応できる教員研修として今年度、「Intel(R) Teach Programマスターティーチャー(MT)養成研修」を7月23・24日に開催した。講師はインテル。本講座終了後、受講者はIntel(R) Teach Programの研修会講師として認定される。

”5つの視点”を盛り込んで”思考支援”の指導案を作成

MT養成研修
各自「5つの視点」を盛り込んだ学習指導案を
タブレット端末を使って発表し合う

本研修は墨田区内全35校(小学校25校・中学校10校)から各1名が参加する悉皆研修で行われた。当日は、各校のICT担当を中心に広島の私学からの特別参加もあった。

本研修実施に先立ち、区では小・中学校の管理職を対象に6月、本研修開催の意図と目的を伝えるために「管理職研修」を実施しており、その目的に適う役割の教員の派遣を各校の管理職に要請している。

「Intel(R) Teach Programマスターティーチャー(MT)養成研修」は、オンライン研修「Intel(R) Teach Elementsプロジェクト型アプローチ」(以下、PBA)を活用したMTを養成するワークショップ形式の研修だ。

PBAは、21世紀型スキル育成を目的としたプロジェクト型学習の指導手法の理解を深め、探究型学習の実践に向けた研修として開発されたもの。学習者中心の学びを支援する授業設計や評価、授業運営を身につけるためプログラムだ。

■問題発見能力が求められている

講師はまず、21世紀型スキルについて解説・整理した。

21世紀型スキルとは、今日の時代に求められている能力群を定義したもの。

特に今、産業界に求められているものが「コミュニケーション能力」で、産業界からは年を追うごとに一層強く求められている。この「コミュニケーション能力」が持つ意味は、10年前と大きく異なっており、「海外や異業種など相手側の考えや状況を理解し、相手が理解しやすいストーリーを作って共感を得つつ、協働で物事を進行していく、円滑なコミュニケーションを補うためにICTを活用する」能力を指す。

また、問題解決能力が求められていると言われているが、それ以上に求められているのは、「問題発見能力」。問題が起こってから解決するのではなく、問題が起こる前に課題を顕在化し、ひとつずつ解決していく先にある、イノベーションを起こす力が求められている。

これらの力を育むため、平成32年度から開始する次期学習指導要領において、全ての学校種でアクティブ・ラーニングが求められている。

アクティブ・ラーニングに必要なことは、指示ではなく理解を促す思考支援であり、その出発点は21世紀型スキル育成の観点であると語った。

■5つの視点から学習指導案を作成

最初のグループワークは、「医療サービス」「製造業」「オフィス」それぞれで起こった課題とそれを解決していくストーリーを各班が一話ずつ読み込み、そこで必要とされていた「21世紀型スキル」をピックアップするもの。その重要性をグループで話し合いながら順位をつけ、全体で共有した。これにより、21世紀を生きる子供が身につけるべきスキルの意識化・共有化を図る。

その後、オンライン研修とワークシートを活用してグループワークを交えながら「5つの視点」‐‐「プロジェクト型学習の特徴とメリット」「設計手順」「評価」「授業運営」「多様な指導手法」を、2日間にわたり順を追って学び、研修の総まとめとして「5つの視点」を盛り込んだ学習指導案を各自が作成した。

学習指導案は総合、理科、社会、図工など様々だ。その中から全体に発表したい学習指導案を班で1つ決めた。

発表の際には「なぜその学習指導案を推すのか」について推薦の言葉を述べる。「通級指導学級での21世紀型スキル育成に挑戦している点を全体で共有したい」、「興味深い課題設定。学習指導案を聞いて子供が生き生きと話し合う姿が見えた」、「学校全体や地域をうまく巻き込んだ活動」、「新しく配備されたタブレット端末なども活用した挑戦」など、推薦の言葉が上手いのはさすがに現役教員という印象だ。より興味関心を持って聞くことができる。

■思考を支援する学習指導案を共有

MT認定書
研修終了後、MT認定書が受講者に
授与された

小学校3年「防災教育」の学習指導案では、「海抜ゼロメートル地帯」である墨田区の環境から、何が起きるのか、どう対処すれば良いのかを考えて専門家にアドバイスをもらいつつ墨田区への提案内容を考えるという内容だ。育成したい21世紀型スキルとして、主体性や情報収集力・判断力、社会との連携など。

図画工作の学習指導案では、区で3年に一回行われる展覧会において、学校中をどのような展示空間にすれば喜ばれるのか、そのアイデアの実現方法について考えるもの。本授業を発表した教員は「21世紀型スキルとは新しく学ぶべき特別なスキルではなく、これまでの授業を再構築する視点が必要なもの」とコメントした。

本年夏にタブレット端末が全教員に1台ずつ配備される予定の二葉小学校の教員の学習指導案は、社会科を中心に教科の枠を超えた内容だ。社会「買い物調べ」で、算数で学んだ「表」「グラフ」を「活用」。締切時間を設定し、うまく進んだグループはその理由を紹介する、調べて「わかったこと」から優先順位をつけて2つだけ発表するなどの制限を設けるなど、自分たちで進行を管理、重要性などの優先順位を考える活動を取り入れた。
教科書での情報提供量が少なく「正解のない課題」として「無脊椎動物の分類」を課題に設定したのは、中学校理科の教員。分類基準を考え、それについて妥当かどうか意見を交換、再度調べて分類を再考するとともに、生命の本質に気づかせていくという内容であった。

■21世紀型スキルを意識した授業づくりへ

研修終了後、MTの修了証がインテルから受講者に手渡された。今後、本研修受講者は各校でMTとして活躍することが期待されている。

本研修を通して、「社会の変化に対応して学校教育が変化しなくてはならない」「これまで取り組んできた活動と今後重視されるスキルとの関連を知ることができた」「生きる力を小項目にブレークダウンし、個々の力を伸ばすための力をパッケージ化している点が画期的」「授業の組み立ては難しいが、これまでの授業に21世紀型スキルを取り入れる形で考えていきたい」など前向きな感想が多かった。

■MT講師による研修や1日講習も開催

インテル(東京都千代田区)では、一般教員向けに2日間の「Intel(R) Teach MT養成研修」を12月に開催する。全国で「1day研修」も行っており、今夏以降は大阪(9/26)、東京(10/12)で開催する。なお研修はすべて定員に達したため募集終了。

■教委向けに研修を提供

ダイワボウ情報システム(DIS)では自治体教育委員会向けに「Intel(R) Teach Program」を基に開発した各種教員研修を提供している。現在提供しているメニューは以下の3つ。▼ICT操作スキル習得メニュー(1時間) ▼アクティブラーニングを実現する授業デザイン研修(4時間)▼21世紀型学力を育む授業デザイン研修(6時間)定員はいずれも20名程度。問合せ=mkt_info@pc‐daiwabo.co.jp

【2015年9月7日】

 

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