特集:新たな学びを実現する〜自立・協働・創造的な学びへ

キネクトとスクラッチで"動"のプログラミング<春日学園義務教育学校>

平成24年度から市内全小中学校で小中一貫教育を完全実施しているつくば市で11月22日、「2020年代の学びを変える先進的ICT・小中一貫教育研究大会」が開催され、全国から教育関係者が参集した。この日、春日学園義務教育学校(片岡浄校長)では14授業を公開。思考ツールやICTを活用して論理的思考力や発信力を育む授業を展開した。全国の小中高生による英語やICTを駆使したプレゼンテーションコンテストの表彰式及び入賞作品のプレゼンテーションも披露された。

7年プログラミング
動作で制御する

キネクトの前で・・・
キネクトの前で動くとキャラクターが動く
図形上に書き込みながら・・・
図形上に書き込みながら求め方を考える

同校は文部科学省「情報教育推進校(IE―School)調査研究」の指定校として、プログラミング教育のあり方を検証している。この日は7年生が、ジェスチャーや音声認識によって操作できるキネクト(Kinect)と、子供向けプログラミング言語「スクラッチ」を組み合わせたプログラミングに挑戦した。

各グループ1台の情報端末には、キネクトを接続。生徒がキネクトの前で腕を開いたり閉じたり、しゃがんだり立ったりすると、その動きをキネクトが感知。画面上の水槽にいる大魚が口を開けたり閉じたり、上下に動いたり小魚を食べようとする。小魚を食べると色が変わるようにプログラミングしたグループや、新しいキャラクターを作成して回転などの動きをつけたグループ、魚を食べるとプラス2点など当初の設定を変えているグループにもあった。

本カリキュラムに関わっている久保田善彦教授(宇都宮大学)は、「身体を動かすこととプログラミングが結びつくことで、プログラミングの意味が理解しやすくなれば、プログラミング教育の可能性はさらに広がる。今日の授業内容の基本はスクラッチなので、小学校低学年でもできる」と語った。

6年算数
複雑な面積

冒頭、中学校3年生が校内で「落とし物」をするビデオを視聴。教員は「3年生の落とし物はここにある」と皆に見せた。今日の課題となる「複雑な形」の図形である。

電子黒板で課題を一斉提示してから各自の情報端末に「複雑な形」を配信。児童は思考ツールも活用しながら情報端末上で、求めることができる形をペンで囲みながら、解き方を考えている。

ほぼ全員の考え方が情報端末に記入されると、教員は「ほかの考え方はあるだろうか。友達の考えを見てみよう」と、全員の考え方を全員に送信。似た考え方、違う考え方を各自で確認していき、様々な求め方があること、どの求め方が最も適切なのかを検討。授業の最後には、ビデオレターで中学校3年生がクラスで出た求め方とはさらに別な求め方を示した。

6年社会
所信表明を考える

本時の課題は「あなたは総理大臣。日本の復興を目指すために所信表明で何と言う?」だ。PC室では、1人ひとりが「総理大臣」の立場となり、思考ツールを使って「政策」、その政策によって得られる「効果」、それらを踏まえた「所信表明」について情報端末上でまとめ、全員で共有。さらに班として1つの所信表明に統一していく。

質の高い練り合いのため、前時、各班では「模擬内閣」として1人ひとりが大臣となり、「戦後改革(戦後復興大臣)」「日本国憲法(法務大臣)」「国際社会(外務大臣)」「東京オリンピック(文部科学大臣)」としてエキスパート学習を行っている。さらに、第1時と第2時に数日開けて自分で情報を収集している。

6年考える時間
原子力発電の是非

総理大臣として・・・
総理大臣として所信表明を考える
原子力発電所の是非について・・・
原子力発電所の是非について意見を表明

「考える時間」のテーマは「考える必然性のある課題」として、2時間扱いで「原子力発電所は日本に必要か〜これからのエネルギー政策について考えよう」を設定。「正解がない問い」について、自分の立場を明らかにして論理的な理由の説明を試みた。「将来、新エネルギーが十分に供給できるようになれば、原子力発電所は撤廃しても良い」「今、原子力発電をゼロにすると火力発電が8割になり二酸化炭素の排出量が増える」など、「将来的に撤廃」すべきであるという意見であっても、理由はそれぞれ異なる。

「将来的に推進」と考えた児童は「化石燃料がなくなったときのために必要、それまでに安全対策を考える」、「すぐに撤廃」と考えた児童は「費用が安くても一度事故が起こるとそれ以上のコストがかかる」と述べた。

児童は前時に、火力、水力、原子力、自然エネルギーについて、4つの視点「環境への影響」「経済問題」「安定的な電力供給」「持続可能性」について教員が準備した資料をエキスパート学習で読み込み、思考ツールで整理。その後、各自の班に戻って情報交換を行っている。

 

【2016年12月5日】

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