食物アレルギー対応 行政でばらつきも

周囲児童への指導も必要

 昨年12月、東京都調布市で女児が食物アレルギーによるアナフィラキシーショックを起こし死亡した。これを受け、文部科学省は本年5月より「学校給食における食物アレルギー対応に関する調査研究協力者会議」を設置(座長:西間三馨・福岡女学院看護大学学長)。9月、10月で各地域や学校の事例をヒアリングしているところだ。食物アレルギー、アナフィラキシーの対応については、夏休み期間中も各地で研修会が行われ、全教職員の意識が高まっている。

 文科省協力者会議の第4回、第5回では2回に分けて事例のヒアリングが行われた。

 第4回で説明したのは、(公社)全国学校栄養士協議会理事の杉本眞吾氏(埼玉県桶川市朝日小学校栄養教諭)ら5名。杉本氏の勤務する朝日小学校では、現在11名の食物アレルギー対応児童がいる。就学時健診、保護者との面談、関係職員の協議、保護者との話し合い、保護者の申し込みを経て、給食の対応が行われる。

 給食前には、保護者へ詳細な献立表を配布。喫食の可能・不可能、要除去をチェックしてもらう。配膳時は最後に栄養教諭が仕上げ、ラップをかけ学級名・氏名・アレルゲンを記載した名札を貼り、対象者へ説明して渡す。その際、周囲の児童への指導を行うことも重要だという。

 杉本氏が所属する全国学校栄養士協議会では、食物アレルギーの実態調査を予定しており、「文部科学省が現在行っている調査を踏まえて、調査に臨みたい」と話す。

国の支援も必要

  第5回は、全国都市教育長協議会常任理事の小笠原行伸氏(東京都目黒区教育委員会教育長)ら6名が状況を説明した。

  小笠原氏が教育長を務める目黒区では、小・中全校で統一した対応をとっている。給食室の中に独立したアレルギー対応室はなく、コンタミネーションが起こる可能性を危惧する。「人員や設備などは、行政によって異なる。給食室の改修を行う場合は国の支援も必要となる」と述べた。

症状とエピソード 保護者からの説明を

  9月25日から27日に都内で行われた「フードシステムソリューション2013」の中でも、食物アレルギーに関するセミナーは満員となった。

  講演者の一人、あいち小児保健医療総合センター内科(アレルギー科)内科部長の伊藤浩明氏は、「食物アレルギーの有病率は5歳で2・5%だが、小中高校では2・6%とほとんど変わらない。これは卵や牛乳のアレルギーが治らないケースと、小学校で初めて特定の果物や甲殻類を食べてアレルギーを発症するケースなどがあるから」と話す。

ピーナッツによる アレルギーが増加

  原因となる食物は、鶏卵、牛乳、小麦3つが圧倒的に多いが、近年はピーナッツのアレルギーが増えている。

  昨今、保護者からアレルギーの申告を受ける際の対応に苦慮しているケースが多いと聞く。伊藤氏は、「"食物アレルギーがある"と保護者から言われた場合、養護教諭や栄養士は鵜呑みにするのではなく、いつどのような症状があったか具体的なエピソードを聞き出してほしい」とアドバイスする。

【2013年10月21日号】

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