「がん教育」小中高で明確化<文科省>

学習指導要領の改訂も視野に検討会

日本人の2人に1人が罹患する可能性があると推測されている「がん」。平成18年にはがん対策基本法案が成立、24年にはがん対策推進基本計画が策定され、28年度までに学校教育においても「がん教育」をどのように位置づけ展開していくかが検討される。文部科学省は7月14日、第1回の「『がん教育』の在り方に関する検討会」(座長=衞藤隆・(社福)恩賜財団母子愛育会日本子ども家庭総合研究所所長)を開催し、「がん教育」の基本方針について検討し、そのフレームワークを1年で固めることが目標であるとした。

国民一人ひとりに健康の基礎的教養として「がん」対策は必要不可欠なものとなりつつある。

そんな中で策定された「がん対策推進基本計画」は平成24年度より開始され、昨年度は日本学校保健会で先行した検討会を開催。それを受け、実質的初年度の取り組みとなる今年度、文部科学省は検討会と同時にモデル事業(全国21か所)を立ち上げた。

検討会の冒頭で文科省スポーツ・青少年局の久保公人局長は「『がん』は日本全体の課題。子供の頃から生活の在り方を見ていく必要があり、画期的な検討会だと思っている。学校で出来る限り早く進めていきたい」とあいさつ。

現行の学習指導要領における「がん教育」の位置づけは、小中高の体育(保健)に盛り込まれており、「がん」という言葉としても扱われている。

しかし、がんそのものの理解や患者に対する正しい認識を深める教育は不十分だと指摘されており、児童生徒が関心をもち正しく理解し、適切な態度や行動を変容させることが求められる。

留意点・連携・教科 学年・評価などが論点

今後の方向性としては、先行して行われた検討会であがった「がんに関して正しく理解できるようにする」「いのちの大切さについて考える態度を育成する」を目的にしてはどうか、という提案をもとに、具体的な内容や実施時の留意点や関係機関との連携、教科の位置づけと評価、実施する校種・学年についてなどが論点となる。

多くの日本人は、「がん」イコール「怖い」「死」と直結するもの、と捉えがちだが、治療することで必ずしも死へ向かうものではないこと、「がん」とどのように向き合い治療していくのか、また、日本はがん検診の実施率が極端に低いことなども教えていく必要があると指摘。

衞藤座長は「目標はがん教育の在り方を示すこと。教えるにとどまらず、子供達が何を理解し、何を学びとるのか。これを明確にしていきたい」とする。

今後、教委、実施校・者のヒアリングを経て、2月下旬の報告書まとめを目指すが、27・28年度も「がん教育」の準備期間であることから、学習指導要領改訂の必要性についても、委員らはなんらかの形で提案したいとしている。

【2014年7月21日号】

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