色覚異常を意識して 進路にも影響早めの検査を

 平成14年3月に「学校保健法施行規則」が改正され、それまで小4で実施が義務づけられていた色覚検査は、15年度以降必須項目ではなくなった。15年度に小4であった児童は、現在20歳。(公社)日本眼科医会と(公財)日本眼科学会は、進学・就職に際して自身の色覚異常に気付くことによる混乱を懸念しており、平成22・23年度に行った「先天色覚異常」受診者への調査などを踏まえ、現状と課題が発表された。

 今回行われた実態調査は、全国657の眼科医療機関から寄せられた、941件。9歳の受診者が全体の16・5%だ。先天色覚異常は日本人男性の約5%、女子の0・2%とされている。

  同調査によると、受診のきっかけは未就学児の場合、保護者が「子どもの色覚がおかしい」などとして受診。学年が上がるにつれて健康診断、進学、就職が動機となっている。中・高で受診した際、約半数が自身(保護者含む)の異常を認知していない、という現状にあった。色覚異常の多くは、緑が暗く沈んで認識される「2型」の色覚異常(1型は赤が暗く沈む)。

  調査では「色覚に係るエピソード」が660件寄せられた。果物の葉を緑と認識できず異なった色で塗った、赤いチョークの字を読み飛ばした、美術部に入部したが茶と緑の区別ができない、などのエピソードがある。

  進学・就職時はさらに深刻だ。工業高校に入学したが電気関係の仕事に就く場合、色の多い配線の作業は避けられないため困惑した。自衛官、警察官、消防士、航空・船舶・鉄道・バスなども色覚制限のため、断念せざるを得なかったなどのケースが報告された。他にもヘアカラーや写真や印刷業務で色の区別が困難、など就職に制限が出てくる。

  日本大学名誉教授で(公財)一新会の理事長でもある澤充氏は、色誤認を回避するために避けるのが好ましい配色として「赤と緑」「オレンジと黄緑」「緑と茶」「青と紫」「ピンク、グレー、白」「緑、グレー、黒」「赤と黒」「ピンクと青」を挙げる。

  「学校や出版社、会社などでこの配色を貼ったりして、覚えていただきたい。また、識別を容易にするために色の上に文字情報を入れたり、縁取りやスリット(避けた方が好ましい色と色の間に、区切り目を入れる)を入れるだけでも違う」と述べる。

  日本眼科医会理事の宮浦徹氏は、今後の色覚検査の在り方として、「小学校低学年のうちに希望者へ検査を、中1生の希望者に検査を実施し、進路指導に反映してほしい」などの希望をあげている。

【2013年10月21日号】

<<健康・環境号一覧へ戻る