連載

【第1回】絵日記から始まる国際交流 −三菱アジア子ども絵日記フェスタ

優秀団体賞校の取り組み<上> 岐阜市立長良西小学校

三菱アジア子ども絵日記フェスタ
京谷貴幸教諭

 「三菱アジア子ども絵日記フェスタ」は、絵日記で自国の文化を発信し、海外の文化を知るコンテスト。グランプリ受賞者は、海外の子どもたちと交流するプログラムに参加することが出来る。前回は、アジア24の国・地域から8万点近い作品が集まった。

  国内では、優秀作品の多かった学校・団体に「優秀団体賞」を贈っており、授業や長期休暇と組み合わせた様々な取り組みが見られる。前回受賞した16学校・団体の一つ、岐阜県岐阜市立長良西小学校京谷貴幸教諭に話を聞いた。

「書く」ことの自信が生まれる〜教科と挑戦につながる工夫を

◆心を見つめ学級経営にも重要となった絵日記の力

iPadの教育活用
iPadの教育活用
「佳作」を受賞した長良西小児童
の作品。日常の様子がのびのび
と綴られている

  全国的に書く力の低下が懸念されているなか、同校では「書く力」「書く習慣」を身につけることを目的に、1年生の1学期はひらがな指導の延長から絵日記に取り組んでいた。

  「最初は絵日記に興味を持ってもらうため、教師である私も子どもたちと一緒になって書きました。保護者の方からは、絵日記に書きたいからと『土日のたびに"お出かけ"をせがまれて大変』、という声も聞かれたのですが、枚数を重ねるごとに子どもたちは絵日記を好きになってくれました。保護者もその様子を喜び絵日記への興味・関心を新たにしてくれました」と、当時1年生の担任で国語科を担当していた京谷教諭は語る。

  当初は絵日記の題材は京谷教論が決めていたが、少しずつ書く力がつき、題材を自由にしたところ、絵日記の内容、文章量共に大きな変化が出できた。そこで、2学期後半からは絵日記用のノートを作った。

  「子どもたちは絵日記を通して自分の心を見つめており、先生だけに見せてあげる、と交換日記のようになっていきました。書くことへの自信につながっていることをとても強く感じましたし、家庭での様子がよくわかり、学級経営の上でも重要でした」

◆1年生からの英語学習が他国の文化への興味に

  その年の秋に「三菱アジア子ども絵日記フェスタ」の募集を知り、学年主任でもあった京谷教諭は、絵日記をつづっている学年全体に冬休みの課題として声をかけた。応募に当たっては、インターネットで過去の国内外の作品を児童に見せた。

  「岐阜市では1年生から英語学習に取り組んでおり、English friendが隔週で来校します。当時はコンゴ、ルーマニアの先生が来校していましたので、1年生でも異文化に触れる機会が多く、他国の絵日記にとても興味を示していました」

◆授業の延長線上にある子どもたちの挑戦を支援

  「日記に対して"指導"にはしたくありません」。京谷教諭が心がけたことは、「作品を賞賛すること」「返事を書くこと」。「伝えたい」という児童の思いを大切にし、教科書とリンクしながら主語、述語など少しずつ深めた。

  「絵日記はあくまでも授業の延長です。子どもたちにはアンテナを広げて情報をキャッチしながら、どんどん課題に挑戦するんだよ、と日頃から声をかけています。中学年、高学年になってきたら自分を試す場として外部とつなげていくようにしています」

  それが、絵日記の応募にもつながっていった。また、6年生になると「意見文」という授業があり、児童は自分の考えを広く述べていくことになる。そこに行き着く上で、自分の生活や観察したこと、心を動かしたことを絵日記につづる作業は、「書く」ことの入り口として大切になると、京谷教諭は考える。

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【三菱アジア子ども絵日記フェスタ2012‐2013】
=対象は6歳から12歳(応募時点)で、1作品5枚つづりの絵日記(テーマ「伝えたいな、私の生活」)を募集(2013年1月18日消印有効)。 http://enikki.mitsubishi.or.jp/

〈次回は教育家庭新聞・10月22日号に掲載〉

【2012年10月8日号】

 

【連載】絵日記から始まる国際交流 −三菱アジア子ども絵日記フェスタ