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第17回 【教職員のメンタルヘルス】心の悲鳴に耳を傾ける

異動前から始まるメンタルヘルス予防

校長の一言が重要に 「安心」して働ける声がけ

毎年のように発生する休職者に対し、手をこまねいてばかりもいられません。ひと口にメンタルヘルス予防といっても、具体的に何が効果的なのでしょうか。今回は管理職が学年末のこの時期だからこそ出来る、具体的なメンタルヘルス対策を紹介します。

【新年度直前】

2つのケースを参考にしてみて下さい。

「夫と相談して、新しく赴任した学校にいるうちに子作りをしたいと思い、その旨を異動先にも"それとなく"伝えてほしいと校長にお願いしていた。しかし、新年度ふたを開けてみると6年生の学年主任といわれ、新しい学校にも馴染めず2学期途中で休職に入る」

 前任校と異動先の校長との引き継ぎがうまくいっていない場合に起こる、きっかけの一つです。

「新年度を迎え在籍生徒数がぎりぎりまで確定しなかったために、4月1日直前になって担任や校務分掌が急に変更になった。そのような事情があったにせよ、本人に対して何の"打診もせずに"全体の前で発表してしまう校長、当初の発表と違う校務分掌や学年配置になった本人に対して、"充分な説明"がなされていないために管理職に対する不信感からスタートしてしまう職員室」

【新年度直後】

3つのケースを参考にしてみて下さい。

「新年度最初の職員会議において『先生方、今年1年間、子供たちや保護者のことでご苦労をおかけすると思いますが、何があっても最終的には私が責任をとりますから、安心して働いてください。ただし、"報告だけ"はこまめに学年主任や教頭にするようにお願いします』という趣旨のことを伝えておく」

この言葉の意図を説明しましょう。問題行動を起こした子供の指導の一環で、担任は母親を学校に呼び出し困った状況について話をした後、親子で帰宅させた。担任としては"きちんと"指導をしたつもりでいたが、保護者が校長に直接電話をかけてきて、「担任は何もしてくれなかった」と涙ながらに訴えていた。管理職が担任からどんな小さなことでも"報告"を受けていると、その後この母親と顔をあわせた時に、管理職として「お話は担任から聞いています。お母さんもよく頑張っておられますね」と担任のフォローができ、クレーム対策に役立つのです。

「年度当初、校長が『今年の学年主任の役割の一つに、自分の学年の先生方の話をこまめに聴くというのを加えました』と"あえて"公言する。それを聞いた若手教員は、『この職場ではSOSを出してもいいのですね』と笑顔を見せた」

管理職が"そこまでしなくても"と思っていることでも、あえて全体の前で公言することで、教員は管理職に安心し、SOSを出しやすくなるものです。

「管理職自らが、年度当初に次のような基本方針を"事前に"説明しておく。『発達的な問題を抱える子供が在籍する担任に対して対処困難な場合には、(1)専門家に診てもらう、(2)状況に応じて特別支援の人材の追加配置を要請する、(3)緊急性のある場合には管理職が代わりに授業に入ることも視野に入れています』と会議で発信した」

校長から"事前に説明がある"ことで教員が安心し、危機管理にも役立ちます。特に小学校の場合にはぎりぎりの人数でやりくりしていますので、なおさらこの問題に関する担任の不安や関心が大きいのです。

「学級王国」の中で問題が発生した場合、教室に誰が応援に駆けつけ、担任と"助っ人"との役割分担をどのようにするか等を明らかにすることで、担任が「頑張り方を間違わず」に、問題を抱える危険性が少なくなるようです。


執筆=土井一博(どい・かずひろ)日本教職員メンタルヘルスカウンセラー協会理事長、川口市教育委員会学校教職員メンタルヘルスチーフカウンセラー 、順天堂大学国際教養学部客員教授(教職課程)

【2015年3月23日号】

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