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新学習指導要領とこれからの理科教育
文部科学省教科調査官・清原洋一氏インタビュー

  ─「未知の日本の行方」を担う科学知識を身につける─

清原洋一氏
文部科学省教科調査官
清原洋一氏

 新学習指導要領では大幅な時間増となった理科。小学校ではプラス55時間、中学校ではプラス95時間だ。久々に取り扱われる内容も多く、中学校理科での「放射線」教育は40年ぶりとなる。新学習指導要領とこれからの理科教育について、文部科学省の清原洋一氏(初等中等教育局教育課程課 教科調査官)に聞いた。

■新学習指導要領と理科教育
 理科離れや学力低下が問題視されていますが、TIMSS2007(小中学生を対象とした国際数学・理科教育調査)などから、日本の子どもたちの成績は、上位であると言えます。むしろ日本の理科教育における課題は、子どもの理科学習に対する意識があまり高くないこと。「好き」と答える子どもは他の教科より多いものの、「将来に役立つ」「重要」と答える率は高くはありません。自然体験も不足しており、日の出や日の入りを見たことがある子どもは半数程度です。

 論述式の問題では、全体の得点は高いのですが、他国に比べると空欄が目立ったり、記述してあっても淡泊な解答であったりする傾向が見られました。これらの課題を解決するために、新学習指導要領では、取り扱う内容を増やすだけでなく、思考力や表現力の育成が図れるよう時間数も確保しております。

 中学2、3年では特に時数が増えており、理科の時間が週に4時間確保されることになります。これにより、2時間続けて理科の授業を展開、「実験計画を立てる」「実験」「考察」など、一連の流れの中で、じっくり思考力や判断力、表現力を育成する活動を展開することができます。「結果=結論」ではなく、1分野2分野ともに「出てきた結果をもとに分析、解釈し、結論を表現していく」活動が重要です。

 中学校理科の目標は「自然の事象・現象に進んでかかわり、目的意識をもって観察、実感などを行い、科学的に探究する能力の基礎と態度を育てるとともに、事前の事物・現象についての理解を深め、科学的な見方や考え方を養う」こと。未来の日本の環境を考えるとき、その判断を専門家にのみ任せれば良いというものではありません。一生涯を通じ、科学技術や環境保全に興味を持ち、科学的な視点から判断できるだけの基礎となる知識をすべての人が身に付ける必要があります。


「放射線教育」ほとんどの先生が未経験
研修を通して自ら「体験」して

「霧箱」で放射線を観察
「霧箱」で放射線を観察

■2時間続きで「計画」「実験」「考察」を
 それを盛り込んだのが「新学習指導要領」です。新学習指導要領では、「エネルギー変換の効率」や「放射線」も新しく取り上げられました。エネルギーの有効利用は、重要な学習分野。白熱灯とLEDの比較程度からスタート、身近なところからエネルギーについて学ぶことがお勧めです。

 学習指導要領で「放射線」が入ったのは昭和44年の改訂以来です。これについて中学校の授業で教えたことのある先生はかなり少なくなっていると言って良いでしょう。
 「放射線」は身の回りに存在しており、様々なものに利用されています。医療的には、レントゲンなどの検査や放射線による治療です。工業的にも利用されています。放射線を当てることでゴムの性質を変えるなど、タイヤの独特な強度は放射線によるものです。

 「放射線」について、学校の授業で学んだことのある先生も、少なくなってきています。「放射線」についての指導には、「霧箱」で放射線の飛跡を目で見たり、「放射線測定器」でその量を測り、その性質を学んだりする方法などがあります。これを教えるためには「研修」が必要です。「放射線」に関する研修等では、全国を対象に実施、旅費も支給される「原子力・放射線に関する教職員セミナー」(財団法人 放射線利用振興協会)があります。

 また、財団法人 日本科学技術振興財団では、「放射線」を計測できる「はかるくん」を1か月間無料貸与しています(http://hakarukun.go.jp/)。様々な機器を使って「放射線」を見たり測ったりすることの楽しさ、意義を教員自身が体感することは重要です。「霧箱」は手づくりすることもできます。

 「一度もやったことがない」ことにハードルの高さを感じるのは当たりまえのこと。夏休み期間などを利用するなど、来年度までにぜひチャレンジして、授業に研修の成果を積極的に取り入れて頂きたいと考えています。

 次回のTIMSS調査は2011年。現在中学校1年生の子どもたちが対象になります。新学習指導要領の理念を反映した教育内容により、これから1年半後に実施される調査結果に改善が見られることを期待しています。

関連情報リンク
→理科教育の危機は日本の危機
→義務教育初のエネルギー教育「放射線」

【2009年08月08日号】


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