【PTA大会特集】子供の安全、教育の諸課題と保護者の役割を考える

日本PTA全国協議会 尾上浩一会長

 日本PTA全国協議会(以下=日P)が2013年に公益社団法人として認定されてから1年が経過した。8月22日・23日の「第62回日本PTA全国研究大会 長崎大会」の開催を目前に控える中、会長に就任して2年目を迎えた尾上浩一会長に今後の取り組みについて話を聞いた。

「防災教育」は学校から過程・地域に広げたい

尾上浩一会長日Pとして最優先に取り組むべき課題は子供の安全を守り、安全な環境を作ることです。中央教育審議会スポーツ・青少年分科会の学校安全部会では「災害安全(防災)」「交通安全」「生活安全」を課題に取り上げていますが、日Pでも子供の安全を重要課題として捉え、対策などについて協議を重ねてきました。

<防災安全>地域や家庭と連携し 実践的な防災体験を

いつ地震や津波などの災害に襲われるか分からない日本では、子供達への「防災教育」は欠かせません。基本的に「防災教育」は学校が中心となって進めていきますが、子供が学校で身に付けた知識を持ち帰ることで地域や家庭へ防災に対する意識が広がることが期待されます。地域や家庭が連携することで、災害時に活かせる実践的な避難訓練が行えるはずです。

また、学校で防災教育を積み重ねれば、災害のみならず危険なことから自分の身を守る危機管理能力が子供の頃から培われます。

<交通安全>保護者に求められる 情報リテラシー

「交通安全」に関して自動車事故の被害だけでなく、小・中学生は自転車の接触事故で加害者になる恐れがあります。神戸の小学生による自転車の接触事故では、9500万円の賠償金を支払うよう命じた判決が7月に下りました。一瞬の不注意が被害者と加害者の双方の人生を変えてしまうことが、このケースからも分かります。

兵庫県PTA協議会では保険会社と協同で子供向けの自転車保険を開発しました。加入しやすいように掛け金を低く抑え、本人だけでなく家族も保険の対象に含まれるようにしました。PTAの組織だからこそ子供や家族のことを考えた保険を開発できました。これが先例となって全国に広がることを期待しています。

兵庫県では「自転車の安全利用等に関する条例」の制定を進めており、損害賠償保険への加入の義務化も検討されています。事故を起こした際の負担が軽減されると同時に、保険に加入することで自転車事故への意識も高まり、ひいては事故防止にもつながればと思います。

保護者が小・中学生に使用させる物で、自転車と並んで子供が事故や犯罪に巻き込まれる恐れがあるのは携帯電話(ケータイ)やスマートフォン(スマホ)です。いくら保護者がルールを守るように言い聞かせても、子供は思わぬ行動をするもの。そこで、フィルタリングなど万が一のことを考えた対策が求められます。

日Pでは平成21年に「基本的には子供にケータイを持たせない」という方針を打ち出しましたが、ケータイやスマホが生活に必要なツールとなりつつある中、子供に持たせないと主張しているだけでは食い違いが生じます。

そこで25年度に「ケータイやスマホを利用することを前提として、家庭での教育やルール作りをしっかりと行う。そのために必要な保護者研修会等の機会を設ける」など新活動方針を打ち出しました。

子供に使用させる以上は、持たせる保護者がしっかりと管理できるように情報リテラシーを高めていかなければなりません。そのことを呼びかけた案内文なども協議会のHPを通じて発信していきます。

連続性のある取り組みが 中期計画で可能に

日Pが公益社団法人となり1年が経ちました。公益社団法人として先を見据えた活動を展開するため、今後は中期計画を立てるという方針を固めました。中期計画を立てることで、組織の方向性が外部から見えるようになり、またより先を見据えた継続的な取り組みも可能となります。日Pの役員が交代しても、中期計画により方針に連続性を持たせることができます。中期計画の具体的な内容については、近いうちに発表して参ります。

また日Pとしては、各地方協議会・連合会などを通じて、意見を取りまとめる形で関係各機関に伝え、私達の思いが事業に反映されるように努めて参ります。組織というと単P、区市P連、都道府県P、日Pが階層的に存在するピラミッド型をイメージするかも知れませんが、会員一人ひとりが子供のことを考える仲間であり、頂点など存在しない円形が理想的な形だと考えます。

全国大会での感動を 一人でも多くの会員に

長崎で開催される全国大会では「異国情緒豊かな長崎で集い、語らい、学びあい」をテーマに分科会や全体会が行われます。子供と保護者にかかわる課題解決に向けて話し合い「参加して良かった」と思ってもらえる大会の実現を目指します。

私自身も初めて全国大会に参加した時には感動を覚えましたが、子供のことを考えて取り組んでいる会員の姿を見れば触発されて意識が変わるはず。日Pの存在意義なども大会を通じて伝えて参りますので、一人でも多くの参加を望みます。

仕事があるから、家事が忙しいからという理由でPTA活動ができないという方もいますが、子供がいるからこそ社会に参画できる形があるはずです。自分や子供が地域に支えられていることを知り、学校との連携を図りながら、PTA活動に参加してくれることを願っています。

日Pでは、子供を持つ私達が、今何をすべきか、何ができるのかを見据え、日本の将来を担う子供達が安心して成長できるように働きかけます。子供を大人や社会が見守ることで、日本や世界を支える人間に成長してくれることを願い、それを具現化するための行動を起こすことが日Pの果たすべき役割と考えます。

■第62回長崎大会 8/22-23

第62回日本PTA全国研究大会は長崎県内の各会場で、8月22日は8分科会と2特別分科会、23日は全体会が開催される。メインテーマは(1)家庭・学校・地域との強い絆で連携を図るPTA活動、(2)平和な国際社会を担う子どもたちを育てるPTA活動、(3)家庭の教育力の向上を目指すPTA活動、(4)子どもと本気で向き合い、かけがえのない命を大切にするPTA活動、(5)未来を生きる子ども達のために、学びあい、繋がりあい、成長し合うPTA活動。
http://www.pta-nagasaki-taikai.com/

全国高等学校PTA連合会 佐野元彦会長 >>

【2014年8月18日号】

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