震災学習列車が人気 命を守る術を学んで―三陸鉄道

2012年から運行

 東日本大震災の被災地では、未曾有の大震災からの教訓や防災について学ぶ「震災学習」のプログラムを行っている地域が多い。岩手県の三陸海岸もその一つで、宮古市に本社を持つ三陸鉄道(株)は、震災直後にいち早く復興事業に取り組むと共に、NHK連続テレビ小説にも登場した「お座敷列車北三陸号」を運行し話題を集めた。

三陸鉄道

2012年4月15日の北リアス線の様子。
電車の背後にあるがれきは現在片付いている。

三陸鉄道

徐行、一時停止をしながら
車窓の様子を説明する。

  それが、東北全体のシンボル的存在として震災復興と観光振興に貢献したと評価され、先日「第5回観光庁長官表彰」を贈られている。

  同社が2012年から運行している「震災学習列車」は、10月11日現在59の教育旅行(修学旅行含む)団体が利用した。
当初は北リアス線の久慈〜田野畑間で行われていた「震災学習列車」。被害の大きかった南リアス線でも盛〜吉浜間で運行を開始した。料金は1車両(50座席)につき5万円(税込)で、案内は同社社員または沿線住民が、車内で震災の状況を話してくれる。

  現在、震災による被害で未開通となっている区間もあるが、来年の4月上旬には北・南共に全線開通を予定している。

  同社の二橋守氏は「参加した子どもたちから数多くの感想をいただきます。復興はまだまだ、被災地の強さを感じた、自然の恐ろしさを感じた、など様々。なかでも、今後防災について学んで行きたいという声はとても嬉しい。私たちは被災地として同情してもらうのではなく、これを教訓にして自分の命を守る術を知ってほしいと思い震災学習列車を続けています」と話す。

  命の尊厳、震災からの教訓、防災などを学ぶ震災学習は、農山漁村での体験学習や平泉の歴史・文化等と並び、岩手県の教育旅行を構成する重要なプログラムの一つになってきている。

  同社では震災学習を、広島、長崎、沖縄が長年取り組んでいる「平和教育」のような位置づけとしていきたいと考えている。そのためには、それを担う「震災語り部(かたりべ)」の育成・スキルアップが重要で、広島などの先進事例を視察や研修を積んでいきたいと考えている。

  スキルアップの一環で、岩手県観光協会が各地で実施している教育旅行誘致説明会において、語り部による15分程度のデモンストレーションを披露し、すでに札幌、函館、東京で行った。

http://www.sanrikutetsudou.com/

【2013年10月21日号】

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