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→学習記録に基づいて算数のつまずきをICTでフォロー(5学年)
→バタフライ・マップ法で育てる論理的思考力・表現力(6学年)
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ICTで効果的な個別指導
算数のつまずきをICTでフォロー

5学年・算数

 教科におけるICT活用の実践研究に取り組む東京都日野市と信州大学教育学部では平成18年度から全市的に授業支援システムを導入し、日頃から基礎・基本の徹底と論理的思考力や表現力の育成に力を入れている。2月10日には、日野市第二小学校で授業研究会「教科を深めるICT活用」を実施、5学年・算数では学習記録にもとづいた個に応じた指導実践が発表された。


誤答を分析してリアルタイムに反映
基礎・基本の徹底に効果を上げる

 本時の単元は「つまずく」子が出やすい「割合」。その後の指導のためには児童一人ひとりの理解度を正しく把握しておきたいところ。そこで注目されるのが教員をサポートするICTの活用だ。同市では児童の基礎・基本を徹底的に身につけさせるため、授業支援システム「インタラクティブスタディ」を取り入れた授業を展開している。

教師用モニターを見ればクラス全員の学習到達度やつまづいている問題がわかる
教師用モニターを見ればクラス全員の
学習到達度やつまづいている問題がわかる
 同システムは信州大学の東原義訓教授(教育学部附属教育実践総合センター)らとシャープシステムプロダクト株式会社が共同開発したもので、一人ひとりの誤答の傾向、進捗度を分析してリアルタイムに問題へ反映させるため個々の理解度に沿った出題や解説が可能。また、教師用モニターにはクラス全員の学習到達度や履歴、問題にかかる時間等が表示され、「つまずき」のある子をひと目で確認でき、個に応じた指導を行えるのが特長だ。

 授業が始まると子どもたちはPCへログインし、個々の学習履歴に応じて出題される問題を解いていく。筆算や線グラフなど思考過程はノートに書き込み解答をPCへ入力する。解答結果はアカウントごとに蓄積されるため、児童は自分の苦手な問題や学習目標の達成度を確認できる。

 指導にはTTとして2名が当たった。一人は前時までの履歴から遅れがちな児童の個別指導につき、もう一人が随時教師用モニターを確認しながら指導が必要な児童へ対応した。一斉授業では得にくい個々の児童の情報を取得できるため、児童に応じたきめ細かな指導がなされた。

児童一人ひとりに
教師がいるのと同じ

指導が必要な指導には、きめ細かな個別指導を行える
指導が必要な指導には、
きめ細かな個別指導を行える
 TTの一人、南平小学校の木部美行教諭は授業の成果について「点数からは児童の思考過程を読み取りにくく評価しきれない面がある。ICTを活用することで個々の児童がどこで間違えたのか把握でき、思考の過程が理解できた。まとめの部分で使えば分析結果をもとに授業をやり直したり個別に指導するなどして次の授業にも活かせる」と語った。


 授業を参観した教員からは「教師の前に並ばなくても適切なヒントが得られたり、どうしようもなくなったら手を挙げれば生の質問をぶつけられる教師がいるというのは、たくさんの先生に囲まれて授業を受けているのと等しい」と感想が聞かれた。

五十嵐俊子氏
五十嵐俊子氏
 日野市教育委員会のICT活用教育推進室室長・五十嵐俊子氏は「どの教科でも基礎・基本は大切だが、中学校の教科の中でも特につまずき易いのが数学。小学校のうちに『わからない』ことをなくし、算数で達成感や自信を持たせて中学に進めば、その力が全ての教科に伝わるはず。この授業は子どもが自分のペースで学び、わからないことがあれば教師や隣の子に気軽に聞ける、自分から学べる貴重な場といえる。競争意識を持たせるのではなく友達との教え合いができる環境にすることが大事」と説明する。

 同システムの活用と教師の意識付けにより、わからない点を教師に相談したり、児童同士が話し合って解決のヒントを得ることができるため、自由で生き生きとした雰囲気の中で授業が進み、授業が終わっても「まだ続けたい」と席に残る児童の姿もあるという。

 日野市では21年度から同システムを活用した不登校の子ども達のサポート事業に取り組むほか、学校のICT利用が進むにつれてデータやサーバーの管理・保守が求められることを受けて、新たに機器関係のトラブルへ対応するテクニカルコーディネータを設置。これまでICTに関わるほとんど全てに対応してきたメディアコーディネーター(MC)の負担を減らし、MCがより授業に関する相談に特化できる体制を敷く予定だ。


【2009年04月04日号】


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