健康診断<後編>事例の少ない低身長症 心の健康にも関連早期の受診を

 前号では、弊社調査による養護教諭への健康診断に関するアンケート結果を紹介(400名へ依頼。有効回答37名)。多くの養護教諭は、健康診断で「気になる」項目はむし歯・視力と回答したが、特に歯に関しては保健指導で意識や行動変革を試みている学校も多いだろう。本コラム後編では、少数意見の「低身長症の疑い」に目を向けた。勤務歴の長い養護教諭でも、数例の症例に出合うぐらいではなかろうか。調査でも2名は未経験であった。

 今年1月に実施した調査では、約6割の養護教諭が春以外に2回、身長と体重を計測。長期休業中の子どもたちの成長、痩せや肥満のチェック、ネグレクトの発見などに役立てていた。

  身長や体重など見た目でわかる特徴は、子どもたち同士のからかいにもつながりかねない。身長に関しては、「家族性低身長」や「思春期遅発症」など病気ではないことが圧倒的に多いが、まれに低身長症の可能性もある。早期受診は、心の健康にも影響してくるだろう。

治療を要する成長障害 主なものは3種類

  治療を要する成長障害で小学生に多いものは、「ターナー症候群」、「成長ホルモン分泌不全性低身長症」、「SGA性低身長症」の3つが主となる。

  ターナー症候群は、女子だけに限られる染色体の異常で、特有の成長曲線が描かれる。

  成長ホルモン分泌不全性低身長症は、身長SDスコアや成長率の低下から、その可能性をうかがうことができる。

  SGA性低身長症は、子宮内での発育不全により出生体重及び出生身長が胎内にいた期間と比べて小さい場合にSGAと定義される。

  成長ホルモン分泌不全性低身長症の多くは「特発性」で原因が不明だが、頭蓋咽頭腫などの脳腫瘍による器質性に分類される場合もある。

調査の75%の養護教諭 成長曲線「つけている」

  調査では、「過去に低身長の可能性がある児童がいた」との回答は35名。そのうち多くは「保護者と相談して近隣の専門医を受診」という流れを作り、その他、担任を通して保護者へ伝える、成長曲線をつけながら保護者と様子を見る、保護者・学校医・養護教諭の三者で話し合った、などがあげられた。

  学校医へ相談する際、成長曲線が重要な相談資料で、本調査でも75%が成長曲線をつけていた。成長曲線を簡単につけられるウェブページもあり、保護者にもお勧め。治療に関しても医療費の自己負担金の一部に公費の補助がつくケースもあるので、まずは専門医へ相談を促すのが第一歩。

【2013年3月18日号】

 

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