薬大生が意見を交換 理解に幅もー世界自閉症啓発デー

 4月2日は国連総会で決議された「世界自閉症啓発デー」だ。世界中で自閉症への理解を深める取り組みが行われており、日本でも4月2日から8日を「発達障害啓発週間」と定め、自閉症をはじめとする発達障害について啓発する機会を設けている。3月29日には、都内でシンポジウムが行われた他、様々な団体や学校が活動を行っている。昭和薬科大学(東京都町田市)では、映画を題材にアスペルガー症候群(自閉症の一つの症状)について約80名が学んだ。

北欧映画から障害と向きあう

 昭和薬科大学では4月3日、アスペルガー症候の男性を主人公にしたスウェーデンの映画「シンプル・シモン」の試写会が開催された。試写会は、心理学研究室の学生が中心に企画したもので、上映後にはワークショップを実施した。

周囲との適切な距離をとった支援を

世界自閉症啓発デー
好きな登場人物を選び、その障害についての見方を通して、自身を振り返る。

  この映画は主人公が、唯一の理解者である大好きな兄のために「完璧な恋人」探しをするという作品。主人公は自分がアスペルガー症候群であるため、触れられることが苦手だと明記したバッチを胸に付けて、自分が障害者であることを隠さずに生きている。

  心理学研究室の吉永真理教授からは、発達障害の特徴について、誰もが持っている凸凹が少し極端なだけだという説明や、個々の特性に合った就労の場が用意されていることなど、北欧の福祉の現状について紹介された。

映画鑑賞の前後で 理解に大きな変化

  学生の発達障害についての理解は、小学生の時の同級生に多動の子がいた、親戚に自閉症者がいるという学生から、全く知らなかったという学生まで幅があったが、最近テレビで放映されたサヴァン症候群の特集を観たという学生が多数おり、発達障害への興味関心は持っている。

  ワークショップでは、出席者が好きな登場人物2人を選んでシールを貼り、その理由を発表した。各登場人物の発達障害についての理解と接し方を考えることを通して、学生自身の障害のある人に対する思いや周囲との関わり方について様々な変化が起こっていった。

  ある学生は、「小学生の時には発達障害のある子がクラスにいて、ごく自然に他の子と同じように接していた記憶がある。しかし大きくなるにつれ、そうした方と接する機会もなくなり考え方も変わってきて、何かしてあげなければならないと考えるようになった。しかし、映画を観て、まずはその人を自然に受け入れて特別扱いなどせず気楽に接することが一番なのかなと感じた」と話した。

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「シンプル・シモン」5月3日よりユーロスペース渋谷ほかで上映

早期発見と支援 芽室町の取組み―地域の支援について シンポジウムを開催

  3月29日に都内で行われた「世界自閉症啓発デー2014・シンポジウム」では、地域での発達障害支援の取り組みに関して、北海道芽室町、千葉県柏市、兵庫県明石市の首長が紹介した。

  芽室町は、子育て支援策として発達障害の早期発見と早期支援に取り組み、小児科医、保健師、保育士などの協力で早期発見に努める一方、就学後は学校と各機関とが連携するほか、町が放課後や長期休暇中の支援も行う。義務教育終了後は農業を中心にした就労体験の機会確保・支援を行うと共に、グループホーム等地域での自立した生活をサポート。

  自立を支援する町の取り組みは、現在「青年期のひきこもり支援」へ展開しようとしているほか、他地域からの「特別支援学校児童・生徒の修学旅行誘致」へも展開している。

地域と関わる 好事例を表彰―精神障害者の当事者 支援者に「リリー賞」

  精神障害者の社会参加や自立に向け、地域社会において意欲的に活動へ取り組む当事者個人・団体、支援者・団体を表彰する「第10回精神障害者自立支援活動賞(リリー賞)」の表彰式が行われた(主催/NPO法人地域精神保健福祉機構)。

  「当事者部門」は、統合失調症の当事者として芝居・音楽・絵画などを通じて創作表現活動を展開している、大阪府のおかよしこ(よっちゃん)さん、発達障害である一方で餃子専門店の代表として障害者雇用を実践している福岡県の執行泉さん。

  「支援者部門」は、不動産会社社長として精神障害者へ部屋を提供する岡山県の阪井ひとみさんと、教育委員会・保健所・医療機関が連携して子どもの心の健康を支援する三重県の「YESnet(四日市早期支援ネットワーク)」が受賞した。

【2014年4月21日号】

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