リーダーに学ぶ 経営観/教育観

【第1回】<後編>"気づき"を与える教育現場に―株式会社タニタ 谷田千里 代表取締役社長

6人の上司に学んだことで今の自分を形成

悩んだ時は立ち返る 自分が楽になっていないか

谷田 千里 (たにだ せんり)

谷田 千里 (たにだ せんり)

1972年大阪府生まれ。
97年に佐賀大学理工学部を卒業し、 同年(株)ニュートン入社。 98年(株)船井総合研究所入社。 その後2001年に(株)タニタ入社、 05年タニタアメリカINC取締役、 07年(株)タニタ取締役を歴任し 08年現職。 調理師、栄養士の免許を持つ。

  社長就任後、「自らが動く」「自らが営業マン」を心掛けている谷田社長。タニタの企業理念は、「"はかる"を通して世界の人々の健康づくりに貢献すること」。「悩んだ時は、自分が楽になっていないか、自分の仕事は世の中のためになっているかを心に問います」。

  谷田社長には、尊敬する6人の上司(人)がいる。一人はもちろん2代目社長の父・谷田大輔氏。「父からは大きく構えることを習いました」。2人目は妻の父。「技術職でしたので、技術側からの企業の見方を学びました」。

  大学卒業後2社目に勤めたコンサルタント企業では、3人の尊敬する上司に恵まれた。「一人からは礼儀と人の心の掴み方を、一人からは人脈の作り方を、そして直属の上司からは文章の書き方から社会人としてのふるまい方を教えていただきました」。

  6人目は、アメリカでの赴任時代、共に働いていた社長だ。「父、妻の父、3人の上司から学んだことをビジネスの世界に落とし込む術を学びました。つまり実行力をつけてくれたのが、このアメリカ時代の社長です」。この6人が一人欠けても、今の自分は形成していない、と話す。自身は今、どのようなリーダーなのか。

  「自分は叩かれて伸びるタイプ。そこで部下にも、仲間として直接思ったことを伝えます。はっきりと伝えられないのは、"部下を信じていない"ということ」。鞭だけではない。福利厚生としてオフィスの置き菓子制度、社員食堂の一角に業務時間外の交流場所を設けた。「私自身お酒はほとんど飲みませんが、お酒を一緒に飲むコミュニケーションも重要な部分があると思って始めました」。

  また、健康をリードする企業として社員の健康にも気を配る。社員は歩数計を着け、それを専用リーダーにかざして体組成計に乗るだけで計測結果を専用のサーバーに蓄積。時系列的に管理する。この健康プログラムを導入し医療費の削減に成功した。

指示待ちではない 人材を求める時代

  次々と新たな取り組みを展開するタニタが求める人材は、「自分から動ける人。動きすぎてこちらが困るくらいでもいい」。新卒採用の面接では、複合的な質問を投げかける。例えばFacebook。「登録しているだけでなく、自ら情報発信しているかを問います」。

  「日本だけを見ると、学校に入るための競争はなくなりつつあります。その中で、正解のない質問を投げかける、課題を見つけて解決する時間を作るなど、"気づき"を与えてほしい。私は家庭科教員の免許を持っていますが、今後、受験科目ではない家庭科や道徳が生活と密接につながり、重要になってくると思います」。

  ‐「世界を健康に」、がタニタの理念。それを実現する「次の一手」にどんな秘策を考えているのか、楽しみに待ちたい。

【2013年5月20日号】

リーダーに学ぶ 経営観/教育観

【第1回】<前編>自らが動き社長は「営業マン」に―株式会社タニタ 谷田千里 代表取締役社長(130422)

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