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◆座談会◆
江戸川区教育委員会 × 玉置崇氏(愛知県教育委員会義務教育課主査)

校務情報化‘肝’は通知表の電子化
学校LANで情報共有進む


 江戸川区教育委員会では、平成21年度に「教員の校務用PC1人1台配布」「全小中学校に学校LAN構築」を単年度で進めた。配布されたPCは約2700台、学校LAN整備は111校の大規模整備だ。校務支援システムも全校に導入。東京都23区内で最大の児童生徒数を持つ江戸川区が大規模整備に踏み切った理由と経緯を江戸川区教育委員会・教育推進課の原野哲也課長、同課計画調整係の佐藤薫係長、指導室の赤津一也指導主事に聞いた。
 聞き手は、愛知県教育委員会義務教育課の玉置崇主査。玉置氏は、「教育の情報化の手引」(以下「手引」)の第6章「校務の情報化」の作成に関わっている。

中途半端な整備では
良さは実感しにくい

原野哲也氏
江戸川区教育委員会・教育推進課 課長
原野哲也氏

原野 江戸川区では、昨年の4月に大きく組織改正をし、教育委員会の教育推進課に計画調整係ができました。学校のICT化を含め、小中学校の教育施策を一手に引き受ける部署です。 江戸川区立の小学校は73校、中学校は33校。幼稚園を入れると全部で111校・園になります。その全教員にPCを配布するとなると、2700台必要です。計画を立て、段階的に導入していく、というのが通常のやり方ですが、江戸川区では、単年度で一気に整備する、というのが大命題でした。これは、「義務教育なのだから環境整備に優先順位はつけられない、全ての区民に同じ環境を提供することが行政の義務」という教育長の方針です。

玉置 配備するなら一斉に、という江戸川区の姿勢は理想的ですね。愛知県の高等学校では、教員2人に1台の配備からスタートしましたが、便利さよりも、2人に1台しかない、という不便さについての意見のほうが多かった。中途半端な整備ではその良さは実感しにくいということです。

原野 PCを入れただけでは事務処理の効率化は図れませんので、同時に、LAN整備も着手しました。江戸川区の事務職員は、既に全庁LANを使っていますから、それを学校の先生方に拡大する案も出ましたが、行政側の意見が統一されず、最終的に学校LANを組むことになり、2700台のPCをセンターサーバでつなげました。

玉置 むしろそれで良かったのではないでしょうか。行政と学校の情報を連携させていくことは、将来的には可能ですが、まずは学校の中で仕事を共有、その中でスキルや知識を高めていく段階を持つほうが安全です。

通知表の電子化が効率化に貢献する

玉置 PCとLAN整備が済めば次はシステムですね。

佐藤 必要なものだけを精選したつもりです。校務支援システム「エデュコムマネージャC4th(シーフォース=以下、C4th)から、連絡掲示板や個人連絡(メール)、出席簿、予定表、いいとこみつけなどを全校一斉に導入しました。成績管理機能はモデル校21校からスタート、通知表の電子化を目的とし、来年度は全校に導入する予定です。システムを統一すると区内全校の統計もとりやすくなるので、養護教諭を対象にした学校保健システムも現在検討中です。

玉置 校務の情報化の効果が最も顕著に表れるのが、通知表の電子化です。データが一元化されることで、職員室の風景が変わります。一度その便利さを体験すると、もう後には戻れません。

玉置 崇氏
愛知県教育委員会義務教育課 主査
玉置 崇氏

赤津 通知表の作成は、データの転記、下書きをして校長の確認、清書と様々な作業が派生する大変な仕事ですが、成績管理機能を導入、通知表をデータ化すると、データの転記は不要、通知表作成の際の確認もPC上で行うことができますので、効率化に大変貢献すると考えています。

原野 モデル校では今、ようやく1学期の通知表が仕上がり、ほっとしています。各校にあわせた通知表の作成は大変な作業でしたが、やって良かった、という声が学校から届いています。

佐藤 電子化すると、読みやすいしチェックしやすい、所見欄を有効に使うことができたという声もいただきました。

赤津 夏休みに入ってからは、モデル校から前向きな問合せが増えており、通常業務での活用も徐々に浸透しているようです。掲示板閲覧件数も増えました。通知表の作成という大きな山を超えたことで、達成感があったせいかもしれません。

「モデル校21校」
当初は10校だった

玉置 成績管理機能を最初から21校に導入したというのは、英断でしたね。小さな自治体なら全校規模の導入です。

佐藤 当初は10校からスタートする予定でした。ところが原野課長の「来年全校で導入するのに、なぜ10校だけなのか」というひとことで、21校になりました。

原野 新しいことを始めるにはある程度まとまった数の学校で実施することが必要です。江戸川区では、「放課後すくすくスクール」を平成15年度から実施していますが、当時の担当者の「初年度モデル校1校でも、次年度は半数以上の学校で実施したことが、全校展開の成功の要因。来年は自分たちも取り組まなければならない、という意識が他校に自然に芽生えた」という分析があり、それに倣いました。

玉置 それは大変参考になる意見です。システムが変わるときの学校現場の反応はいかがでしたか。

赤津 評価の観点は基本的に一緒ですが、通知表の表紙や学校の教育目標の違い、修了書の有無、所見欄を手書きしたいなど、各校により異なる要望がたくさんあります。
同じ学校でも学年によっても違います。今回導入した「C4th」は、それらに対応できるシステムであったことが良かったのではないでしょうか。
 
全校一律の形式ではなく、あらゆるパターンの要望を吸い上げて頂き、最終的には、各校なりの特色が出た通知表が完成しました。

玉置 各校の先生の要望を取り入れつつシステムを統一する、という姿勢がないと、学校からの協力は難しくなるときがありますからね。

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関連情報リンク
→校務情報化 大規模・一斉整備の成功事例を全国に伝えたい愛知県教育委員会 玉置 崇氏(091010)


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