学校給食のない日はカルシウム不足が顕著―「牛乳の日」記念学術フォーラム

乳の学術連合 Jミルク

 「牛乳の日」である6月1日、「牛乳の日」記念学術フォーラム「牛乳は子ども達を救えるか!〜子ども達の成長・食生活に向き合う〜」(主催=乳の学術連合、共催=一般社団法人Jミルク)が、東京・中央区の時事通信ホールで開催された。

講演/健康・栄養・経済

「牛乳の日」記念学術フォーラム

健康・栄養・経済の専門家が登壇

  第1部のテーマ別講演では、「健康」「栄養」「経済」の3つの観点から、牛乳や酪農が子ども達に果たす役割が3名の講師によって語られた。

小児期のうちに 骨密度を高めて

  「健康」については、帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科長の児玉浩子教授が「子ども達の栄養状態の現状と課題〜乳の役割と可能性〜」をテーマに講演。

  子どもの骨折は70年代と比較すると、2倍以上に増加している。その原因は、運動不足や体力の低下、カルシウムやビタミンDの摂取不足によるもの。それらを解消するために骨を丈夫にする条件として、児玉氏は「カルシウムや良質なたんぱく質の摂取」「適度な運動」「適度な日光浴」を挙げる。

  「女性は50歳を過ぎると骨密度が減少するので、小児期のうちに骨密度を最大に高めておくことが大切です。牛乳には良質なたんぱく質が多く含まれるので毎日2本飲むことを勧めます」

給食のカルシウム 50%は牛乳が担う

  「栄養」の観点からは、(公社)全国学校栄養士協議会の長島美保子会長が「学校教育における食の位置づけと課題〜学校給食に果たす牛乳の役割〜」について語った。

  学校給食実施基準の一部改正に伴い、文部科学省から出された通知には「学校給食のない日はカルシウム不足が顕著であり、カルシウム摂取に効果的な牛乳等の使用に配慮すること」と記載されている。学校給食のない日はカルシウムの必要量に達していない児童生徒が72%いるため、保護者会等を通じて呼びかける必要があると語る。

  「給食1食分で摂取するカルシウムのうち、50%は牛乳によるものなので、給食に出される1本の牛乳が長年に渡って子どもたちの健康を支えてきたと言えます」

牛の命に直接触れ 大きな教育的効果

  「経済」の分野は、千葉大学大学院園芸学研究科の大江靖雄教授が「牧場の持つ教育的可能性を考える!〜酪農教育ファームにみる乳の教育機能の現状と課題〜」について語った。

  酪農教育ファームは、約300件の酪農家によって構成されるネットワークで、酪農家の活動をより多くの人に知ってもらうことが目的。酪農体験を通じて児童生徒に「食と命の大切さ」を教えているが、牛と触れ合い命を直接感じとることの教育的効果は大きいという。

  「酪農体験に加えてバターづくりや、地域の農産物を使ったジェラートづくりなど、食体験と組み合わせることで、児童生徒にとって忘れられない体験となります」

栄養欠乏症は現代でも存在

  第2部のパネルディスカッションは、神奈川県立保健福祉大学学長で日本栄養士会名誉会長の中村丁次氏が進行役となり、第1部で講演を行った3名をパネリストに「牛乳は子ども達を救えるか!」をテーマに話し合われた。

  3氏の意見を踏まえ、中村氏は、「牛乳が戦後の日本の栄養を支えた役割は大きなものがありました。豊かになってからは必要のない食品と思われる傾向にありますが、現代でも栄養欠乏症は存在しますし、血圧の上昇の抑制など生活習慣病の予防にも有効です。また、カロリーが高くて太る、という誤解もありますが、正しい情報を広める必要があります」とシンポジウムを締め括った。

【2013年6月17日号】

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